第3章〈完結〉
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今日は朝からお弁当を作っている。
せっかくの四月、桜が綺麗に咲いている時期なので広い公園にお花見に行くことにした。
あらかじめ買ったクーラーボックスに氷とビール、手作りのお弁当を入れてタクシーで行く予定だ。
「氷買ってきたぞ。」
「昴、ありがとう。クーラーボックスにもう詰めて大丈夫、もうすぐお弁当出来るから。」
「そうか、それは楽しみだ。凄く良い匂いがする。」
「卵焼き味見して。あーん。」
「…ん、旨い。少々甘いがこれも悪くは無い。」
「たまには良いでしょ、甘い卵焼き。よし、これでOK!ちょっと冷ましてる間着替えてくる。」
コンコン
部屋で着替えているとノックをされた。
「はーい。」
ガチャ
「…この間俺が買った服を着たのか。よく似合ってるよ。おそらくその服を着るんじゃないかと思って後ろのファスナー手伝いにきた。」
ワンピースには薄いピンク地に大きいオレンジと黒の花柄が描かれ、ウエストはネイビーのリボンベルトが巻かれている。
袖がフリルになっていて春らしいデザインだ。
「ありがとう。助かる。」
「……ファスナー出来たぞ。」
そう言うと後ろから抱きしめられた。
目の前の全身鏡越しに、昴の切ない顔が見える。
「昴……?」
「…こんなにも可愛い格好をしている君の隣に居るのは、何故"昴"なんだ…?いい加減"俺"が隣に立ちたい。」
「花見客が多いから仕方ないよ。…1箇所に長く滞在するには念の為昴の姿の方が安全だもの。
…そんな悲しそうな顔しないで。ね?」
「…分かっている。すまない。せっかくの日本での思い出が昴とばかりだという事に少し嫉妬した。」
「"シュウ"、帰ってきたら二人で写真撮ろう。」
「…そうだな。…そろそろ、行こう。」
荷物は昴が持ってくれた。
駅の方向に向かうとタクシーが走っていたので、手を挙げて止めて乗り込んだ。
思いの外混雑していたが空いている所を見つけて場所を取る。
レジャーシートを広げてお弁当を出して、持ってきた水筒から紙コップにお茶を注いで昴に渡した。
「ありがとう。」
「ビール呑むのは少し食べてからにしよ。空腹でお酒は身体に悪いからね。」
「あぁ。」
「「いただきます。」」
「お、唐揚げ旨い。この間の降谷くんの唐揚げに味が似てますね。」
「この間残りを食べさせて貰った時、味付けを参考にしたの!……あ、そうそう確かこんな感じ。美味しい。でもほんのり味が違うかも…?うーん、何が足りなかったんだろ。今度あむ兄に作り方聞こ…。」
「自分からしたらほとんど味は一緒ですけどね。……おや、胡麻和えもなかなかですね。ナマエのおかげで最近は甘い味付けに慣れてきました。」
「それは良かった。そろそろビールあける?」
「唐揚げ食べながらビールが呑みたかったんです。今取りますね。…はい、どうぞ。」
「ありがとう。ほんと唐揚げ好きね。」
「男は皆好きですよ。」
「嫌いな人なかなかいないよね。……あ、ビールに唐揚げ、やばいくらいおいし。」
「卵焼きも貰いますね。」
「うん、好きに食べて。たくさんあるから。」
お弁当を食べ終えてシートの上で寛ぎながらビールを呑んだ。
「髪の毛に桜の花びらがついてますよ。取りますね。」
「ありがとう。……ほーんと平和だね〜。」
「永遠に続けば良いですね…この平和が。」
「うん。……私、屋台で何か買ってこようかな…!
甘いもの食べたい。昴は何かいる?」
「あったら日本酒。」
「日本酒?…珍しいね。じゃあ行ってくる。」
屋台を見回しているといちご飴を見つけた。
だいぶ前の花火大会で食べ損ねたんだよねー。
買っちゃお。
いちご飴を買い、食べながら日本酒が売っている屋台を探す。あ、見つけた!
「すげー美人なおねーさん!一緒に飲もうぜ!」
「俺らと遊ぼーよー!!」
お酒を買おうとした瞬間、男二人組に絡まれてしまった。
チッ、面倒臭い。
酔っ払ってるなコイツら。
そのまま無視してお酒を買った。
「日本酒呑むの?やるねー!」
「私のじゃないです。」
「彼氏?そんなの置いといて俺たちと行こうよ!」
「こっちこっち、他にも人いるからさ、楽しーよー!」
グイグイ引っ張ってくる。ふざけるな、買ってもらったワンピースが伸びる。
「やめてください。」
「ヒューッ、威勢が良いなぁ!そういうのも嫌いじゃないぜ!」
「触らないで。服が伸びる。」
「は?服の心配?」
「僕のツレに何か用ですか?」
その時目の前に昴が立ちはだかった。
「なんだテメェ!」
「…悪いがソイツに触れていいのは俺だけだ。」
「なんだ優男が!ナメてんのか!」
1人が殴り掛かろうとしてきた手を掴み捻りあげて地面に転がし、もう1人の腕を掴んで牽制した。
「失せろ。この腕を折られても良いなら構わんが。」
わざと変声機を切り、目を見開いたまま男達にだけ聞こえる程度に呟いた。
ただならぬ殺気を感じ2人は慌てて逃げていった。
「…すまなかった、大丈夫か?」
「ちょっと!変声機ッ!」
急いで昴の首元を捲って変声機のスイッチを押した。
「…僕が一緒に行くべきでした。一人で行かせてすみません。何もされませんでしたか?」
「ちょっと服を引っ張られただけ。大丈夫。私そんなに弱くないから。」
「…そうだとしても心配しました。…日本酒ありがとうございます。」
「うん。戻ろう。」
レジャーシートに戻ってゆっくり堪能していたもののあっという間にいちご飴を食べ終えてしまった。
昴は涅槃かよ、と思うような体勢でゆっくり日本酒を楽しんでいる。
暖かいしなんだか眠くなってきたなー。
ボーッとしていると少し離れた所から叫び声が聞こえた。
「置き引き!ドロボー!」
女性が叫ぶ先に黒い服を着た男が遠くへ走っていった。手には茶色いカバンを持っている。
声を聞いた瞬間急いで靴を履いて財布とスマホをポケットに入れて追いかけた。
「ナマエ、先に行って足止めしろ。後ろから俺が確保する。」
「分かった。」
急いで先の方に移動して木の影から飛び出し、犯人の目の前に立ちはだかった。
その男は一瞬驚いてスピードを落としたものの、私の横を通り抜けようとしたので横にズレてファイティングポーズを取り進路を妨害した。
さすがに犯人は立ち止まった。
その瞬間後ろから来た昴が一瞬で犯人を押さえ込んだ。
少しするとカバンを取られた年配の女性が走ってきた。
「ありがとうございます!カバンが戻ってきて良かった!」
女性の連れが警察を呼んでいたのでそのまま警察を待った。
数分でパトカーのサイレンの音が響き警察官が走ってくる。すぐに犯人を連行してもらった。
他の警察官が事情を聴きたいとの事だったが悲鳴が聞こえて単に捕まえただけと言い、連絡先を伝えてレジャーシートに戻った。
「日本酒に花びらが入ってしまった。」
「戻ってくるまでちょっと時間かかったもんね。」
「ん…?妙な匂いがする。」
小声で昴に話しかけられた。
「え、何か入れられた…?」小声で返す。
「そうかもしれない。さっきの奴らか?」
なるべく顔をそちらに向けないよう目線だけ向けると遠くの方でさっき絡んできた男2人と連れの男3名がこちらを見てニヤニヤしていた。
「あいつらかも。こっそり警察呼んでくる。…ちょっ、何してんの!?」
「何が入っているか分からんからな。さすがにこんな人が多い所で殺しはしないだろう。」
小声で呟くと1口飲んでしまった。
「やめなよ!」
小声で窘めると昴がニヤリと笑った。
「これはまた…随分と低レベルな媚薬だな。恥をかかすつもりで入れたんだろう。まぁ、普通のやつならこの程度でも効くだろうな。」
「警察呼び戻してくるね。」
「頼む。」
走って行くとパトカーがまだ居たので事情を説明した。警察官二人に急いで来てもらいその男5人に事情を聞くことにした。
昴は証拠のお酒のコップを警察に渡した。
事情聴取をした結果、媚薬以外にその5人組全員のポケットから覚せい剤が出てきて全員パトカーに突っ込まれる事になった。
「…平和だねとか言ってたらそんな事なかった。」
「そういう事を言うと厄介事が舞い降りて来るものですよ。」
「ねぇ、本当になんともない?大丈夫?」
急に顔をぐっと近づけられ、小声で囁かれた。
「今すぐ抱きたいと言ったら、どうしますか?」
随分と熱を帯びた目で見つめられドキッとした。
「……えっ、やっぱr」
「冗談ですよ、真に受けないで下さい。
あんな子供だましのような薬効くわけないでしょう?
昔、君に散々耐性をつけてもらいましたからね。
さて、そろそろ帰りましょう。
夕食はどうしましょうか?宅配でも頼みましょうか?」
「宅配にしよ!中華が良いな。天津飯に餃子が食べたい!」
「ではそうしましょうか。」
頷いて昴の手を取りながら思う。
もう二度と平和だね、なんて言わないようにしよ…。
せっかくの四月、桜が綺麗に咲いている時期なので広い公園にお花見に行くことにした。
あらかじめ買ったクーラーボックスに氷とビール、手作りのお弁当を入れてタクシーで行く予定だ。
「氷買ってきたぞ。」
「昴、ありがとう。クーラーボックスにもう詰めて大丈夫、もうすぐお弁当出来るから。」
「そうか、それは楽しみだ。凄く良い匂いがする。」
「卵焼き味見して。あーん。」
「…ん、旨い。少々甘いがこれも悪くは無い。」
「たまには良いでしょ、甘い卵焼き。よし、これでOK!ちょっと冷ましてる間着替えてくる。」
コンコン
部屋で着替えているとノックをされた。
「はーい。」
ガチャ
「…この間俺が買った服を着たのか。よく似合ってるよ。おそらくその服を着るんじゃないかと思って後ろのファスナー手伝いにきた。」
ワンピースには薄いピンク地に大きいオレンジと黒の花柄が描かれ、ウエストはネイビーのリボンベルトが巻かれている。
袖がフリルになっていて春らしいデザインだ。
「ありがとう。助かる。」
「……ファスナー出来たぞ。」
そう言うと後ろから抱きしめられた。
目の前の全身鏡越しに、昴の切ない顔が見える。
「昴……?」
「…こんなにも可愛い格好をしている君の隣に居るのは、何故"昴"なんだ…?いい加減"俺"が隣に立ちたい。」
「花見客が多いから仕方ないよ。…1箇所に長く滞在するには念の為昴の姿の方が安全だもの。
…そんな悲しそうな顔しないで。ね?」
「…分かっている。すまない。せっかくの日本での思い出が昴とばかりだという事に少し嫉妬した。」
「"シュウ"、帰ってきたら二人で写真撮ろう。」
「…そうだな。…そろそろ、行こう。」
荷物は昴が持ってくれた。
駅の方向に向かうとタクシーが走っていたので、手を挙げて止めて乗り込んだ。
思いの外混雑していたが空いている所を見つけて場所を取る。
レジャーシートを広げてお弁当を出して、持ってきた水筒から紙コップにお茶を注いで昴に渡した。
「ありがとう。」
「ビール呑むのは少し食べてからにしよ。空腹でお酒は身体に悪いからね。」
「あぁ。」
「「いただきます。」」
「お、唐揚げ旨い。この間の降谷くんの唐揚げに味が似てますね。」
「この間残りを食べさせて貰った時、味付けを参考にしたの!……あ、そうそう確かこんな感じ。美味しい。でもほんのり味が違うかも…?うーん、何が足りなかったんだろ。今度あむ兄に作り方聞こ…。」
「自分からしたらほとんど味は一緒ですけどね。……おや、胡麻和えもなかなかですね。ナマエのおかげで最近は甘い味付けに慣れてきました。」
「それは良かった。そろそろビールあける?」
「唐揚げ食べながらビールが呑みたかったんです。今取りますね。…はい、どうぞ。」
「ありがとう。ほんと唐揚げ好きね。」
「男は皆好きですよ。」
「嫌いな人なかなかいないよね。……あ、ビールに唐揚げ、やばいくらいおいし。」
「卵焼きも貰いますね。」
「うん、好きに食べて。たくさんあるから。」
お弁当を食べ終えてシートの上で寛ぎながらビールを呑んだ。
「髪の毛に桜の花びらがついてますよ。取りますね。」
「ありがとう。……ほーんと平和だね〜。」
「永遠に続けば良いですね…この平和が。」
「うん。……私、屋台で何か買ってこようかな…!
甘いもの食べたい。昴は何かいる?」
「あったら日本酒。」
「日本酒?…珍しいね。じゃあ行ってくる。」
屋台を見回しているといちご飴を見つけた。
だいぶ前の花火大会で食べ損ねたんだよねー。
買っちゃお。
いちご飴を買い、食べながら日本酒が売っている屋台を探す。あ、見つけた!
「すげー美人なおねーさん!一緒に飲もうぜ!」
「俺らと遊ぼーよー!!」
お酒を買おうとした瞬間、男二人組に絡まれてしまった。
チッ、面倒臭い。
酔っ払ってるなコイツら。
そのまま無視してお酒を買った。
「日本酒呑むの?やるねー!」
「私のじゃないです。」
「彼氏?そんなの置いといて俺たちと行こうよ!」
「こっちこっち、他にも人いるからさ、楽しーよー!」
グイグイ引っ張ってくる。ふざけるな、買ってもらったワンピースが伸びる。
「やめてください。」
「ヒューッ、威勢が良いなぁ!そういうのも嫌いじゃないぜ!」
「触らないで。服が伸びる。」
「は?服の心配?」
「僕のツレに何か用ですか?」
その時目の前に昴が立ちはだかった。
「なんだテメェ!」
「…悪いがソイツに触れていいのは俺だけだ。」
「なんだ優男が!ナメてんのか!」
1人が殴り掛かろうとしてきた手を掴み捻りあげて地面に転がし、もう1人の腕を掴んで牽制した。
「失せろ。この腕を折られても良いなら構わんが。」
わざと変声機を切り、目を見開いたまま男達にだけ聞こえる程度に呟いた。
ただならぬ殺気を感じ2人は慌てて逃げていった。
「…すまなかった、大丈夫か?」
「ちょっと!変声機ッ!」
急いで昴の首元を捲って変声機のスイッチを押した。
「…僕が一緒に行くべきでした。一人で行かせてすみません。何もされませんでしたか?」
「ちょっと服を引っ張られただけ。大丈夫。私そんなに弱くないから。」
「…そうだとしても心配しました。…日本酒ありがとうございます。」
「うん。戻ろう。」
レジャーシートに戻ってゆっくり堪能していたもののあっという間にいちご飴を食べ終えてしまった。
昴は涅槃かよ、と思うような体勢でゆっくり日本酒を楽しんでいる。
暖かいしなんだか眠くなってきたなー。
ボーッとしていると少し離れた所から叫び声が聞こえた。
「置き引き!ドロボー!」
女性が叫ぶ先に黒い服を着た男が遠くへ走っていった。手には茶色いカバンを持っている。
声を聞いた瞬間急いで靴を履いて財布とスマホをポケットに入れて追いかけた。
「ナマエ、先に行って足止めしろ。後ろから俺が確保する。」
「分かった。」
急いで先の方に移動して木の影から飛び出し、犯人の目の前に立ちはだかった。
その男は一瞬驚いてスピードを落としたものの、私の横を通り抜けようとしたので横にズレてファイティングポーズを取り進路を妨害した。
さすがに犯人は立ち止まった。
その瞬間後ろから来た昴が一瞬で犯人を押さえ込んだ。
少しするとカバンを取られた年配の女性が走ってきた。
「ありがとうございます!カバンが戻ってきて良かった!」
女性の連れが警察を呼んでいたのでそのまま警察を待った。
数分でパトカーのサイレンの音が響き警察官が走ってくる。すぐに犯人を連行してもらった。
他の警察官が事情を聴きたいとの事だったが悲鳴が聞こえて単に捕まえただけと言い、連絡先を伝えてレジャーシートに戻った。
「日本酒に花びらが入ってしまった。」
「戻ってくるまでちょっと時間かかったもんね。」
「ん…?妙な匂いがする。」
小声で昴に話しかけられた。
「え、何か入れられた…?」小声で返す。
「そうかもしれない。さっきの奴らか?」
なるべく顔をそちらに向けないよう目線だけ向けると遠くの方でさっき絡んできた男2人と連れの男3名がこちらを見てニヤニヤしていた。
「あいつらかも。こっそり警察呼んでくる。…ちょっ、何してんの!?」
「何が入っているか分からんからな。さすがにこんな人が多い所で殺しはしないだろう。」
小声で呟くと1口飲んでしまった。
「やめなよ!」
小声で窘めると昴がニヤリと笑った。
「これはまた…随分と低レベルな媚薬だな。恥をかかすつもりで入れたんだろう。まぁ、普通のやつならこの程度でも効くだろうな。」
「警察呼び戻してくるね。」
「頼む。」
走って行くとパトカーがまだ居たので事情を説明した。警察官二人に急いで来てもらいその男5人に事情を聞くことにした。
昴は証拠のお酒のコップを警察に渡した。
事情聴取をした結果、媚薬以外にその5人組全員のポケットから覚せい剤が出てきて全員パトカーに突っ込まれる事になった。
「…平和だねとか言ってたらそんな事なかった。」
「そういう事を言うと厄介事が舞い降りて来るものですよ。」
「ねぇ、本当になんともない?大丈夫?」
急に顔をぐっと近づけられ、小声で囁かれた。
「今すぐ抱きたいと言ったら、どうしますか?」
随分と熱を帯びた目で見つめられドキッとした。
「……えっ、やっぱr」
「冗談ですよ、真に受けないで下さい。
あんな子供だましのような薬効くわけないでしょう?
昔、君に散々耐性をつけてもらいましたからね。
さて、そろそろ帰りましょう。
夕食はどうしましょうか?宅配でも頼みましょうか?」
「宅配にしよ!中華が良いな。天津飯に餃子が食べたい!」
「ではそうしましょうか。」
頷いて昴の手を取りながら思う。
もう二度と平和だね、なんて言わないようにしよ…。