If story … 別ルート【完結】
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今、ナマエはベッド寝転がってスマホでディズニーのアトラクションを検索している。
「どれに乗ろうかな〜。ねぇ、私ってジェットコースター系大丈夫?」
「さぁ?一緒に乗った事はありませんので分かりません。ホラーは絶対にダメな事は分かっていますけどね。」
「…やっぱり?」
「前にお化け屋敷入った時、半分以上僕に背負われてましたよ。」
「なにそれめちゃくちゃ恥ずかしい…。」
「まぁディズニーには物凄いホラーはないでしょうから恥ずかしい思いはしないはずです。
…ジェットコースターの話ですが、多分大丈夫だと思います。」
俺の無茶な運転に何度も乗っている上、魔法学校の学生時代は箒に乗っていたんだろうから急降下も問題ないはずだ。
「そう?じゃあ乗ってみようかな〜。
そういえば、ディズニーにもまさか…ハイネックで行くの?」
「ええ、そのつもりですが何か。」
「…暑くない?」
「半袖ですから大丈夫ですよ。」
「そう…?
ねぇ、昴って…首にタトゥーか何か入ってるの…?
昔何かヤンチャしてたとか?
何か見られたくないものが…?」
「そんなんじゃありませんよ。タトゥーは入れていません。」
「ふーん…私が首元触ろうとすると避けるよね。」
「首を触られるのが苦手なんです。」
「その割にはハイネック着るのね。」
「デザインが好きなんです。」
「ふーん。」
完全に怪しまれているが本当の事を言えるわけはない。
「そういえば何日か前に上着を着ないでベランダでタバコ吸ってたよね。その時は暗くてよく分からなかったけど、何もなさそうだったな…。」
「当たり前です。何もありませんから。」
なんとか誤魔化せたようだ。
怪盗キッドのように何も機械なしで声を変えられたら一番良いが、生憎そんな技術は持ち合わせていない。
数日後、ディズニーに行く日になった。
「頭痛くなったりはないから、秀一さんの車でも大丈夫そう。」
「ではそうしますね。こちらとしてもその方が助かります。運転楽なので。荷物は大丈夫ですか?何か体調悪くなったら絶対言うんですよ?」
「うん。…昴って面倒見良いよね。絶対長男タイプだよね。」
「まぁ…長男ですから。」
「兄弟いるの?」
「内緒です。」
「えー!そこ内緒にする所じゃなくない?」
「…下が二人いるとだけ言っておきましょうか。」
「なるほど、だからしっかりしてるのね。」
「私って…多分一人っ子か、上がいるタイプだよね…。」
「えぇ、一人っ子ですね。ですが親戚の…兄のように慕っている方が2名一緒に住まわれていたので、実質末っ子といった所でしょうね。」
「そうなの?…記憶が戻ったら、きちんと会いに行きたいな。今会ったらショックを受けさせちゃいそうだもん。」
「…そうですね、記憶が戻ったら一緒に行きましょう。」
「詳しく知ってるって事は…私の親に会ってるの?」
「会っていますよ、何度か。」
「それって…結婚を見据えて…?」
「いいえ。」
「あっ…そうなんだ。」目に見えて落ち込んだ。
「ああ、すみません。結婚する気が無いわけではありませんから。さ、早く行きましょう、遅くなりますよ。」そう言うとニコニコしながら後をついてきた。
ディズニーの駐車場に止め、チケットを手に入口へ向かった。
「楽しみだなー!」
「思ったよりは混んでいませんね。」
「ファストパス取ろー!!」
ネットでポチポチファストパスを取るとさっさとお土産コーナーへ向かった。
「今のうちお土産買ってロッカー入れとく。
昴、カチューシャ付けさせて!」
そんな輝いた目で見られては断りづらい。
仕方がない…。
「はぁ…。今日だけですよ?」
「わーい!」
お土産と一緒にささっとカチューシャを手に取ると意気揚々とレジへ向かった。
支払おうと財布を出す手を止めさせ、こちらが支払ってやるとかなり遠慮していたが押し切った。
お土産をロッカーにしまうとカチューシャを手渡された。
「やっぱり、本当につけるんですか…?」
「もちろん!これでもシンプルなやつにしたんだよ!私はミニー、昴はミッキー。」
「そうですか…。」しぶしぶ頭につけるとニコニコと満面の笑みを向けられた。
そんな顔をしたら取るにとれない。
諦めてこのまま行く事にした。
ウイッグをつけているのにその上からカチューシャまでつけるなんて頭に違和感しかない。
「そういえば…ディズニーってカップルで来ると別れるとかいう噂をネットで見かけたんだけど。」
「ただの噂でしょう?」
「一応理由があって、待ち時間が長いとか、お土産たくさん買ったりとかで金銭感覚の違いで不安になるとか、人混みで疲れて喧嘩になりやすいとか…。」
「…僕は待つのはあまり苦ではありませんし、お土産は別に好きなだけ買ったら良いと思います。せっかく来たんですし。
人混みで疲れて…はどうか分かりませんが、普通の人よりは体力がありますのでそんな事で喧嘩にはなりません。そんなの、結局男の技量でしょう?くだらない。」
「…流石私の彼氏。そんなはっきり言われたら1ミリも不安感じないね。」
「当たり前でしょう?悪いですがそう簡単に貴女を手放しません。」
そう言うとナマエは黙り込んで俯いた。
「耳、赤いですよ。」
「うるさいな、もう!」
「その丸い耳をつけたカチューシャ姿、可愛いので後で写真撮らせて下さいね?」
「赤いのがおさまったらね!!」
ちょっとムッとした顔でこっちを見る顔があまりに可愛くてスマホで写真を撮った。
「やめてよ!今撮らないで!」
「すみません、つい。可愛かったもので。」
「意地悪!変態!」
「光栄です。」
満足そうに微笑むと呆れた顔をされた。
その後ハニーハントやホーンテッドマンション、スターツアーズ等有名所に乗り、癒されたり楽しんでいたりと彼女の良い表情が見れた。
それだけで俺は満足だ。
待ち時間なんて彼女の笑顔を見るまでの試練だと思えばどうって事ない。
FBIでも対象を狙撃するまでは随分時間をかけることもよくある。それに比べたら短い時間だ。
「面白かった!次は…スペース・マウンテン!
ジェットコースター系大丈夫かは分からないけど。」
「多分大丈夫ですよ、行ってみましょうか。」
順番が来て乗り物に乗り込んだ。
「ちょっと怖い。」
「大丈夫ですよ。腕を掴んでいても手を握っていても良いですから。」
「ありがとう…。腕、掴ませて。」
「えぇ、どうぞ。」
乗り物が徐々に動いて高い方へと登っていく。
キラキラした通路を通り星が見えたと思ったら、
突如加速した。
道路ではないような所を走るよりかはレールがあるジェットコースターは安心感がある。
自分や安室君の運転よりかは安全だなと思いながら楽しんだ。
彼女はしっかりと俺の腕を掴んで叫び声をあげているものの、なんだか楽しそうだった。
まぁ暗くて顔はよく分からないので実際楽しんでいるのかは不明だが。
しばらく縦横無尽に内蔵が浮く感覚を楽しんでいると終わったらしい。
「…た。」
「ん?どうしました?」
「た…楽しかった!めっちゃ楽しい!なにこれ!最高!」
そういえば、以前お義父さんにナマエは
クィディッチではかなりのスピード狂だったと聞いた事があった。
俺が無茶な運転をしていた時も隣で平然とジュースを飲んでいたような女だった事を思い出した。
「それは良かったです。」
「ねぇ、私…変な映像が浮かんだんだけど。何かの映画で見たのかな…箒に乗って飛び回ってる所…。
あとは誰が運転しているかまでは分からなかったけど、マスタングを道路で爆走させてて、私が助手席にいた…。どうみてもスピード違反っぽかったんだけど…。」
「…何か記憶の手がかりかもしれませんね。」
「うん…。なんだろ。
せっかくだから他のジェットコースター系も乗りたいなー!」
「構いませんがお昼ご飯食べる前にして下さい。」
「了解♪」
ルンルンと鼻歌交じりで歩いていく彼女に苦笑しながらついて行った。
その後ビッグサンダーマウンテンやスプラッシュマウンテンに何度か乗らされた。
スピードに関しては大丈夫なのだが、内臓が浮くような感覚は普段あまり味わうことはないので何度も乗ると流石に酔いそうだ。
「そろそろお昼にしませんか?」
「そうだね、食べる所混んじゃう。」
昼食を終えて歩いていると何か見つけたらしい。
「こっち来て!」
「ウエスタンランドシューティングギャラリー?」
「射撃だって。」
「ホォー、全部で62個ある光るターゲットがあって、10発撃てると。全て当たると景品のメダルが貰えるんですね。」
「ラッキー」と表示されたスコアカードが出たらゴールドの保安官バッジを、10発全て命中のスコアカードで、シルバーの保安官バッジをそれぞれプレゼント!と書いてある。
「そうみたい。ねぇ、対決しよ!勝ったら相手に何か一つ命令出来る。」
「構いませんよ。どちらが先にやりますか?」
「じゃあ私やるー!」
ナマエが挑戦したものの、3発しか当たらなかったらしい。
あれだけ狙撃は得意だったはずだが記憶がないとこうも腕が落ちるのか。
そう思ってチラッと顔を見ると何か酷く動揺しているようだった。
「ねぇ、私本物の銃持ったこと…ある?」
「…どうでしょうね。」
「と、とりあえず昴の番ね!」
「了解。」銃を構えてさっさと10発撃ち終えた。
「すごーい!全部当たった!」
「スコアカードにラッキーと書いてあります。特別なターゲットを狙えたようです。
という事は僕の勝ちです。」
「そうだった、しまった。命令は?」
「…ちょっと近くのベンチに座って下さい。」
「ベンチ?…はい。」
「何が見えたか正確に話をして下さい。」
「…それだけ?」
「それだけです。」
「私が…昴を…銃で撃ってた。
一つは…飛行機の中みたいな所。
もう一つはレストランの中だと思う。
血が…吹き出してた。」
あぁ、犯人ごと俺を撃ち抜いた時のか。
「だから動揺して銃を上手く撃てていなかったんですね。」
「私…私なんなの?ただの…大学院生じゃないの?もしかして前見た手帳に書いてあったFBIとかいうやつなの?」
「それは…今、僕に答える事は出来ません。」
「なんで…?」
「ご自分で思い出して頂く必要があるかと思います。」
「昴は…本当に私の恋人なの?私、昴の敵じゃ…ないよね?復讐しようとしてたり…する?」
「はははは!復讐?なんですかそれ。面白いですね。」思ってもみなかった発言に思わず笑ってしまった。
「だってぇっ…泣」
「あぁ、すみません、泣かないで下さい。有り得ませんから。貴女は悪人ではありません。僕もです。それだけは確実に言えます。
今はせっかく来た夢の国に身を投じる時間ですよ?
他にも乗りたいアトラクションがあるんでしょう?
ジェットコースター系でなければいくらでも付き合いますから。行きましょう?」
「…うん。ありがとう、昴…。」
その後もアトラクションを楽しんだりポップコーンを買って食べ歩いたりしているとあっという間に夜になった。
パレードがみたいのだが人が多くて後ろの方だとよく見えないらしい。ピョンピョンとジャンプして見ようと頑張っていた。
「うーん…見えない。ヒールならまだしも、今日はスニーカーだから身長的に厳しい…。」
「仕方ありませんね。肩に手を回して下さいね。」
「えっ!?なにす…ヒャッ!」
「お姫様抱っこです。僕は背が高いので、こうして持ち上げればよく見えるでしょう?」
「み…みっ…見えるけども!!恥ずかしい!!」
「いいじゃないですか。皆パレードに夢中で誰もこちらを見てませんよ。」
「そうかもだけど、お姫様抱っこなんて…!」
「You're my princess.命にかえても守りますよ、姫。」
「ごめ…パレードの音でよく聞こえなかった…なんて?」
「なんでもありません。綺麗ですね。」
「凄いよね。」
綺麗だと思うのはパレードよりもパレードを見て輝く彼女の瞳なのだが。
パレードを見終えてロッカーから荷物を取り出し車へ向かった。
「やっぱり皆帰るから混みそうだね。」
「そうですね…。どこかコンビニに適当に買って夕食は済ませましょうか。どうせ帰り道渋滞するでしょうし。」
駅近くの建物のコンビニで、運転しながらでも食べられるようにおにぎり3つとコーヒーを買った。
ナマエはサンドイッチに野菜ジュースを選んだらしい。
車に乗り込み走らせたものの、やはり渋滞が酷かった。
かなりゆっくりとはいえ進んではいるので、左手でハンドルを握ったまま右手でおにぎりを掴んで食べた。
「コーヒー開けておこうか?」
「助かります。利き手が塞がっていますので…。」
「…男の人が運転しながら何か食べてる姿、私好きかも。」
「そうなんですか?」
「なんだろう、ちょっと色気を感じる。」
「独特な感性をお持ちで。」薄目を開けて舌なめずりをするとナマエが顔を赤らめた。
「ちょ、その顔ずるい…。」
彼女は赤くなった顔を手で隠しながら呟く。
「何もしてませんが。」
「…そういえば昴って瞳の色、緑なんだね。」
「……えぇ。」
「秀一さんも緑だったような…。二人って親戚?」
「いいえ。」
しまった。薄目とはいえ、前の車と車間が近くてライトが明るいので思ったより瞳の色がはっきり見えてしまったらしい。
「瞳の色が同じだからといって親戚と思うのは少々短絡的過ぎますよ。」
「そうだよね。…綺麗な瞳の色だね。」
「ナマエの瞳の色も素敵ですよ。」
「ありがとう。両親に感謝しないと。」
「そうですね。食べ終えたら寝ていて良いですからね。これだけ渋滞しているとまだまだ帰宅までは長いですから。」
「うん、じゃあ遠慮なく。…運転出来なくてごめんね。免許あるのに…。」
「良いんですよ、運転嫌いではありませんから。
あぁ、後ろにブランケットがありますので使って下さい。新品ですからタバコの匂いはあまりしないと思います。」
「わざわざ用意してくれたの?ありがとう。」
「寝ていると思ったより冷えますから。女性に冷えは大敵でしょう?…おやすみなさい。」
「ん…すばる、今日は連れてきてくれてありがとう。ちょっと寝るね、おやすみ。」
彼女が寝た事を確認し、窓を半分程開けて煙草を吸った。なるべく窓の外に向かって煙を吐く。
「少しずつ記憶を取り戻しはじめている。
俺が本来はいない存在だと知ったら…どういう反応をするんだろうな。」
タバコを咥えたまま彼女の頭を優しく撫でた。
その後は何事もなく運転に集中した。
… ナマエが起きていたとは知らずに。
「どれに乗ろうかな〜。ねぇ、私ってジェットコースター系大丈夫?」
「さぁ?一緒に乗った事はありませんので分かりません。ホラーは絶対にダメな事は分かっていますけどね。」
「…やっぱり?」
「前にお化け屋敷入った時、半分以上僕に背負われてましたよ。」
「なにそれめちゃくちゃ恥ずかしい…。」
「まぁディズニーには物凄いホラーはないでしょうから恥ずかしい思いはしないはずです。
…ジェットコースターの話ですが、多分大丈夫だと思います。」
俺の無茶な運転に何度も乗っている上、魔法学校の学生時代は箒に乗っていたんだろうから急降下も問題ないはずだ。
「そう?じゃあ乗ってみようかな〜。
そういえば、ディズニーにもまさか…ハイネックで行くの?」
「ええ、そのつもりですが何か。」
「…暑くない?」
「半袖ですから大丈夫ですよ。」
「そう…?
ねぇ、昴って…首にタトゥーか何か入ってるの…?
昔何かヤンチャしてたとか?
何か見られたくないものが…?」
「そんなんじゃありませんよ。タトゥーは入れていません。」
「ふーん…私が首元触ろうとすると避けるよね。」
「首を触られるのが苦手なんです。」
「その割にはハイネック着るのね。」
「デザインが好きなんです。」
「ふーん。」
完全に怪しまれているが本当の事を言えるわけはない。
「そういえば何日か前に上着を着ないでベランダでタバコ吸ってたよね。その時は暗くてよく分からなかったけど、何もなさそうだったな…。」
「当たり前です。何もありませんから。」
なんとか誤魔化せたようだ。
怪盗キッドのように何も機械なしで声を変えられたら一番良いが、生憎そんな技術は持ち合わせていない。
数日後、ディズニーに行く日になった。
「頭痛くなったりはないから、秀一さんの車でも大丈夫そう。」
「ではそうしますね。こちらとしてもその方が助かります。運転楽なので。荷物は大丈夫ですか?何か体調悪くなったら絶対言うんですよ?」
「うん。…昴って面倒見良いよね。絶対長男タイプだよね。」
「まぁ…長男ですから。」
「兄弟いるの?」
「内緒です。」
「えー!そこ内緒にする所じゃなくない?」
「…下が二人いるとだけ言っておきましょうか。」
「なるほど、だからしっかりしてるのね。」
「私って…多分一人っ子か、上がいるタイプだよね…。」
「えぇ、一人っ子ですね。ですが親戚の…兄のように慕っている方が2名一緒に住まわれていたので、実質末っ子といった所でしょうね。」
「そうなの?…記憶が戻ったら、きちんと会いに行きたいな。今会ったらショックを受けさせちゃいそうだもん。」
「…そうですね、記憶が戻ったら一緒に行きましょう。」
「詳しく知ってるって事は…私の親に会ってるの?」
「会っていますよ、何度か。」
「それって…結婚を見据えて…?」
「いいえ。」
「あっ…そうなんだ。」目に見えて落ち込んだ。
「ああ、すみません。結婚する気が無いわけではありませんから。さ、早く行きましょう、遅くなりますよ。」そう言うとニコニコしながら後をついてきた。
ディズニーの駐車場に止め、チケットを手に入口へ向かった。
「楽しみだなー!」
「思ったよりは混んでいませんね。」
「ファストパス取ろー!!」
ネットでポチポチファストパスを取るとさっさとお土産コーナーへ向かった。
「今のうちお土産買ってロッカー入れとく。
昴、カチューシャ付けさせて!」
そんな輝いた目で見られては断りづらい。
仕方がない…。
「はぁ…。今日だけですよ?」
「わーい!」
お土産と一緒にささっとカチューシャを手に取ると意気揚々とレジへ向かった。
支払おうと財布を出す手を止めさせ、こちらが支払ってやるとかなり遠慮していたが押し切った。
お土産をロッカーにしまうとカチューシャを手渡された。
「やっぱり、本当につけるんですか…?」
「もちろん!これでもシンプルなやつにしたんだよ!私はミニー、昴はミッキー。」
「そうですか…。」しぶしぶ頭につけるとニコニコと満面の笑みを向けられた。
そんな顔をしたら取るにとれない。
諦めてこのまま行く事にした。
ウイッグをつけているのにその上からカチューシャまでつけるなんて頭に違和感しかない。
「そういえば…ディズニーってカップルで来ると別れるとかいう噂をネットで見かけたんだけど。」
「ただの噂でしょう?」
「一応理由があって、待ち時間が長いとか、お土産たくさん買ったりとかで金銭感覚の違いで不安になるとか、人混みで疲れて喧嘩になりやすいとか…。」
「…僕は待つのはあまり苦ではありませんし、お土産は別に好きなだけ買ったら良いと思います。せっかく来たんですし。
人混みで疲れて…はどうか分かりませんが、普通の人よりは体力がありますのでそんな事で喧嘩にはなりません。そんなの、結局男の技量でしょう?くだらない。」
「…流石私の彼氏。そんなはっきり言われたら1ミリも不安感じないね。」
「当たり前でしょう?悪いですがそう簡単に貴女を手放しません。」
そう言うとナマエは黙り込んで俯いた。
「耳、赤いですよ。」
「うるさいな、もう!」
「その丸い耳をつけたカチューシャ姿、可愛いので後で写真撮らせて下さいね?」
「赤いのがおさまったらね!!」
ちょっとムッとした顔でこっちを見る顔があまりに可愛くてスマホで写真を撮った。
「やめてよ!今撮らないで!」
「すみません、つい。可愛かったもので。」
「意地悪!変態!」
「光栄です。」
満足そうに微笑むと呆れた顔をされた。
その後ハニーハントやホーンテッドマンション、スターツアーズ等有名所に乗り、癒されたり楽しんでいたりと彼女の良い表情が見れた。
それだけで俺は満足だ。
待ち時間なんて彼女の笑顔を見るまでの試練だと思えばどうって事ない。
FBIでも対象を狙撃するまでは随分時間をかけることもよくある。それに比べたら短い時間だ。
「面白かった!次は…スペース・マウンテン!
ジェットコースター系大丈夫かは分からないけど。」
「多分大丈夫ですよ、行ってみましょうか。」
順番が来て乗り物に乗り込んだ。
「ちょっと怖い。」
「大丈夫ですよ。腕を掴んでいても手を握っていても良いですから。」
「ありがとう…。腕、掴ませて。」
「えぇ、どうぞ。」
乗り物が徐々に動いて高い方へと登っていく。
キラキラした通路を通り星が見えたと思ったら、
突如加速した。
道路ではないような所を走るよりかはレールがあるジェットコースターは安心感がある。
自分や安室君の運転よりかは安全だなと思いながら楽しんだ。
彼女はしっかりと俺の腕を掴んで叫び声をあげているものの、なんだか楽しそうだった。
まぁ暗くて顔はよく分からないので実際楽しんでいるのかは不明だが。
しばらく縦横無尽に内蔵が浮く感覚を楽しんでいると終わったらしい。
「…た。」
「ん?どうしました?」
「た…楽しかった!めっちゃ楽しい!なにこれ!最高!」
そういえば、以前お義父さんにナマエは
クィディッチではかなりのスピード狂だったと聞いた事があった。
俺が無茶な運転をしていた時も隣で平然とジュースを飲んでいたような女だった事を思い出した。
「それは良かったです。」
「ねぇ、私…変な映像が浮かんだんだけど。何かの映画で見たのかな…箒に乗って飛び回ってる所…。
あとは誰が運転しているかまでは分からなかったけど、マスタングを道路で爆走させてて、私が助手席にいた…。どうみてもスピード違反っぽかったんだけど…。」
「…何か記憶の手がかりかもしれませんね。」
「うん…。なんだろ。
せっかくだから他のジェットコースター系も乗りたいなー!」
「構いませんがお昼ご飯食べる前にして下さい。」
「了解♪」
ルンルンと鼻歌交じりで歩いていく彼女に苦笑しながらついて行った。
その後ビッグサンダーマウンテンやスプラッシュマウンテンに何度か乗らされた。
スピードに関しては大丈夫なのだが、内臓が浮くような感覚は普段あまり味わうことはないので何度も乗ると流石に酔いそうだ。
「そろそろお昼にしませんか?」
「そうだね、食べる所混んじゃう。」
昼食を終えて歩いていると何か見つけたらしい。
「こっち来て!」
「ウエスタンランドシューティングギャラリー?」
「射撃だって。」
「ホォー、全部で62個ある光るターゲットがあって、10発撃てると。全て当たると景品のメダルが貰えるんですね。」
「ラッキー」と表示されたスコアカードが出たらゴールドの保安官バッジを、10発全て命中のスコアカードで、シルバーの保安官バッジをそれぞれプレゼント!と書いてある。
「そうみたい。ねぇ、対決しよ!勝ったら相手に何か一つ命令出来る。」
「構いませんよ。どちらが先にやりますか?」
「じゃあ私やるー!」
ナマエが挑戦したものの、3発しか当たらなかったらしい。
あれだけ狙撃は得意だったはずだが記憶がないとこうも腕が落ちるのか。
そう思ってチラッと顔を見ると何か酷く動揺しているようだった。
「ねぇ、私本物の銃持ったこと…ある?」
「…どうでしょうね。」
「と、とりあえず昴の番ね!」
「了解。」銃を構えてさっさと10発撃ち終えた。
「すごーい!全部当たった!」
「スコアカードにラッキーと書いてあります。特別なターゲットを狙えたようです。
という事は僕の勝ちです。」
「そうだった、しまった。命令は?」
「…ちょっと近くのベンチに座って下さい。」
「ベンチ?…はい。」
「何が見えたか正確に話をして下さい。」
「…それだけ?」
「それだけです。」
「私が…昴を…銃で撃ってた。
一つは…飛行機の中みたいな所。
もう一つはレストランの中だと思う。
血が…吹き出してた。」
あぁ、犯人ごと俺を撃ち抜いた時のか。
「だから動揺して銃を上手く撃てていなかったんですね。」
「私…私なんなの?ただの…大学院生じゃないの?もしかして前見た手帳に書いてあったFBIとかいうやつなの?」
「それは…今、僕に答える事は出来ません。」
「なんで…?」
「ご自分で思い出して頂く必要があるかと思います。」
「昴は…本当に私の恋人なの?私、昴の敵じゃ…ないよね?復讐しようとしてたり…する?」
「はははは!復讐?なんですかそれ。面白いですね。」思ってもみなかった発言に思わず笑ってしまった。
「だってぇっ…泣」
「あぁ、すみません、泣かないで下さい。有り得ませんから。貴女は悪人ではありません。僕もです。それだけは確実に言えます。
今はせっかく来た夢の国に身を投じる時間ですよ?
他にも乗りたいアトラクションがあるんでしょう?
ジェットコースター系でなければいくらでも付き合いますから。行きましょう?」
「…うん。ありがとう、昴…。」
その後もアトラクションを楽しんだりポップコーンを買って食べ歩いたりしているとあっという間に夜になった。
パレードがみたいのだが人が多くて後ろの方だとよく見えないらしい。ピョンピョンとジャンプして見ようと頑張っていた。
「うーん…見えない。ヒールならまだしも、今日はスニーカーだから身長的に厳しい…。」
「仕方ありませんね。肩に手を回して下さいね。」
「えっ!?なにす…ヒャッ!」
「お姫様抱っこです。僕は背が高いので、こうして持ち上げればよく見えるでしょう?」
「み…みっ…見えるけども!!恥ずかしい!!」
「いいじゃないですか。皆パレードに夢中で誰もこちらを見てませんよ。」
「そうかもだけど、お姫様抱っこなんて…!」
「You're my princess.命にかえても守りますよ、姫。」
「ごめ…パレードの音でよく聞こえなかった…なんて?」
「なんでもありません。綺麗ですね。」
「凄いよね。」
綺麗だと思うのはパレードよりもパレードを見て輝く彼女の瞳なのだが。
パレードを見終えてロッカーから荷物を取り出し車へ向かった。
「やっぱり皆帰るから混みそうだね。」
「そうですね…。どこかコンビニに適当に買って夕食は済ませましょうか。どうせ帰り道渋滞するでしょうし。」
駅近くの建物のコンビニで、運転しながらでも食べられるようにおにぎり3つとコーヒーを買った。
ナマエはサンドイッチに野菜ジュースを選んだらしい。
車に乗り込み走らせたものの、やはり渋滞が酷かった。
かなりゆっくりとはいえ進んではいるので、左手でハンドルを握ったまま右手でおにぎりを掴んで食べた。
「コーヒー開けておこうか?」
「助かります。利き手が塞がっていますので…。」
「…男の人が運転しながら何か食べてる姿、私好きかも。」
「そうなんですか?」
「なんだろう、ちょっと色気を感じる。」
「独特な感性をお持ちで。」薄目を開けて舌なめずりをするとナマエが顔を赤らめた。
「ちょ、その顔ずるい…。」
彼女は赤くなった顔を手で隠しながら呟く。
「何もしてませんが。」
「…そういえば昴って瞳の色、緑なんだね。」
「……えぇ。」
「秀一さんも緑だったような…。二人って親戚?」
「いいえ。」
しまった。薄目とはいえ、前の車と車間が近くてライトが明るいので思ったより瞳の色がはっきり見えてしまったらしい。
「瞳の色が同じだからといって親戚と思うのは少々短絡的過ぎますよ。」
「そうだよね。…綺麗な瞳の色だね。」
「ナマエの瞳の色も素敵ですよ。」
「ありがとう。両親に感謝しないと。」
「そうですね。食べ終えたら寝ていて良いですからね。これだけ渋滞しているとまだまだ帰宅までは長いですから。」
「うん、じゃあ遠慮なく。…運転出来なくてごめんね。免許あるのに…。」
「良いんですよ、運転嫌いではありませんから。
あぁ、後ろにブランケットがありますので使って下さい。新品ですからタバコの匂いはあまりしないと思います。」
「わざわざ用意してくれたの?ありがとう。」
「寝ていると思ったより冷えますから。女性に冷えは大敵でしょう?…おやすみなさい。」
「ん…すばる、今日は連れてきてくれてありがとう。ちょっと寝るね、おやすみ。」
彼女が寝た事を確認し、窓を半分程開けて煙草を吸った。なるべく窓の外に向かって煙を吐く。
「少しずつ記憶を取り戻しはじめている。
俺が本来はいない存在だと知ったら…どういう反応をするんだろうな。」
タバコを咥えたまま彼女の頭を優しく撫でた。
その後は何事もなく運転に集中した。
… ナマエが起きていたとは知らずに。