アウトレットに到着してまずは腹ごしらえだ。
現在11時。お昼にはちょうど良い頃。
フードコートでお昼を食べる事にした。

「シュウは何にしたの？」
「ラーメン。」
「何ラーメン？」
「味噌。」
「お、良いねぇ。私豚丼。あ、もう出来たみたい。早い！先に取りに行ってくる。」
トレーを持って戻ると、ちょうどシュウも出来上がったらしい。
呼び出しの機械がけたたましく鳴っていた。
「俺も行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
遠くからシュウがラーメン屋の前に立っているのを見えたが、もの凄く目立っている。
背も高いしスタイルも良く、顔も良い。
周囲の人達が芸能人かな？とコソコソ話をしている。
帽子かサングラスでもつけさせるべきだったか。

組織壊滅以来、帽子はたまにしか被っていない。
帽子は元々父のものだったらしく、今までお守りとして身につけていたらしい。
今はその必要がなくなったからな、と話していた。


シュウがラーメンを持って目の前に座る。
周囲の女の子の視線が刺さるように痛い。
「なんだ、彼女持ちか〜。」
「私、隙を見て声かけちゃおうかなー。」
コソコソと話をしているのが聞こえる。
うわー…。
「大丈夫だ、他の女に興味はない。」
ラーメンを食べながらはっきり言うシュウに内心少し安心した。
「はっきり言い過ぎじゃない？」
「事実だ。…ぼんやりしていたら冷めるぞ？」
「あっ、いただきます。…美味しい！」
「これも旨いぞ。食ってみろ。」
「えっ、ありがとう。」
まさかシュウに"あーん"されるなんて。
「ん、美味しい。私の豚丼も1口食べて良いよ。そのレンゲ貸して。」
レンゲに少しよそってシュウに渡す。
「食べさせてくれないのか？」シュウが頬杖をついてニヤリと笑う。
何その笑顔ー！私を萌え殺す気ですか？
「あ、あーん。」
「うん、旨い。」

そんな事をしていたらいつの間にか女の子達はどこかへ行ってしまった。

「…あっ、女の子達居なくなった。
もしかして…シュウ、狙ってやったでしょ。」
「牽制の為だ。」

本当はナマエを狙っている男共を牽制したくてやったんだが。
さっきからコソコソしていた奴らも居なくなったようだ。

食べ終わってトレーを片付けていると隣に男が立っていた。
あ、邪魔になってたかな？
避けようと数歩後ろに下がるとついてきた。
「ねぇ、俺とこの後アウトレット回らない？あんな完璧な彼氏いたら気を使って疲れるでしょ？」
何言ってるんだろうか。
「は？」
「俺の"妻"に何か用か？」
「えっ！？妻？…な、なんでもないです！」
シュウに驚いて走って逃げていった。
「油断も隙もないな。まさか声をかけてくるとは。」
「シュウ、顔怖いよ。
はーぁ、それにしても夫婦に見られないのかー。
指輪はしてるんだけどなー。」
「どうせ顔しか見てないんだろう。気にするな。
ほら、行くぞ。」
腕を組まされて店の外へと出た。


「うわ、この子ども服可愛い…。女の子ならこういう服着せたい！」
「いつか子供が出来たらまた一緒に来よう。
その時買うと良い。」
「うん。」その言葉が嬉しくも少し気恥ずかしかった
「…今は君自身の服を見繕う時間だ。」
「じゃあ好きなブランドがあっちにあるんだけど…。行ってきてもいい？」
「俺の事は気にせずゆっくり見てろ。喫煙所にいるから終わったら電話してくれ。」
「分かった。」

30分ほど買い物を楽しんで電話をかけた。
「もしもし、今どこー？」
「後ろだ。」後ろから手を掴まれて電話を切られた。
「あれ。サングラス買ったの？」
「あぁ、声をかけてくる奴らが多くて、なかなか喫煙所にたどり着けなくてな。」
「それは大変だったね。まぁサングラスかけてそれだけピリピリしてたら誰も声かけないわ。
そろそろ旅館に行こ。」
「そうだな。途中どこかで酒を買いたい。」
「どこかスーパーに寄ろうか。」
車に乗り込みアウトレットを後にした。