第3章〈完結〉
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久しぶりにアメリカに帰ってきた。
ちなみに仮に住むところはジェイムズが用意してくれているそうだ。
これからその家へと向かう予定。
「お二人共こっちです!」
キャメルが空港まで迎えに来てくれた。
「車がないでしょうから、私を運転手代わりに使って下さい!」
「助かるよキャメル。」
「キャメルさんありがとう。」
空港から30分で家には着いた。立派な洋館だ。
「これはまた随分大きい家だな。ファミリー向けじゃないのか?」
「二人でしか住まないのに大きいよね…。昔のセーフハウスと同じ位のサイズな気がする。」
「立派な家ですね。」キャメルさんも驚いている。
とりあえず鍵を預かって家に入り荷物を置いた。
「明日の朝から射撃訓練があるそうです。後で予定のメールを送ります。」
「キャメル、新人を教えるそうだが何名だ?」
「5名いるそうです。そのうち二人はとても優秀らしく、将来有望視されているそうですよ!」
「ホォー、それは楽しみだな。」
「教えがいがありそうだね。」
「えぇ。ではまた明日にお迎えに来ます。」
「あぁ。キャメル、頼んだぞ。」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
その日は近くのレストランで夕食を取り早めに寝た。
次の日もキャメルの運転でFBIの建物へ向かった。
「赤井くん、ナマエくん、待っていたよ。久しぶりだね。」
「わー!ジェイムズ!」
「そうだ、二人とも結婚おめでとう。こちらに帰ってきている間私から何かお祝いがしたい。」
「気持ちだけで十分だ。」
「じゃあ皆でご飯行こ!あっ、そういえば人事で名前変更しないといけないんだよね…。」
「私がやっておこう。」
「やった!ジェイムズありがとう。」
「お二人共お預かりしている銃の所へ案内しますので。」キャメルが声をかけてきた。
「武器庫だろ?場所は分かるぞ。」
「えぇ。ですが暗証番号など変わってますので案内します。」
武器庫に着いて指紋認証、目の虹彩認証と鍵と暗証番号を入力しようやく入室する。
「いつ来ても厳重ね。」
「大事な銃を盗まれても困るからな。」
「お二人のはさらに鍵をかけてあります。…この鍵です。」
鍵付きのケースを開けて久々に愛用する銃と対面する。
「久しぶり!私のライフル!」
「…きちんと手入れをしてくれていたようだな。」
「えぇ、一応私が。」
「ありがとうキャメル。」
「あ、赤井しゃん…そ、それくらいしかお手伝い出来ませんから!」キャメルが照れたように顔を赤らめている。
「…赤井さん、昔より物腰柔らかくなりましたね…。」
「そうか?…まぁ組織が壊滅して、常に殺気立つ理由はもうあまり無いからな。」
「な、なるほど。」
「さっそく訓練所へ向かおうか。そいつらの実力を見せてもらおうか。」
「は、はい!」
足早に訓練所へ向かうと防弾チョッキとFBIのジャケットに袖を通した。
新人達の前に行き自己紹介をする。
「俺は赤井秀一だ。」
「あ…赤井ナマエです。紛らわしいので名前で呼んでください。」
自分で言ってなんだか恥ずかしくなった。
「それぞれ簡単に自己紹介を頼む。所属と名前だけで構わん。」
それぞれ名前は
トニー、マーシャー、セオドア、ランビック、ワトソン。
「ワトソン君か、良い名前だな。」
「親がシャーロックホームズ好きで。」
「そうか。ランビックも珍しい名前だ。親が酒好きなのか?」
「えぇ。父がお酒が好きで。僕もお酒好きです。」
「ホォー。」
「赤井さんが雑談なんて珍しいですね。」
キャメルがコソッと私に耳打ちをした。
「皆緊張でガチガチになってるから緊張を解してるんでしょ。」
「な、なるほど、流石赤井さん!」
とりあえず一人ずつ的を当てさせ一人ずつアドバイスをする事にした。シュウが3名、私が2名担当した。
おそらく有望視されている2名というのはワトソン君とランビック君だろう。群を抜いて上手い。
「もっと肩を落とせ。的をよく見ろ。」
「肩に力入ってるよ。もっとリラックスして。」
それぞれ声をかけていく。
その日は3時間程訓練を行った。
次の日も同様の訓練を行い、3日目になる頃は動く的に当てる訓練を行った。
動く的に当てるのは皆大苦戦で誰一人当てられなかった。
「シュウ、見本見せてあげたら?」
「…よく見てろよ。」
銃を構えると数秒で的を撃ち抜いた。しかも連続で2発撃ち、どちらも的のど真ん中を貫いていた。
新人達も驚いて歓声をあげた。
「実践では、対象は的のように止まっていない。
しかもほとんどは建物内ではない。外だ。
対象が動いている中、風を読みつつ確実に撃たねばならん。よく練習しておけ。」
その後もみっちり練習を重ねて、ど真ん中ではないがワトソン君とランビック君は的に当たるようにはなった。
「すごいねぇ!なかなか初日で当てられる人はいないよ!」
「精進します。」
「今後も頑張ります!」
訓練を終えて帰ろうとした時ランビック君がシュウに声をかけてきた。
「あの…もしご予定なければ一緒に呑みに行ってください!色々お話が聞きたいんです!」
「あぁ、構わんよ。
ナマエ、先に帰っていてくれ。
キャメル、すまないが送っていってくれないか?」
「もちろんです!お任せ下さい!」
「じゃあシュウ、後でね!」
家に帰宅する前にスーパーに寄ってもらった。
食材を買い足して帰宅する。
せっかくなので夕食を作り、キャメルさんと共に夕食を食べた。
初めはキャメルさんがものすごく遠慮していたけど、一人で食べるのもなんだか寂しいからと告げるとそれならと一緒に食べてくれた。
「遅いですね、赤井さん。」
「うーん。思ったより遅いよね。話し込んでるのかなー。」
シュウが帰ってくるまでキャメルさんが居てくれるつもりだったがなかなか帰ってこない。
もう夜中1時だし…。
試しにスマホのGPSで居場所を探ると何故か郊外の倉庫に居るようだった。一瞬GPS壊れたかと思った。
「は?なんでこんな所にいるの?」
「…随分離れた所に居ますね…。」
「こんな所で狙撃訓練?」
「ははは、まさか!赤井さん酔ってもそんな事しないでしょう!」
「だよねー。…なんか、ちょっと不安だな。」
「…私もです。迎えに行きましょうか?」
「…うん。お願い。念の為ジェイムズに連絡して。
私先に行ってるから。」
「えっ、先に?車はあるんですか?」
「大丈夫大丈夫、色々私なりの行き方があるから。念の為ライフルと拳銃を持ち帰っておいてよかった。じゃあキャメルさん、家の鍵よろしく!」
「えっ、ちょ!ナマエさぁん!」
ライフルバッグと拳銃を身につけて家を出た。
とりあえず夜に目が利くフクロウの姿になり、GPSの場所まで飛んだ。
随分遠い。40分は飛んでいるんじゃないか?
暗いが万が一犯人に見られたから困る為そう易々と姿あらわしができないのが残念。
もー!こんな夜中になにしてんのかなー。
少しすると倉庫にようやく着いた。
倉庫周囲に10人ほど人がいる。
フクロウのまま倉庫の上の小窓から中を覗くと明かりが漏れている椅子に括り付けられているシュウが見えた。随分と頑丈そうに固定されている。
その上殴られたのか頬が片方少し腫れ、口の端から血が垂れている。
倉庫内にいるのはランビック君ともう一名。
私のシュウに何をしているんだ。
フツフツと心の底から怒りが湧き上がった。
…とりあえず冷静にならないと。
少し離れた所に移動してキャメルさんとジェイムズ、BOSSにも連絡した。
シュウが捕まっていること、犯人は10名以上いる事。
ジェイムズからは応援が来るまで待つように言われたがそんな事をしていたらもっと酷い目にあうかもしれない。
とりあえず外の奴らをまずどうにかしないと。
近くの草むらに火をつけた。
何事だと慌てる男達を全員魔法で眠らせ消火した。
再度中を覗くも未だにシュウを痛めつけていた。
人の姿に戻りドアを開けようと試みたが鍵がかかっている。
"アロホモラ"
よし、魔法で鍵が開いた。
拳銃を両手に持ち突入した。
「動くな。手を上げろ。」
「おや、よかったですね。愛しの奥さんが迎えに来ましたよ。どうせなら二人一緒にあの世に連れて行ってあげますからね。
痛めつけるのはやめにしましょう。そろそろ飽きた。赤井秀一、お前を殺すのは俺の役目だ。」
「ランビック…。なんでこんな事を!」
「組織が壊滅した復讐だよ!
俺は元々組織の人間だった。FBIに潜入しNOCが誰なのか調べるつもりだった。
だがFBIに入る直前に組織が壊滅してほとんど皆捕まった。俺は用無しだ…。
…FBI捜査官として組織壊滅までの全容を聞かされたよ。どれほど屈辱だったか。
赤井秀一とあんたさえ居なければ組織は壊滅しなかった。父も死ぬ事はなかったはずだ。
ちなみにランビックは俺の父の組織のコードネームだ。」
「まさか組織の人間が…FBIに入るなんて…。」
「知り合いに頼んで身分証を作ってもらったんだ。思いの外簡単だった。さて、お喋りはそろそろおしまいだ。初めにコイツが死ぬところを見てろよ。」
なんの前触れもなく注射器をシュウの首に刺した。
「やめて!」走ってそいつに掴みかかったが既に液体を身体に入れられた後だった。
「とっても良い薬を使ってあげたよ!かなり強い毒だからあっという間に死ねるはずさ!
特別に死ぬのを見届けてから殺してあげるよ!」
「冗談じゃない!」
急いでシュウの拘束を全て解いた。
「大丈夫?」
「フン……。悪いがこんな物は効かない。」
シュウはすぐさま立ち上がりランビックを制圧・拘束した。私ももう1人の男を捕まえて落ちていた紐で縛り上げた。
「クソッ!なんで死なない!お前この薬偽物だったのか!」ランビックがもう1人の男を責め立てた。
「まさか!薬は失敗ではありません!毒薬と筋弛緩薬を混ぜた致死率100%の薬なんです!」
「じゃあなんで死なない!」
二人で言い争っている間に入口から大勢の捜査官が入ってきた。
「赤井君!ナマエ君!大丈夫か?」
ジェイムズが慌てて近づいてきた。
「俺は大丈夫です。犯人をお願いします。」
「赤井しゃん!無事で良かった!」
キャメルは大号泣していた。
その後すぐに来た救急車にシュウを乗せて私も同乗した。周囲に聞かれないようにコソコソと話をする。
「シュウ、なんともない?痛い所は?」
「……一瞬苦しかったが大丈夫だ。君の魔法の効果のおかげだ。俺には効かなかった。
それに指の痛みも少しずつ引いて治ってきている。
両手三本ずつ指を折られたのは流石に痛かった。」
「そんな事までしたの!?許せない!そもそも何があったの?」
「ランビックと居酒屋で呑んでいた。
普通に雑談や狙撃について話をしていただけだ。
随分ハイペースで呑まされるなとは思ったが、特に変わった様子はなかった。
今思うと…おそらく酔いつぶれさせようとしていたんだろう。
その後店を出た時突然ランビックにクロロホルムをかがされた。それでも効かなかったらしく、後ろから来た奴に後頭部を思いっきり殴られた。
意識を失って、起きたら車の中で拘束させていた。
しばらく車に揺られてこの倉庫に着いてあのざまだ。
…まさか組織の人間がFBIに居るとはな…。
相当俺に恨みがあるようだったな。」
「……無事でよかった。」
「あぁ。心配かけたな。来てくれて助かったよ。」
「うん。」
「おい、泣くなよ。」
「ご…ごめ…安心したら涙出てきちゃった。あのね、そう簡単に死なないのは分かってたんだけど。でも怖かった。」
「こんな時に言う事では無いかもしれないが…
……病院に着いたら行きたい所がある。」
「どこ?」
「…トイレ。」
「ぇ゛」
とりあえずすぐに病院に着くとシュウがトイレに走っていった。
救急隊員が驚いて"走らないで下さい!"と叫んでいた。
「いやぁ、まいった。あれだけ酒ガブ飲みして一度もトイレに行けなかったからな。
君の前で失態を晒さずに済んでよかった。」
「………うん…良かったね。」
ずっと尿意を我慢していたとは…不憫で苦笑するしかない。
すぐレントゲンやら血液検査やら行ったが、特に問題はなかったらしい。明日には退院出来る。
「あ、シュウのスマホ鳴ってる。…もしもし?」
「その声はナマエ君かね?赤井君は大丈夫かね?」
「うん、大丈夫だよ。」
「赤井君から採取した血液からレラキシンという筋弛緩薬と、青酸カリに似た成分の毒薬が検出された。普通なら確実に死んでいるんだが…。」
「そんなの注射したのか、あのバカ達!…とりあえずシュウは大丈夫。そんなんじゃ死なないから。電話変わろうか?」
「あっ、いや元気なら良い。また連絡するよ。」
「投与したのは筋弛緩薬と青酸カリに似た毒薬だって。」
「…自分で言うのはなんだが、よく死なないな。」
「あのね…前に生き返らせたでしょ?」
「あぁ。」
「あれね、ドッグタグに魂を込めてそれごと身体に戻してあるんだけど…簡単にいうと魂がチェーンでぐるぐる巻きになってるようなもので、簡単には身体から出ていかないの。
つまり…私が生きている限り、よっぽどでなければ身体から魂は抜けないってこと。大半は身体は勝手に回復するし死なないの…。
私に従属するという一種の契約だから。」
「ホォー。それは随分と人間離れをしてしまった気がするな…。まぁ何があっても死なないというのは任務において便利だな。」
「だから病気もしないし風邪すらひかないはず。」
「元々めったに風邪は引かないが、最近一度も風邪はひかないな。」
「でしょ?だからといって油断しないでね。絶対死なないわけじゃないから。
……ふぁーぁ。なんか眠くなってきちゃった。」
「もう夜中の4時だからな。一緒に寝るか?」
「ソファー借りるから大丈夫。そのベッド狭いもん。」
「布団だけでも貰おう。」
ナースコールを押して看護師に枕と布団を借りた。
「おやすみ、シュウ。」
「…おやすみ。」
ちなみに仮に住むところはジェイムズが用意してくれているそうだ。
これからその家へと向かう予定。
「お二人共こっちです!」
キャメルが空港まで迎えに来てくれた。
「車がないでしょうから、私を運転手代わりに使って下さい!」
「助かるよキャメル。」
「キャメルさんありがとう。」
空港から30分で家には着いた。立派な洋館だ。
「これはまた随分大きい家だな。ファミリー向けじゃないのか?」
「二人でしか住まないのに大きいよね…。昔のセーフハウスと同じ位のサイズな気がする。」
「立派な家ですね。」キャメルさんも驚いている。
とりあえず鍵を預かって家に入り荷物を置いた。
「明日の朝から射撃訓練があるそうです。後で予定のメールを送ります。」
「キャメル、新人を教えるそうだが何名だ?」
「5名いるそうです。そのうち二人はとても優秀らしく、将来有望視されているそうですよ!」
「ホォー、それは楽しみだな。」
「教えがいがありそうだね。」
「えぇ。ではまた明日にお迎えに来ます。」
「あぁ。キャメル、頼んだぞ。」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
その日は近くのレストランで夕食を取り早めに寝た。
次の日もキャメルの運転でFBIの建物へ向かった。
「赤井くん、ナマエくん、待っていたよ。久しぶりだね。」
「わー!ジェイムズ!」
「そうだ、二人とも結婚おめでとう。こちらに帰ってきている間私から何かお祝いがしたい。」
「気持ちだけで十分だ。」
「じゃあ皆でご飯行こ!あっ、そういえば人事で名前変更しないといけないんだよね…。」
「私がやっておこう。」
「やった!ジェイムズありがとう。」
「お二人共お預かりしている銃の所へ案内しますので。」キャメルが声をかけてきた。
「武器庫だろ?場所は分かるぞ。」
「えぇ。ですが暗証番号など変わってますので案内します。」
武器庫に着いて指紋認証、目の虹彩認証と鍵と暗証番号を入力しようやく入室する。
「いつ来ても厳重ね。」
「大事な銃を盗まれても困るからな。」
「お二人のはさらに鍵をかけてあります。…この鍵です。」
鍵付きのケースを開けて久々に愛用する銃と対面する。
「久しぶり!私のライフル!」
「…きちんと手入れをしてくれていたようだな。」
「えぇ、一応私が。」
「ありがとうキャメル。」
「あ、赤井しゃん…そ、それくらいしかお手伝い出来ませんから!」キャメルが照れたように顔を赤らめている。
「…赤井さん、昔より物腰柔らかくなりましたね…。」
「そうか?…まぁ組織が壊滅して、常に殺気立つ理由はもうあまり無いからな。」
「な、なるほど。」
「さっそく訓練所へ向かおうか。そいつらの実力を見せてもらおうか。」
「は、はい!」
足早に訓練所へ向かうと防弾チョッキとFBIのジャケットに袖を通した。
新人達の前に行き自己紹介をする。
「俺は赤井秀一だ。」
「あ…赤井ナマエです。紛らわしいので名前で呼んでください。」
自分で言ってなんだか恥ずかしくなった。
「それぞれ簡単に自己紹介を頼む。所属と名前だけで構わん。」
それぞれ名前は
トニー、マーシャー、セオドア、ランビック、ワトソン。
「ワトソン君か、良い名前だな。」
「親がシャーロックホームズ好きで。」
「そうか。ランビックも珍しい名前だ。親が酒好きなのか?」
「えぇ。父がお酒が好きで。僕もお酒好きです。」
「ホォー。」
「赤井さんが雑談なんて珍しいですね。」
キャメルがコソッと私に耳打ちをした。
「皆緊張でガチガチになってるから緊張を解してるんでしょ。」
「な、なるほど、流石赤井さん!」
とりあえず一人ずつ的を当てさせ一人ずつアドバイスをする事にした。シュウが3名、私が2名担当した。
おそらく有望視されている2名というのはワトソン君とランビック君だろう。群を抜いて上手い。
「もっと肩を落とせ。的をよく見ろ。」
「肩に力入ってるよ。もっとリラックスして。」
それぞれ声をかけていく。
その日は3時間程訓練を行った。
次の日も同様の訓練を行い、3日目になる頃は動く的に当てる訓練を行った。
動く的に当てるのは皆大苦戦で誰一人当てられなかった。
「シュウ、見本見せてあげたら?」
「…よく見てろよ。」
銃を構えると数秒で的を撃ち抜いた。しかも連続で2発撃ち、どちらも的のど真ん中を貫いていた。
新人達も驚いて歓声をあげた。
「実践では、対象は的のように止まっていない。
しかもほとんどは建物内ではない。外だ。
対象が動いている中、風を読みつつ確実に撃たねばならん。よく練習しておけ。」
その後もみっちり練習を重ねて、ど真ん中ではないがワトソン君とランビック君は的に当たるようにはなった。
「すごいねぇ!なかなか初日で当てられる人はいないよ!」
「精進します。」
「今後も頑張ります!」
訓練を終えて帰ろうとした時ランビック君がシュウに声をかけてきた。
「あの…もしご予定なければ一緒に呑みに行ってください!色々お話が聞きたいんです!」
「あぁ、構わんよ。
ナマエ、先に帰っていてくれ。
キャメル、すまないが送っていってくれないか?」
「もちろんです!お任せ下さい!」
「じゃあシュウ、後でね!」
家に帰宅する前にスーパーに寄ってもらった。
食材を買い足して帰宅する。
せっかくなので夕食を作り、キャメルさんと共に夕食を食べた。
初めはキャメルさんがものすごく遠慮していたけど、一人で食べるのもなんだか寂しいからと告げるとそれならと一緒に食べてくれた。
「遅いですね、赤井さん。」
「うーん。思ったより遅いよね。話し込んでるのかなー。」
シュウが帰ってくるまでキャメルさんが居てくれるつもりだったがなかなか帰ってこない。
もう夜中1時だし…。
試しにスマホのGPSで居場所を探ると何故か郊外の倉庫に居るようだった。一瞬GPS壊れたかと思った。
「は?なんでこんな所にいるの?」
「…随分離れた所に居ますね…。」
「こんな所で狙撃訓練?」
「ははは、まさか!赤井さん酔ってもそんな事しないでしょう!」
「だよねー。…なんか、ちょっと不安だな。」
「…私もです。迎えに行きましょうか?」
「…うん。お願い。念の為ジェイムズに連絡して。
私先に行ってるから。」
「えっ、先に?車はあるんですか?」
「大丈夫大丈夫、色々私なりの行き方があるから。念の為ライフルと拳銃を持ち帰っておいてよかった。じゃあキャメルさん、家の鍵よろしく!」
「えっ、ちょ!ナマエさぁん!」
ライフルバッグと拳銃を身につけて家を出た。
とりあえず夜に目が利くフクロウの姿になり、GPSの場所まで飛んだ。
随分遠い。40分は飛んでいるんじゃないか?
暗いが万が一犯人に見られたから困る為そう易々と姿あらわしができないのが残念。
もー!こんな夜中になにしてんのかなー。
少しすると倉庫にようやく着いた。
倉庫周囲に10人ほど人がいる。
フクロウのまま倉庫の上の小窓から中を覗くと明かりが漏れている椅子に括り付けられているシュウが見えた。随分と頑丈そうに固定されている。
その上殴られたのか頬が片方少し腫れ、口の端から血が垂れている。
倉庫内にいるのはランビック君ともう一名。
私のシュウに何をしているんだ。
フツフツと心の底から怒りが湧き上がった。
…とりあえず冷静にならないと。
少し離れた所に移動してキャメルさんとジェイムズ、BOSSにも連絡した。
シュウが捕まっていること、犯人は10名以上いる事。
ジェイムズからは応援が来るまで待つように言われたがそんな事をしていたらもっと酷い目にあうかもしれない。
とりあえず外の奴らをまずどうにかしないと。
近くの草むらに火をつけた。
何事だと慌てる男達を全員魔法で眠らせ消火した。
再度中を覗くも未だにシュウを痛めつけていた。
人の姿に戻りドアを開けようと試みたが鍵がかかっている。
"アロホモラ"
よし、魔法で鍵が開いた。
拳銃を両手に持ち突入した。
「動くな。手を上げろ。」
「おや、よかったですね。愛しの奥さんが迎えに来ましたよ。どうせなら二人一緒にあの世に連れて行ってあげますからね。
痛めつけるのはやめにしましょう。そろそろ飽きた。赤井秀一、お前を殺すのは俺の役目だ。」
「ランビック…。なんでこんな事を!」
「組織が壊滅した復讐だよ!
俺は元々組織の人間だった。FBIに潜入しNOCが誰なのか調べるつもりだった。
だがFBIに入る直前に組織が壊滅してほとんど皆捕まった。俺は用無しだ…。
…FBI捜査官として組織壊滅までの全容を聞かされたよ。どれほど屈辱だったか。
赤井秀一とあんたさえ居なければ組織は壊滅しなかった。父も死ぬ事はなかったはずだ。
ちなみにランビックは俺の父の組織のコードネームだ。」
「まさか組織の人間が…FBIに入るなんて…。」
「知り合いに頼んで身分証を作ってもらったんだ。思いの外簡単だった。さて、お喋りはそろそろおしまいだ。初めにコイツが死ぬところを見てろよ。」
なんの前触れもなく注射器をシュウの首に刺した。
「やめて!」走ってそいつに掴みかかったが既に液体を身体に入れられた後だった。
「とっても良い薬を使ってあげたよ!かなり強い毒だからあっという間に死ねるはずさ!
特別に死ぬのを見届けてから殺してあげるよ!」
「冗談じゃない!」
急いでシュウの拘束を全て解いた。
「大丈夫?」
「フン……。悪いがこんな物は効かない。」
シュウはすぐさま立ち上がりランビックを制圧・拘束した。私ももう1人の男を捕まえて落ちていた紐で縛り上げた。
「クソッ!なんで死なない!お前この薬偽物だったのか!」ランビックがもう1人の男を責め立てた。
「まさか!薬は失敗ではありません!毒薬と筋弛緩薬を混ぜた致死率100%の薬なんです!」
「じゃあなんで死なない!」
二人で言い争っている間に入口から大勢の捜査官が入ってきた。
「赤井君!ナマエ君!大丈夫か?」
ジェイムズが慌てて近づいてきた。
「俺は大丈夫です。犯人をお願いします。」
「赤井しゃん!無事で良かった!」
キャメルは大号泣していた。
その後すぐに来た救急車にシュウを乗せて私も同乗した。周囲に聞かれないようにコソコソと話をする。
「シュウ、なんともない?痛い所は?」
「……一瞬苦しかったが大丈夫だ。君の魔法の効果のおかげだ。俺には効かなかった。
それに指の痛みも少しずつ引いて治ってきている。
両手三本ずつ指を折られたのは流石に痛かった。」
「そんな事までしたの!?許せない!そもそも何があったの?」
「ランビックと居酒屋で呑んでいた。
普通に雑談や狙撃について話をしていただけだ。
随分ハイペースで呑まされるなとは思ったが、特に変わった様子はなかった。
今思うと…おそらく酔いつぶれさせようとしていたんだろう。
その後店を出た時突然ランビックにクロロホルムをかがされた。それでも効かなかったらしく、後ろから来た奴に後頭部を思いっきり殴られた。
意識を失って、起きたら車の中で拘束させていた。
しばらく車に揺られてこの倉庫に着いてあのざまだ。
…まさか組織の人間がFBIに居るとはな…。
相当俺に恨みがあるようだったな。」
「……無事でよかった。」
「あぁ。心配かけたな。来てくれて助かったよ。」
「うん。」
「おい、泣くなよ。」
「ご…ごめ…安心したら涙出てきちゃった。あのね、そう簡単に死なないのは分かってたんだけど。でも怖かった。」
「こんな時に言う事では無いかもしれないが…
……病院に着いたら行きたい所がある。」
「どこ?」
「…トイレ。」
「ぇ゛」
とりあえずすぐに病院に着くとシュウがトイレに走っていった。
救急隊員が驚いて"走らないで下さい!"と叫んでいた。
「いやぁ、まいった。あれだけ酒ガブ飲みして一度もトイレに行けなかったからな。
君の前で失態を晒さずに済んでよかった。」
「………うん…良かったね。」
ずっと尿意を我慢していたとは…不憫で苦笑するしかない。
すぐレントゲンやら血液検査やら行ったが、特に問題はなかったらしい。明日には退院出来る。
「あ、シュウのスマホ鳴ってる。…もしもし?」
「その声はナマエ君かね?赤井君は大丈夫かね?」
「うん、大丈夫だよ。」
「赤井君から採取した血液からレラキシンという筋弛緩薬と、青酸カリに似た成分の毒薬が検出された。普通なら確実に死んでいるんだが…。」
「そんなの注射したのか、あのバカ達!…とりあえずシュウは大丈夫。そんなんじゃ死なないから。電話変わろうか?」
「あっ、いや元気なら良い。また連絡するよ。」
「投与したのは筋弛緩薬と青酸カリに似た毒薬だって。」
「…自分で言うのはなんだが、よく死なないな。」
「あのね…前に生き返らせたでしょ?」
「あぁ。」
「あれね、ドッグタグに魂を込めてそれごと身体に戻してあるんだけど…簡単にいうと魂がチェーンでぐるぐる巻きになってるようなもので、簡単には身体から出ていかないの。
つまり…私が生きている限り、よっぽどでなければ身体から魂は抜けないってこと。大半は身体は勝手に回復するし死なないの…。
私に従属するという一種の契約だから。」
「ホォー。それは随分と人間離れをしてしまった気がするな…。まぁ何があっても死なないというのは任務において便利だな。」
「だから病気もしないし風邪すらひかないはず。」
「元々めったに風邪は引かないが、最近一度も風邪はひかないな。」
「でしょ?だからといって油断しないでね。絶対死なないわけじゃないから。
……ふぁーぁ。なんか眠くなってきちゃった。」
「もう夜中の4時だからな。一緒に寝るか?」
「ソファー借りるから大丈夫。そのベッド狭いもん。」
「布団だけでも貰おう。」
ナースコールを押して看護師に枕と布団を借りた。
「おやすみ、シュウ。」
「…おやすみ。」