▼おや?叔父さん の ゴルーグ の 様子 が …… ?

【ゴルーグとバトル】

特訓の末にテレパシーで喋れる様になった叔父さんのゴルーグ。略さずに言うと叔父さんの様な存在のお兄さんのゴルーグなんだけど、言わなくても別にいい事だと思うので言わないでおく。
叔父さんの様な存在ことシュウがゲットして進化させたゴルーグはテレパシーで喋れる様になった。1週間経ったが未だに受け入れ難い。

「ほほーうクロガネ病院にはリハビリ用のバトルフィールドがあるのですね!シュウさんと旅をしてきましたからね、トレーナーのポケモンとしてフィールドを見ると血が滾ると言いますか……
とは言え血なんて無いんですがね!ゴルーグですので、ゴーレムポケモンゴルーグですので!!」

ほらもう今日も微妙にウザいんだよなぁ。ていうかシュウのポケモンなのになんで私についてくるんだろう……
ゴルーグの事はとりあえずスルーして、看護師さんから預かったポケモン達をボールから一斉に出してやる。私の役目はまぁ、ただ走り回るポケモン達を見張る監視員みたいなものだ。もちろんバトルするというなら審判もするけど。

「そういえば、あちらのフィールドにはトレーナーさんがいらっしゃいますが、この子達のトレーナーさんはいらっしゃらないのですか?」

「あー……こいつらはまだそこまで回復してない……自力で歩行ができない患者から預かったポケモンだから。
ただポケモンと生活してるだけの患者なら、起き上がれる様になった時点で車椅子で散歩くらいはできるけど、元々歩行能力に問題が無かったトレーナーが車椅子で更にバトルするってなると、絶対支障出てくるから」

「なるほど…… "わざ" の流れ弾やら飛んできた障害物やらを躱す、この子達のトレーナーはポケモントレーナーである限り宿命として背負う "自己責任" が果たせない状態という訳ですか」

「そうそう。んで、付け加えるなら医者がやめろっつってんのに絶対バトルしようとする哀れなアホトレーナー共から保護したポケモン達でもある」

「なるほど、病院のお世話になる方々の常識や物事の認識能力というのは千差万別ですからね!理解できますとも、ゴルーグですので!!」

理解してくれたのはありがたいけどやっぱりなんかウザいわ。
っていうか今 私ゴルーグと普通に会話してなかった?まずいぞ、受け入れるなこの珍妙極まりないポケモンを。
珍妙なゴルーグはボールから出て来たポケモン数匹を抱き上げて肩に乗せている。チクショウ懐かれてやがる、というかこの絵面なんか見た事ある様な……天空の城的な……腕を広げてくるくる回るな、それが許されるのは美少女だけだぞ。

「おやおや、このロコンとパチリスは少しおくびょうな性格の様ですね。ハッハッハ、大丈夫ですよ~ほーら怖くない怖くない」

「おいおいおいやめろやめろ噛みつかすなじめん・ゴースト!そいつら生まれたばっからしいしパチリスは兎も角ロコンは死ぬぞ!歯が!!」

くわっと口を開けたパチリスと小刻みに震えるロコンを抱き上げて、とりあえず地面に降ろす。まったく油断も隙もあったもんじゃない。パチリスはすぐに駆けて行ったけど、ロコンの方は本当におくびょうらしく足下から離れようとしない、他のポケモンはゴルーグに登るかポケモン同士で追いかけっこしたりじゃれたりしているというのに。やけに目新しそうにキョロキョロする割に風にさえビクつくなんて、この子のトレーナー、もしくは飼い主はどんな育て方をしたんだ?

「あのーもしかしてトレーナーさんですか?」

「え?あーああ、はいそうですけど、何か」

入院着姿の男の人がソワソワとこちらを見てくる。あえて気付かないフリをするけど、なんで声かけて来たかはわかる。バトルだろ、この感じ。
トレーナーは兎も角、普段あまりバトルしないという人も入院中で身体が回復してくると何故かバトルをしたがる、このリハビリ用バトルフィールドはそういう人達の為のフィールドという訳だ。私は病院暮らしみたいなもんなのでそういう事情には詳しいんだ。
案の定バトルを申し込まれたのでフィールドからポケモン達をはけさせ、ロコンは離れようとしないので仕方なく抱える事にした。

「しかしジムとかの公式戦以外のバトルってなんか久々な気がするな、誰出そう……」

「ロウさんロウさん、ここは私にお任せください」

ちょいちょいとまた肩を指で叩かれ、小声(?)で耳打ちされる。いや待てお前私のポケモンじゃないだろ、なんで出る気満々なんだ。

「ゴビットの頃もバトルしているところをご覧いただけなかったので、ここは1つ私の雄姿をご覧になっていただこうかと思いまして。
ご安心ください、ジムバッチ40個に殿堂入りする事5回のロウさんに逆らう様な真似は致しませんので!むしろ逆らったら砕かれます、ロウさんのポケモンに」

「あーまぁーそういう事なら……でも喋るなよ、あの人回復してるとは言え入院患者なんだからビックリさすなよ!」

張り切るゴルーグに覚えてるわざを教えてもらい、フィールドに出てもらう。あっヤバい特性聞くの忘れた。まぁ大方「てつのこぶし」だろうけど……
待って今普通にゴルーグからわざ教えてもらったし特性聞こうとしてたよ。ダメだって、ポケモンは普通自主的に覚えてるわざ教えてくれないって、特性も教えてくれないって、受け入れるな。

「ゴルーグですか!本物を見るのは初めてですが、どういうポケモンかはわかっています。負けませんよ!」

「アハハ……お手柔らかに。ええと、じゃあ使用ポケモンは1体のみで道具使用禁止でいいですか」

「はい、宜しくお願いします!行くぞマスキッパ!」

マスキッパか……相性的に不利だ、しかも私自身じめんタイプもゴーストタイプも1体ぐらいしか育てた事ない。ないけど、シュウのポケモンだしなんとかなるだろう、何とかしてみせる。

「よし行くぞゴルーグ!」

「お任せください!!ゴルーグ参りまsあっやばっ喋っちゃいました」
「お前ゴーレムポケモンのくせにコダックより記憶力悪いんか!!?」

「うわああああああゴルーグが喋ったぁー!!??」

これもう私怒られるじゃん……確定じゃん……
フィールドであんぐりと大きな口を開けていたマスキッパも腰を抜かした主人の元へ飛んでいく。ごめんなこんな奴連れてきて。

「ぱぎゃう!ギャギャギャッ!?」

「あ、ああ、ありがとうマスキッパ。僕は大丈夫、大丈夫だから……ええっと、勉強不足で申し訳ないんですが、ゴルーグって」
「喋りません喋りません喋ってません空耳です」

「えっでも今」

「喋っていませんよ~私ただのゴルーグですので!」
「喋ってますよねこれ!?」

「喋ってませんテレパシーです!!バトル!バトルしましょう、ね!!??」

「ヒェッわかりました……まぁテレパシーで意思疎通するポケモンもいるらしいし、すごいなぁ……」

よしなんとか誤魔化せたな。テレパシーで意思疎通するポケモンは軒並み伝説と言われてる奴ばっかりなんだけど、気付いてないらしいからノー問題。喋るヤドキングとか目撃されてるらしいし大丈夫大丈夫。

「誤魔化せてます?あれ」

「じゃかぁしい!!ハイドロポンプるぞ!!」

バトル終わったら絶対ハイドロポンプるわ。だって患者さん驚かせたって絶対怒られるもん、その前にぶちかますしかない。
渋々お互いに定位置に戻り、相手のマスキッパも怪訝そうな顔でフィールドに戻って来る。そりゃ不可解だわなこんなゴルーグ。

「よ、よし、とりあえず攻撃だマスキッパ!グラスミキサー!」

トレーナーには見えないと思っていたけどビンゴっぽい。わざマシンも使った事ないと踏んでわざは恐らく単調だ。楽に勝て……ちょっと忖度して勝たせてもらおう。
ていうかあのマスキッパ、グラスミキサーが使えるのにゴルーグを見た事が無いってどういう……?

「ってそれはどうでもいいんだ、ぶっちゃけると二次創作だしポケモンの出身によるわざの覚える覚えないとか気にしてられん。
ゴルーグ、躱してれいとうパンチだ!」

「ああああ痛い!くさタイプは痛いです!ゴルーグですので、じめん・ゴーストゴルーグですので!!」
「なんで受けてんのぉ!?」

腕で防御の姿勢をとってはいるけどゴルーグは黙ってわざを受けている。躱せって言ったのになんで、マジでコダックより記憶力悪いんじゃ……
いや待ってこいつ自分で「逆らう様な真似はしない」って言ったよな。1週間見ていて(ややウザい)ジョークは兎も角、嘘を吐く様な奴ではないとわかった。指示を無視した訳じゃないと仮定して、わざを "あえて受けた"───いや "避けなかった" としたなら理由は、まさか、

「お前まさか "ノーガード(※)" か!?」
(※BW2で解禁されたゴルーグの隠れ特性。自分と相手の攻撃が必ず当たるようになり、野生のポケモンとの遭遇率が1.5倍になる)

「あ、はいそうです。言いませんでしたっけ?」
「聞いとらんがな!!
……私が聞き損ねただけなんだけど聞いとらんがな!!」

「避けるなんて邪道です!ポケモンらしく正々堂々と打ち合うのが勝負と言うものでしょう!!」

ノーガードってそういうもんだっけ……?
しかしどうする?!ノーガードのゴルーグなんて初めて見たぞ、どう使えば……いや、最適解はあるな。必ず当たるってんなら、倒れる前にやるのが正解だ。
ていうかシュウもこの特性わかっててこのわざ構成って事なのか。

「よしわかったゴルーグ、(最早この特性の為のわざと言っても過言ではない)ばくれつパンチ!!」

「れいとうパンチはいいんですか?」

「こんらん入れてから決める!」

「なるほど了解です!うおおおおばくれつパーンチ!!!」



具体的に言うならば勝負は2ターンで終わった。タイプ相性的にちょっとした泥仕合になるかと思ったけど、ゴルーグのわざ構成と単純にレベルが高くて助かった。
むしろレベルが高過ぎてフィールドが半壊した犠牲になったけど、これはシュウのせいにしておこう。だってゴルーグはシュウのポケモンだし。

「いやぁやっぱり慣れない事はするものじゃないですねぇ。完敗ですよ」

「そりゃあどうも……」

「いいバトルでした!ありがとうございます。あ、お体はご自愛下さいね」

「あ、ああはいどうも……」

いやゴルーグ普通に喋っちゃってるよ、いいのこれ。研究所とかに通報されない?大丈夫?そしてこの人のマスキッパも大丈夫だろうか、結構ボコボコにしてしまったけど。
クロガネ病院は人の為の病院だけど一応ポケモン用の設備も完備されている、戻ったら回復してもらう様に伝えていると、看護師の……あれはキサラギさんだな、若干焦ってるのかこちらに走って来た。

「ロウさーん!ロコン!ロコンちゃんいませんかー……いたー!抱っこしてるーありがとうございますー!」

「何がありがとうございますなのかまったくわかりませんがどういたしまして。んでどうしましたキサラギさん、ロコンが何か?」

「大丈夫ですかキサラギさん、いくらでも待ちますのでまずは呼吸を整えましょう」

ようやく辿り着いたキサラギさんの背中をそっと支えるゴルーグ。こういうところは紳士的なんだけどな。

「ゴルーグさんもありがとうございます、もう大丈夫。
実は、そのロコンちゃん生後半年らしいんですが、今まで一度も屋内から出た事が無いそうなんです」

「は?」

「可愛くて外に出すのが心配って、ご自宅以外ではボールから出した事も無いんだそうです~危ないから今すぐ連れ戻せって患者さんから怒られちゃいました~」

「……えっ一応病院の敷地内なのに?」

「なるほど、患者さんの常識や物事の認識能力というのはやはり千差万別ですね!理解できますともゴルーグで」
「黙ってろ」

当のロコンはと言うと、ゴルーグとマスキッパのバトルを間近で見たせいかすっかりバトルに魅せられ、ボールに戻らないどころかわざの練習をする様になったとか何とか。そしてロコンのご主人は「連れ戻せ」と言った入院患者……ではなくその息子さんだった。なんじゃそりゃ。

「ちなみにロウさん、今は隠れ特性ではなく夢特性って言うんですよ、やだー年代バレちゃいますよ~☆」
「エンペルトとラプラスとスワンナとトドゼルガ出すからそこから動くな」
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