様子のおかしい叔父さんのゴルーグと私と朝と夜
【それはつまりゴルーグ・オブ・アヴェンジャーズ】
なんだこれは。
さっきまで普通に生活していたはずなのに、瞬きしたと同時にまるで終末を迎えたかのように寂れた世界が目の前に広がった。空にはホエルオーよりも大きい輪っかの様な物が浮いて、そこから次々とポケモンには見えない上によくわからない、生き物なのかすら定かではない何かが降ってきている。
そして何故かゴルーグがそれを黙って見上げていた。
「ロウさん、どうやらお別れの時が来てしまったようです」
いつも通りテレパシーで話し掛けてくるゴルーグ。だけどその背中は何処か寂しげで……え、今何て言った? お別れ? どういうこと??
ゆっくりと巨体が振り返り、胸元の封印の留め金に手を添える。
「実は私、ただのゴルーグではないのです。本来であれば起こってはならない世界の終末……それを防ぐべくかつての創造主、古代の民が残した対終末兵器であり最強のゴルーグ───アルティメットゴルーグなのです」
な ん だ そ れ は 。
聞いた事ないぞアルティメットゴルーグなんて。何それなん、ほんとに、なんて??? メガシンカなのかゲンシカイキなのか、あるいはリージョンフォームなのかオリジンフォルムなのか、いやマジでアルティメットゴルーグって何????? 円環の理でも創るのかお前は。
戸惑う私に見向きもせず、ゴルーグは封印の留め金を投げ捨てる様に外し、ひび割れから溢れ出て来た光に包まれてしまう。何かがおかしいがそれでもゴルーグへ手を伸ばす。が、光で何も見えないどころか目を開けていられない。
「うおおおおおアルティメット・トランスフォォォォォォォム!!!!!!!」
ようやく眩しさが消え、そこにいたのは丸々としていた胴体や腕がスラリと伸び、神秘的にも感じられた青い身体は赤を基調として、ただでさえ普通のゴルーグよりも大きかった体躯が更に巨大化した───最早ポケモンではなく日曜日の朝とかにやってる特撮に出てきそうなロボットだった。これが、これがアルティメット、いやこれマジでポケモンの概念崩壊してるよね??
何かのカンフーっぽい動きをした後、アルティメットらしいゴルーグは手足を輝かせて離陸準備を始める。飛び方がアイアンなマン的な……何処かの天才社長のパワードスーツのような感じに変わってる……
「ロウさん、短い間でしたがお世話になりました!! シュウさんには奥様とご子息、弟様と末長くお幸せにと……あの日 私を救ってくださったご恩を返しきれない事、どうかお許しくださいと……そうお伝えください……!
ゴルーグ、参りまァァァァァァす!!!!!」
普段ならひこうタイプやドラゴンタイプとそう変わらない離陸速度なのに、アルティメットなおかげか一瞬で遥か彼方に、空に浮かぶ変な輪っかへと飛んでいってしまったゴルーグ。本当に行ってしまった……これがマジで世界の終末なら、結構ヤバいというか、ヤバいで収まらないのでは。
少しくらいなら、私にもできる事があるんじゃないだろうか。ボールホルダーから記念品のように豪奢で真っ赤なボールを取り出し───いや、これじゃ私の力とは言えない。結局ポケモンの力に頼ってるじゃないか。もっと他に何かできる事は、
「いやぁ行ってしまいましたね、アルティメットゴルーグ 」
歩いているだけで発生する、最早慣れきった振動が足裏に伝わる。そしてこのテレパシー、そっと隣を見るとついさっき飛んでいった筈のシュウのゴルーグがそこにいた。
……は????? なんでいるの? アルティメットトランス何とかして飛んだじゃん。今 飛んでいったの何なの?? 呆然と見上げているとゴルーグが何かに気付いたように、ようやくこちらを見下ろしてきた。
「おお、そうでした! ロウさんにはまだお伝えしていませんでした。ゴルーグだと言うのに何たる失態、ええゴルーグだと言うのに! それは兎も角」
(この言い方もどうかと思うが)先程のゴルーグと同じ様に封印の留め金を外し始める。ひび割れだと思っていたのはただの模様だったのか、それを無視してゴルーグの胴体が真ん中から綺麗にパカッと開いた。まるでメロンパンでも入れられるかの様に。
そしてその中には───今まさに小さなゴルーグが製造されていた。な ぁ に そ れ ぇ 。口を開けたままそれを見ていれば完成したのか、その小さなゴルーグは飛び出して地面に降りた途端、ぐんぐん大きくなってシュウのゴルーグとまったく同じ見た目になった。
「実は私、ただのゴルーグではないのです。対終末兵器にして最強のゴルーグ、アルティメットゴルーグ……その一柱なのです」
ま だ い る の か 。
何体いるんだ対終末兵器なのに。なんで対終末兵器がそんな複数、終末を防ぐための兵器だから複数いても良い……いやそれでもおかしいだろ。
「そして私は通称 "創造のアルティメットゴルーグ" 。与えられた権能、端末製造によって、新たなアルティメットゴルーグを造り出したのです。先程ロウさんと言葉を交わした個体ですね。 ……しかし、これも所詮は時間稼ぎにしかなりません。私が造り出したアルティメットゴルーグではやはり、創造主が造りしアルティメットゴルーグには性能が及びませんでした。
ンですので! 世界の終末を防ぐためにも世界各地に封印された、残り6体のアルティメットゴルーグを目覚めさせなければなりません! ロウさん、どうかご助力 頂けないでしょうか!?」
アルティメットアルティメット煩いな。そして6体もいるのかよくわからないアルティメットらしいゴルーグが……!! ……ここにいるゴルーグも含めて7体なのか!! 7体集めたら合体してキングゴルーグにでも進化するのか、あるいは別のドラゴンポケモンが召喚されてしまうのだろうか。そもそも7体もいるゴルーグをどうやって連れていくんだ、専用のボールでもあるのか。掴もうぜゴルーグボール的な……
気が付くとゴルーグが造り出したらしい端末の、というか最早 無数のゴルーグの群れに囲まれていた。これがもし野生だったら、嫌だそんなこと考えたくない。ゴルーグの端末という事でさえ信じがたいのに。
「さぁアルティメットゴルーグを探す旅に参りましょう! もちろん私、そして私の端末達が全力でロウさんをサポート致します!」
「「「「「ゴルーグですので!!ゴルーグですので!!!」」」」」
四方八方から同じテレパシーでお馴染みの台詞が響き渡る。あいつもゴルーグでそいつもゴルーグでゴルーグがゴルーグにゴルーグのゴルーグもゴルーグをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「そんなゴルーグ嫌だァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!! てかなんで端末がゴビットじゃなくてゴルーグで全部同じ大きさなんだァァァァァァ嫌ァァァァァァァァァハッ!!」
私の悲鳴に驚いて飛び去った何かの羽音と、何かがベッドから落ちた音が聞こえる。寝汗のせいで全身どころかシーツもぐっしょり濡れているけど、知ってる天井だ……
どうやらベッドから落ちたのはブラッキーだったらしく、ベッドに戻ってきた途端「ヴァウ!」と一声上げて顔面をパンチされる。安眠妨害も良いところだとでも言いたいのか、いつもよりは早い時間だけどもう朝やぞ。まさかこれも夢じゃないだろうな……
「おはようございますロウさん! 何やら悲鳴が聞こえま」
「ぎゃっゴルーグ!!」
大きな手で器用に窓を開けるゴルーグ。ついさっき見た夢のせいでつい身構え、ブラッキーに抱き付く。
「Oh……顔を見せただけなのにその嫌悪感、もしや私何かロウさんをご不快にさせたのでしょうか……? ゴルーグだというのになんたる失態! ゴルーグだというのに!!」
「いや、不快っていうか……まぁ不快といえばそうなんだけど、あのさゴルーグ、何と言うか何て言うか……端末みたいなの造る機能って流石に無いよね?」
「端末、ですか?」
はてと首を傾げるゴルーグ。よかった心当たりがないみたいだ。 ……いや思い出せてないだけで実はできる、という可能性もあるわけで。もしそうなら可能性自体を潰そう、私が、私の為に。
「うーむ……ゴルーグやゴビットは指定された地区の警備や、人とポケモンの守護が古代人 からの主な命令ですので、端末を造るといった機能は無いかと……」
「よっっっっしだよね! だよね!? あぁーよかったぁー」
「ですが」
ですが?まさか似たような機能でもあるのか。端末造るのに似た機能ってなんだ、偵察機 飛ばしたりとか?
「ご存知の通り私、ゴーレムポケモンですので。増やそうと思えばその様な機能も増やせると思うんですよねぇ。機能だけではなく、腕とかも頑張れば増やせるのではないでしょうか?! ゴーレムですので、ゴーレムですので!!」
「………………増やすなぁぁぁぁぁ!!!絶っ対増やすなぁぁぁぁぁぁ嫌ァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
窓の外で、今度は何かが落ちる音が聞こえる。なんで私は朝からこんなに叫んでいるんだ……
なんだこれは。
さっきまで普通に生活していたはずなのに、瞬きしたと同時にまるで終末を迎えたかのように寂れた世界が目の前に広がった。空にはホエルオーよりも大きい輪っかの様な物が浮いて、そこから次々とポケモンには見えない上によくわからない、生き物なのかすら定かではない何かが降ってきている。
そして何故かゴルーグがそれを黙って見上げていた。
「ロウさん、どうやらお別れの時が来てしまったようです」
いつも通りテレパシーで話し掛けてくるゴルーグ。だけどその背中は何処か寂しげで……え、今何て言った? お別れ? どういうこと??
ゆっくりと巨体が振り返り、胸元の封印の留め金に手を添える。
「実は私、ただのゴルーグではないのです。本来であれば起こってはならない世界の終末……それを防ぐべくかつての創造主、古代の民が残した対終末兵器であり最強のゴルーグ───アルティメットゴルーグなのです」
な ん だ そ れ は 。
聞いた事ないぞアルティメットゴルーグなんて。何それなん、ほんとに、なんて??? メガシンカなのかゲンシカイキなのか、あるいはリージョンフォームなのかオリジンフォルムなのか、いやマジでアルティメットゴルーグって何????? 円環の理でも創るのかお前は。
戸惑う私に見向きもせず、ゴルーグは封印の留め金を投げ捨てる様に外し、ひび割れから溢れ出て来た光に包まれてしまう。何かがおかしいがそれでもゴルーグへ手を伸ばす。が、光で何も見えないどころか目を開けていられない。
「うおおおおおアルティメット・トランスフォォォォォォォム!!!!!!!」
ようやく眩しさが消え、そこにいたのは丸々としていた胴体や腕がスラリと伸び、神秘的にも感じられた青い身体は赤を基調として、ただでさえ普通のゴルーグよりも大きかった体躯が更に巨大化した───最早ポケモンではなく日曜日の朝とかにやってる特撮に出てきそうなロボットだった。これが、これがアルティメット、いやこれマジでポケモンの概念崩壊してるよね??
何かのカンフーっぽい動きをした後、アルティメットらしいゴルーグは手足を輝かせて離陸準備を始める。飛び方がアイアンなマン的な……何処かの天才社長のパワードスーツのような感じに変わってる……
「ロウさん、短い間でしたがお世話になりました!! シュウさんには奥様とご子息、弟様と末長くお幸せにと……あの日 私を救ってくださったご恩を返しきれない事、どうかお許しくださいと……そうお伝えください……!
ゴルーグ、参りまァァァァァァす!!!!!」
普段ならひこうタイプやドラゴンタイプとそう変わらない離陸速度なのに、アルティメットなおかげか一瞬で遥か彼方に、空に浮かぶ変な輪っかへと飛んでいってしまったゴルーグ。本当に行ってしまった……これがマジで世界の終末なら、結構ヤバいというか、ヤバいで収まらないのでは。
少しくらいなら、私にもできる事があるんじゃないだろうか。ボールホルダーから記念品のように豪奢で真っ赤なボールを取り出し───いや、これじゃ私の力とは言えない。結局ポケモンの力に頼ってるじゃないか。もっと他に何かできる事は、
「いやぁ行ってしまいましたね、アルティメット
歩いているだけで発生する、最早慣れきった振動が足裏に伝わる。そしてこのテレパシー、そっと隣を見るとついさっき飛んでいった筈のシュウのゴルーグがそこにいた。
……は????? なんでいるの? アルティメットトランス何とかして飛んだじゃん。今 飛んでいったの何なの?? 呆然と見上げているとゴルーグが何かに気付いたように、ようやくこちらを見下ろしてきた。
「おお、そうでした! ロウさんにはまだお伝えしていませんでした。ゴルーグだと言うのに何たる失態、ええゴルーグだと言うのに! それは兎も角」
(この言い方もどうかと思うが)先程のゴルーグと同じ様に封印の留め金を外し始める。ひび割れだと思っていたのはただの模様だったのか、それを無視してゴルーグの胴体が真ん中から綺麗にパカッと開いた。まるでメロンパンでも入れられるかの様に。
そしてその中には───今まさに小さなゴルーグが製造されていた。な ぁ に そ れ ぇ 。口を開けたままそれを見ていれば完成したのか、その小さなゴルーグは飛び出して地面に降りた途端、ぐんぐん大きくなってシュウのゴルーグとまったく同じ見た目になった。
「実は私、ただのゴルーグではないのです。対終末兵器にして最強のゴルーグ、アルティメットゴルーグ……その一柱なのです」
ま だ い る の か 。
何体いるんだ対終末兵器なのに。なんで対終末兵器がそんな複数、終末を防ぐための兵器だから複数いても良い……いやそれでもおかしいだろ。
「そして私は通称 "創造のアルティメットゴルーグ" 。与えられた権能、端末製造によって、新たなアルティメットゴルーグを造り出したのです。先程ロウさんと言葉を交わした個体ですね。 ……しかし、これも所詮は時間稼ぎにしかなりません。私が造り出したアルティメットゴルーグではやはり、創造主が造りしアルティメットゴルーグには性能が及びませんでした。
ンですので! 世界の終末を防ぐためにも世界各地に封印された、残り6体のアルティメットゴルーグを目覚めさせなければなりません! ロウさん、どうかご助力 頂けないでしょうか!?」
アルティメットアルティメット煩いな。そして6体もいるのかよくわからないアルティメットらしいゴルーグが……!! ……ここにいるゴルーグも含めて7体なのか!! 7体集めたら合体してキングゴルーグにでも進化するのか、あるいは別のドラゴンポケモンが召喚されてしまうのだろうか。そもそも7体もいるゴルーグをどうやって連れていくんだ、専用のボールでもあるのか。掴もうぜゴルーグボール的な……
気が付くとゴルーグが造り出したらしい端末の、というか最早 無数のゴルーグの群れに囲まれていた。これがもし野生だったら、嫌だそんなこと考えたくない。ゴルーグの端末という事でさえ信じがたいのに。
「さぁアルティメットゴルーグを探す旅に参りましょう! もちろん私、そして私の端末達が全力でロウさんをサポート致します!」
「「「「「ゴルーグですので!!ゴルーグですので!!!」」」」」
四方八方から同じテレパシーでお馴染みの台詞が響き渡る。あいつもゴルーグでそいつもゴルーグでゴルーグがゴルーグにゴルーグのゴルーグもゴルーグをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「そんなゴルーグ嫌だァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!! てかなんで端末がゴビットじゃなくてゴルーグで全部同じ大きさなんだァァァァァァ嫌ァァァァァァァァァハッ!!」
私の悲鳴に驚いて飛び去った何かの羽音と、何かがベッドから落ちた音が聞こえる。寝汗のせいで全身どころかシーツもぐっしょり濡れているけど、知ってる天井だ……
どうやらベッドから落ちたのはブラッキーだったらしく、ベッドに戻ってきた途端「ヴァウ!」と一声上げて顔面をパンチされる。安眠妨害も良いところだとでも言いたいのか、いつもよりは早い時間だけどもう朝やぞ。まさかこれも夢じゃないだろうな……
「おはようございますロウさん! 何やら悲鳴が聞こえま」
「ぎゃっゴルーグ!!」
大きな手で器用に窓を開けるゴルーグ。ついさっき見た夢のせいでつい身構え、ブラッキーに抱き付く。
「Oh……顔を見せただけなのにその嫌悪感、もしや私何かロウさんをご不快にさせたのでしょうか……? ゴルーグだというのになんたる失態! ゴルーグだというのに!!」
「いや、不快っていうか……まぁ不快といえばそうなんだけど、あのさゴルーグ、何と言うか何て言うか……端末みたいなの造る機能って流石に無いよね?」
「端末、ですか?」
はてと首を傾げるゴルーグ。よかった心当たりがないみたいだ。 ……いや思い出せてないだけで実はできる、という可能性もあるわけで。もしそうなら可能性自体を潰そう、私が、私の為に。
「うーむ……ゴルーグやゴビットは指定された地区の警備や、人とポケモンの守護が
「よっっっっしだよね! だよね!? あぁーよかったぁー」
「ですが」
ですが?まさか似たような機能でもあるのか。端末造るのに似た機能ってなんだ、偵察機 飛ばしたりとか?
「ご存知の通り私、ゴーレムポケモンですので。増やそうと思えばその様な機能も増やせると思うんですよねぇ。機能だけではなく、腕とかも頑張れば増やせるのではないでしょうか?! ゴーレムですので、ゴーレムですので!!」
「………………増やすなぁぁぁぁぁ!!!絶っ対増やすなぁぁぁぁぁぁ嫌ァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
窓の外で、今度は何かが落ちる音が聞こえる。なんで私は朝からこんなに叫んでいるんだ……