1冊目
「シャオロンやん」
後ろから俺を呼ぶ声がする。誰かと振り返ると、そこにはゾムがいた。
しかしあまりにも近すぎたために、俺は情けない声を出しながらも彼から離れた。
「何やねん…」
それを見たゾムは、俺が彼を避けたと思ったのか、悲しい顔をする。
マジかよと思いつつも俺はそれを全力で否定した。
「ちゃうで!振り返ったらゾムがすごく近くにいてビビっただけやで!」
「あ、そうなん?ならええわ」
彼は安心したのか、ふぅと息を吐き出す。
誤解が解けて良かったと俺もホッとしていると、突然の浮遊感に襲われた。何や…またゾムが何かしたんか…?
「…ゾム何してん?」
「何って姫抱きしてるやん」
え、俺今姫抱きされて…?
いやちゃうんよゾムさん。俺はなんでそんな事してるのか聞きたいんや。
そんなたくさんの疑問を口に出そうとした瞬間、ゾムは突然走り出した。
いや~ゾムやっぱり早いなぁ。…待て待てそんな事思ってる場合やない!
「ゾムさんどこに連れていくん!?」
このままじゃゾムの目的もどこに連れて行かれるかも分からへんし、取り敢えず聞くことにした。
彼は走りながら、
「どこって、俺の家やろ。そこ以外無いわ」
と答えた。
家に連れていきたいなら呼べばええのに…何で俺連れてかれてん?ゾムの家なら俺知っとるのに…
なんて思っていると、ゾムが走るスピードを緩め、そしてとうとうある住宅街で止まった。
そっと降ろされた俺は辺りを見渡してみるが、全くもって見慣れない所。と言うかむしろ“こんなとこあったん?”って感じ。
マジでここどこなん!?ゾムの家でもないし…
「俺ここに住むことになったんよ」
「はえ~…」
ゾムは正面にある家を指差す。いや…ゾムは元々一人暮らしやったのに家借りる必要あったん?
「シャオロンさぁ…昔俺が言ったこと覚えとる?」
昔?俺昔ゾムにあったことあったっけ?思い出そうとしてもモヤがかかったように思い出せない。
ゾムは考え込む俺を見て、“忘れてしもたか”と呟き、昔話を始めた。
「昔なぁ…俺シャオロンと一緒に遊んでたんやで?それで俺んとこの親の都合でな、引っ越さんといけなくなってん。もちろん俺は嫌がった。当時唯一の友達やったから離れたくなかったし。でも親は引越しを考え直してくれへんかった」
ぽつりぽつりと言葉を落としていくゾムは、懐かしそうな、それでいてとても悲しそうな顔をしていた。しかし俺はそこまで話を聞いても思い出せない。俺の記憶どうなってん。
彼はさらに話を続けた。
「せやから俺、シャオロンに言ったんよ。大人になったら2人で一緒に住もうって、俺シャオロンの事好きやから絶対迎えに行くって」
その言葉がトリガーだったのか、途端に俺の頭の中に映像が浮かんでくる。
幼い頃の俺とゾムの面影を残している子供が2人、泣きながらお別れを言っている。その時の声、感情、色々なものを思い出した。
せや、俺もゾムのことが好きでそれを承諾したんや。
「ゾム…ごめんなぁ、忘れてて。俺今全部思い出した」
何で俺こんな大事なこと忘れてたんやろ…ほんまごめんなゾム。
「なぁ…ゾムは今でも俺のこと好き?」
俺は少し不安になりながらも訪ねる。
するとゾムは笑顔で、
「好きやなかったら迎えに来てへんよ」
そう答えた。
あぁ何年も俺の事を想ってくれてたんやなぁ。そんなら、これはちゃんと答えを返さなあかんよな。
「ありがとうゾム。ずっと俺のこと想ってくれてて。俺も…忘れてはいたけど、あの頃からずっとゾムのこと好きやで」
俺はゾムを抱きしめる。突然のことで彼は少しビクッとしたが俺の背中に腕をまわしてくれた。
「俺と付き合ってください」
「もちろん、よろこんで」
ずっと想ってくれてたゾムとなら、何でも乗り越えて行ける気がする。なあゾム、約束、覚えててくれてありがとうな。
後ろから俺を呼ぶ声がする。誰かと振り返ると、そこにはゾムがいた。
しかしあまりにも近すぎたために、俺は情けない声を出しながらも彼から離れた。
「何やねん…」
それを見たゾムは、俺が彼を避けたと思ったのか、悲しい顔をする。
マジかよと思いつつも俺はそれを全力で否定した。
「ちゃうで!振り返ったらゾムがすごく近くにいてビビっただけやで!」
「あ、そうなん?ならええわ」
彼は安心したのか、ふぅと息を吐き出す。
誤解が解けて良かったと俺もホッとしていると、突然の浮遊感に襲われた。何や…またゾムが何かしたんか…?
「…ゾム何してん?」
「何って姫抱きしてるやん」
え、俺今姫抱きされて…?
いやちゃうんよゾムさん。俺はなんでそんな事してるのか聞きたいんや。
そんなたくさんの疑問を口に出そうとした瞬間、ゾムは突然走り出した。
いや~ゾムやっぱり早いなぁ。…待て待てそんな事思ってる場合やない!
「ゾムさんどこに連れていくん!?」
このままじゃゾムの目的もどこに連れて行かれるかも分からへんし、取り敢えず聞くことにした。
彼は走りながら、
「どこって、俺の家やろ。そこ以外無いわ」
と答えた。
家に連れていきたいなら呼べばええのに…何で俺連れてかれてん?ゾムの家なら俺知っとるのに…
なんて思っていると、ゾムが走るスピードを緩め、そしてとうとうある住宅街で止まった。
そっと降ろされた俺は辺りを見渡してみるが、全くもって見慣れない所。と言うかむしろ“こんなとこあったん?”って感じ。
マジでここどこなん!?ゾムの家でもないし…
「俺ここに住むことになったんよ」
「はえ~…」
ゾムは正面にある家を指差す。いや…ゾムは元々一人暮らしやったのに家借りる必要あったん?
「シャオロンさぁ…昔俺が言ったこと覚えとる?」
昔?俺昔ゾムにあったことあったっけ?思い出そうとしてもモヤがかかったように思い出せない。
ゾムは考え込む俺を見て、“忘れてしもたか”と呟き、昔話を始めた。
「昔なぁ…俺シャオロンと一緒に遊んでたんやで?それで俺んとこの親の都合でな、引っ越さんといけなくなってん。もちろん俺は嫌がった。当時唯一の友達やったから離れたくなかったし。でも親は引越しを考え直してくれへんかった」
ぽつりぽつりと言葉を落としていくゾムは、懐かしそうな、それでいてとても悲しそうな顔をしていた。しかし俺はそこまで話を聞いても思い出せない。俺の記憶どうなってん。
彼はさらに話を続けた。
「せやから俺、シャオロンに言ったんよ。大人になったら2人で一緒に住もうって、俺シャオロンの事好きやから絶対迎えに行くって」
その言葉がトリガーだったのか、途端に俺の頭の中に映像が浮かんでくる。
幼い頃の俺とゾムの面影を残している子供が2人、泣きながらお別れを言っている。その時の声、感情、色々なものを思い出した。
せや、俺もゾムのことが好きでそれを承諾したんや。
「ゾム…ごめんなぁ、忘れてて。俺今全部思い出した」
何で俺こんな大事なこと忘れてたんやろ…ほんまごめんなゾム。
「なぁ…ゾムは今でも俺のこと好き?」
俺は少し不安になりながらも訪ねる。
するとゾムは笑顔で、
「好きやなかったら迎えに来てへんよ」
そう答えた。
あぁ何年も俺の事を想ってくれてたんやなぁ。そんなら、これはちゃんと答えを返さなあかんよな。
「ありがとうゾム。ずっと俺のこと想ってくれてて。俺も…忘れてはいたけど、あの頃からずっとゾムのこと好きやで」
俺はゾムを抱きしめる。突然のことで彼は少しビクッとしたが俺の背中に腕をまわしてくれた。
「俺と付き合ってください」
「もちろん、よろこんで」
ずっと想ってくれてたゾムとなら、何でも乗り越えて行ける気がする。なあゾム、約束、覚えててくれてありがとうな。