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1冊目

俺はエミさんの顔を上げたまま質問する。
彼もまた変わらず、俺から目線を逸らしたまま答えた。

「そう…やな、そうなるな」
「なぁエミさん、もいっこ聞くわ。俺のこと、好きやろ」
「…何故」
「だってその反応どう見ても恋する乙女やん」

目線を逸らすとことか、赤く染めた頬や耳とか、友達に嫉妬するとことか。全部、絶賛片思い中の女の子の反応なんやもん。

「…そうですよ。私はシャオさんが好きです」

エミさんはそう言った後に“あぁこれは言うつもりなかったんやけどなぁ”と呟く。

「しかしだからと言って、お付き合いを申し込むとか、そういうことは…」
「しないん?」
「え」
「俺、エミさんのこと好きやで」

俺はついさっき自覚したことを、さも前々から知っていたかのように振る舞う。
俺は、狂人やからな。

「それは…本当なんやな…?」
「そこ偽ってどうすんねん」
「いやほら、曝し上げたりするとか…」
「エミさん、俺のことそんな酷い奴だと思ってたんかぁ~悲しいなぁ」

俺は顔を上げていた手を離し、悲しむ仕草をする。
するとエミさんは慌てて“そんなことない”と訂正してくる。そんな姿が可愛くて、思わずふっと吹き出してしまう。
それを見た彼はぷぅと頬を膨らませ、そっぽを向いてしまった。

「…遊んでたんですか」
「いやぁ…そんなつもりはないんやけど…エミさんが可愛くて」

そう言うと彼もまたふっと吹き出し、二人で笑い合う。

俺は笑う彼の横顔を見、この笑顔をずっと守っていこうと、こっそり天に誓うのであった。
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