どうやら魘されていたようで、
ナマエに不安そうな顔で起こされた。
「はぁっ…はぁっ…っ…。起こしてすまない。」
汗で額に髪の毛がへばりつく。
手で額を覆うとナマエにそっと抱きしめられた。
「大丈夫…？」
「昔の出来事だった。父の夢だ。本当に嫌な夢だった…。いつも通りの、普通の1日だった。
その日、父は俺にニットの帽子をくれたんだ。
…父は帽子が好きだったが、そのくれた帽子は父の1番のお気に入りだった。
その後帰りを待っていたのに…もう父は二度と帰ってこなかった。それは事実だ。
…その後夢の中で組織に父が無惨に殺されている様子を見てしまった。」
「…それはただの夢だよ。大丈夫。」
「そうだな…。本当に嫌な夢だった。」
「…お水持ってくるよ、待ってて。」

今回ナマエの両親に会って、無意識に父の事を思い出して居たのかもしれない。
父もナマエのお父さん程ではないかもしれないが強くて優しくてとても明るい人だった。
俺は雰囲気だけは父に似ている。
鏡を見れば父を思い出せる位には似ているだろう。
…今何処に居るんだろうか。
まだ生きているのかすら分からない…。
生きていて欲しい。
「はい、お水。」
「ありがとう。」

受け取って飲むと少し落ち着いた。
「さ、寝よ。まだ夜中だし。」
「そうだな…。」
汗をかいたTシャツを脱いで椅子の背もたれにかけると、再び横になった。
汗ばんでいるのでナマエに近づかず仰向けに横になっていたら抱きついてきた。
遠慮がちに抱き寄せる。
頭に顎をのせるとシャンプーの甘い香りがして落ち着いた。そのせいで段々と瞼が重くなってきた。
あぁ、これならまた寝れそうだ。
……いつか、ナマエとなら父を見つけられそうな気がする。
父に会わせたい。
そう思いながら眠りについた。


…「待って、上半身裸とかずるい…。筋肉美に見とれて寝れないよ…。」
シュウが寝てくれたのは良かったが、今度は私が眠れなくなってしまったのだった。