叔父さんのゴルーグの様子がやっぱりおかしい
【ゴルーグと友達】
前略、テレパシーで喋れる様になった叔父さんのゴルーグが家にいます。嘘じゃないもんゴルーグいるもん。今更だけど本当になんで喋んのかなあいつ。
そして随分リズミカルな地震が起きたと思ったら庭でそのゴルーグがご機嫌なスキップしてました。何してんだテメェ。
「ゴルーグぅー!!!ただでさえ平均よりでかいんだから(※)スキップすんな家壊れる!!!」
(※一般的なゴルーグはたかさ・2.8m おもさ・330.0㎏、シュウのゴルーグはたかさ・3.8m おもさ・500㎏)
「おおこれはこれは、申し訳ありませんロウさん!嬉しい事がありましたのでついはしゃいでしまいました!嬉しいとスキップしてしまうものですね、そうゴルーグだとしても!ゴルーグだとし」
「いいからやめろよ!スワンナぁーねっとう!!上空からねっとう浴びせろぉー!!」
この間の落ち込んだ時と同じ様に、いや同じではない。この間は膝を抱えていたけど今日は正座している、正しくは私が正座させた。させておいてなんだけど正座できたのかこいつ。
「で?何があったって?」
「それがですねーなんと私、友達が出来たんですよ!!」
ともだち。フレンズ。すっごーい君はパンチが得意な……違うそうじゃない。
それでスキップする程はしゃげるだろうか、今まで友達いなかったって言うなら話は別だけど。そう思ってたまたまボールから出ていたオクタンとドサイドンとアーマルド、そしていつの間にかやって来ていたそいつらのトレーナー シュウを見てみる。
なんということでしょう、オクタンとドサイドンは早々に目を逸らしました。まるで「私達チームメイトみたいなものであって友達ではありません」と言うかの様に。アーマルドは今の状況 何一つわかってない、そういう顔してる。つまりアホ面、いやぽけーっとしながらぎゃう?と首を傾げている。
シュウは……ダメだあの表情は携帯に保存してる家族の写真見てる、こっちの話聞いてないわ。
「そうかぁ……うん、まぁあの、ヨカッタネ」
「はい!今まで同士や同機はいましたが、友達はいませんでしたので初めての友達です!!」
「子供の様にはしゃぐな心の何かが痛んでくる」
「しかもまさか私の様に人語を喋るポケモンが他にもいて、その方に偶然出逢えるなんてまさに運命というものを感じます!」
「へぇ……
………………ん?もっかい言って?」
「私の様に人語を喋るポケモンが他にもいて、その方に偶然出逢えるなんてまさに運命というものを感じます!」
「コピペ乙。
いや待て「私の様に人語を喋るポケモン」って言った!?いる訳ないだろお前みたいに奇妙奇天烈極まりないポケモンが!他に!いてたまるか!!」
「いえいえ、いらしたんですよそれが」
正座したまま片手を振るゴルーグ。嘘でしょこんなのが別にいたって事?しかも話の内容的に相手は絶対に "ゴビットとゴルーグ " 以外のポケモンだ。
となると……本当は考えたくもないが、前にゴルーグが言っていた練習すれば喋れるらしい "エスパータイプ" か "ゴーストタイプ" のどちらかに出会ったんだろう。本当に、こういうポケモンが世に1匹以上いるなんて、考えたくはないけど。
「……まぁ、仮に?本当に喋るポケモンに出会ったとして、何のポケモンなの?フーディン?ムウマージ?」
「その方々、野生にいないのでは?」
「喋るポケモンが野生でいてたまるかよ、で?」
「私が出会ったのはニャースです、ニャース。カントー地方から遥々いらしたそうで」
「タイム、タイムタイム、タイムだ」
思わず影絵の要領で両手でディアルガを作る。
何て言った、ニャース?ニャースだって??ニャースってあの「ねこにこばん」が代表わざのニャース???
「ノーマルタイプじゃん??!!」
「ノーマルタイプですよぉ!!??」
「だってお前 喋んのはエスパーかゴーストって言ってたじゃん、私のシャンデラも喋るかも言ってたじゃん実際 喋っ、て……あれ?喋ってたっけ?ポフィンの味について何かしら言ってた様な……夢だったんだっけ?
違う今はそれじゃなくて!!ニャースだぞ?!ニャースが喋る訳 無いだろニャースだもん!!」
「とりあえず落ち着けロウ、発言があまりにも支離滅裂だぞ」
世界で一番孤独な家族団らんから我に返って来たらしいシュウに頭を……違った。撫でられたと思ったらその手の主はドサイドンだった。
余談だがシュウのドサイドンは私の事を "娘" だと思っているらしい。カントー地方のサファリゾーンでガルーラに迷子の子ガルーラと何故か勘違いされ群れまで連れて行かれた結果、見事に迷子になった私を乗せてシュウの元まで行ってくれたのが当時のサイホーン、今のドサイドンとなった。進化した事でサイドンよりは発達しているらしいが、やっぱり知能が心許ないドサイドンでも人間に対して母性を抱いて母親になる事もあるんだろう。わからんけど。
話が逸れてしまった。シュウの言う通り少し冷静さを欠いてしまっていた。それにしてもニャースが人語を喋るなんて信じ難いにも程がある。
「昨日 話を聞いた俺もそれは思っている。一晩考えた結果、ゴルーグが聞いた幻聴か腹話術だと思う事にした」
「あんまりじゃありませんかシュウさん!?」
ですよね。
仮にも(申し訳程度だとしても)ゴーストタイプが幻聴を聞くなんてあり得ないけど、それよりも「ニャースが人語を喋る」なんて事の方があり得ない。ゴルーグだって幻聴を聞く事ぐらいあるんだろう。わからんがそう思わないとやってられない。
諦めろゴルーグ、お前が聞いたのは幻聴だ、もしくは腹話術だ。
「ぜぇったい騙されたんだって。ニャースが喋る訳無いじゃん」
「本当です!ニャースさんは私とは違ってテレパシーではなく確かに喋っていました!私が話しかけたら「ポケモンが喋ってるニャアー!?」と、大層驚かれていましたが」
「この世で最も言われたくない "おまいう" だなそれ!?」
「話を聞いた時から思っていたが、何故お前はニャースに話しかけたんだ?トレーナーはいなかったのか」
「はい、トレーナーさんらしい方はお見掛けしませんでした。私が通りかかった時その場にいたのはニャースさんだけでした。
話しかけたのは……博物館の前でお一人でウロウロしていらしたので、何かお困りなのかと思いまして、つい」
曰く、「炭鉱博物館の前で何かを探していた」らしい。
何か落としてしまったんだろうか、小判とか。そもそもゴルーグはシュウから離れて何してんの、クロガネシティを1匹、1機?どっちでもいいか兎に角トレーナー無しで歩くなよ。なんか、何か絵面が酷い。
炭鉱博物館と聞いて、クロガネ病院に最近来たシティからのお知らせのとある文面を思い出す。何でも「不審者の目撃情報」が多数挙がっているというものだった。
「シュウが鍛えてる訳だし大丈夫だと思うけどさ、最近 博物館の近くで二人組の不審者が目撃されてるらしいから気を付けてよ。そろそろ警ら始めようかって話もクロガネジムで出てるらしいし」
「ジムが警らに当たるとなると "疑惑" ではなく "黒確定" で見ているという事か、相当らしいなその不審者は。
ん、クロガネジムが警らを、か……道理でお前最近ソワソワしてる訳か」
「なるほど、ジムの手伝いの一環でロウさんも警らも行くとなったら二人きりになれますからね。わかりますとも、ゴルーグですので」
「くぁwせdrftgyふじこlpいやいやいやソワソワとかしてないし全っ然期待してないしていうか意識してないしまったく気にならないし二人きりなんてハードル高過ぎて何話せばいいかわかんないからできれば遠慮したいけど二人きりを遠慮したくないしそもそも一緒に行くってなったらまず怪我とかさせられないしかと言って暴れ回ってるところ見られてそれが原因で嫌われたら死ぬほど死ぬし絶対集中できないし今関係ないし 何 言 わ せ ん だ ! ! ! ! ! 」
思わず腹の底から声が出てしまう。庭を歩いていたブラッキーが池に落ちた音が聞こえた。
「おお、今日一のクソデカボイス だな……庭で叫ぶんじゃない」
「しかもノンブレスですね」
「チクショウくたばれ!!ラプラス、ハイドロポンプ!!」
「おい待ていくらこの庭でもハイドロポンプはやめろ、その前に俺も射程に入って」
この後、病院から帰って来た養母さん に私もシュウもしこたま怒られた。
【友達の真実と結末】
「何もない事が一番だけど、女の子を危ない目に遭わせる訳には行かないよ」
その一言で私は警らの手伝いはしなくていい事になった。私の事を案じてくれるの優しい、好き、めっちゃ好き。でも私は5つの地方を旅して5回殿堂入りした女ですよとは言えなかった。言いたかったけど、流石にジムリーダー相手には言えなかった。
それでも私を気遣ってくれたのは事実な訳で、だからこそ この不審者───もとい「ロケット団」による炭鉱博物館襲撃と展示物の強奪という事態の、よりにもよって現場に直面したく無かった。
「ああっ!展示していた化石が!!」
「お前達何者だ!?」
「お前達何者だ!?と聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
「初めて聞いた筈なのに親の声より聞いた気がするラブリーチラーミィな口上だ……いや私に親いないんだけど」
「そこぉ!俺達の台詞を遮った上に奪うんじゃない!しかもラブリーチャーミーだからな!? ……強く生きろよジャリガールぅ!!」
「台詞奪ったのと間違えたのに怒るくらいならその後の独り言にはフォローせず聞き流してほしかったんだけど……」
本来はカントー・ジョウトを跨いで好き勝手してた悪名 名高い組織、ロケット団。そんな所謂 悪の組織も2度、一般のトレーナー(しかも子供)の活躍によって壊滅させられた。そしてジョウト地方にいたその残党を実質2回目の壊滅へ追い込んだのは私なんだけど、まさかシンオウに更なる残党がいたなんて予想外にも程がある。いや、悪の組織、にしてはなーんかイマイチそれっぽくないけど……
「博物館の化石やら何やらぜーんぶアタシ達が頂いていくわよ!」
「盗るもん盗ったら撤収撤収!行くぞニャース!」
「ほいニャ!」
ニャースの掛け声でその顔を模した気球が「ナーッハッハッハーィ」みたいな笑い声と共に上昇していく。ちょっと腹立つな。
……ていうかあのニャース今喋った?まさかゴルーグが出会ったニャースって……!?
「っ、それは後で考えるか。とりあえずジムリーダーを呼んで待ってる暇無いというかバトルしてるところは死んでも見られたくない、つまり私とたまたま一緒にいたゴルーグで何とかしよう!
ほんとなんで当たり前の様に一緒にいるんだろうな!!」
「大丈夫かいロウちゃん……大事な展示物を、化石を取り戻せるのかい!?君が強いのは知っているけれど今、定職に就いてないんじゃ……」
「逃げる相手の追撃なんて得意中の得意なんでノー問題ッスね!あと無職でもニートでもバトルはできますから!!
私ニートじゃないけど!大事な事なのでもう一度言います私はニートじゃない!!」
行くぞゴルーグ、そう言いながら振り向くと───いない。ゴルーグがどこにもいない。
思ってもみない光景にモンスターボールを取り落しそうになる。が、次の瞬間 上空から聞こえて来た悲鳴に顔を上げた。
そこには自らの巨体を生かしてニャース型の気球にしがみ付くゴルーグの姿が。元から鉄人……いやロボットみたいな飛び方だとは思ってたけど、気球の籠をあえて足で掴んで、腕のジェットを逆噴射して確実に高度を下げている。すげぇな案外器用だなあいつ。
「ニャアァァァァァ落ちる、落ちるニャア~!!」
「ちょっと何とかしなさいよニャース!!」
「いやもうこれ間に合わないって~!?」
あーあ、綺麗に落ちて来たぁ……
呆れたのも束の間、撃墜され慣れているのかすぐに態勢を立て直す2人と1匹。あ、ソーナンスもいたのか……どっから出て来た?
色々と気になる点はあるが、そんな事を気にしている暇は無くゴルーグが隣に着地してくる。
「何故です、何故なのですかっニャースさん!!」
震える拳を握り締め叫ぶゴルーグ。表情こそ変わらないけど声音(テレパシーなので声音と言っていいのか正直わからない)には明らかに怒りと悲しみが混じっている。お前ゴーレムポケモンなのにちょいちょい人間臭いな。
「私に言ってくれたではありませんか!「いつの日か進化系であるペルシアンを超えるビックなポケモンになり、恋した相手と心安らぐ生活を送りたい」と!あれは嘘だったのですか、何故……何故ロケット団などと言う悪の組織に……!!」
「ゴルーグ……ニャーは、ニャー達は似ている様で違ったのニャ。
おミャーはあと少しで息絶えるところを拾われて今のトレーナーという居場所を、ニャーは辛いあの日々や苦労から逃げる為の居場所が今のロケット団なのニャ。正義か悪か、ただそれだけ違いニャ」
「正義と、悪……そんなもので私達の友情は憚られるというのですかっ……!!」
待って何これ。何が始まった?
「ちょっ、ちょっとアンタ、あのロボットみたいなポケモンって喋るもんなの?」
「そぉなんすぅ……?」
自分達のポケモンが何か語り出したのが予想外だったのかコソコソとこちらに移動して、長い赤髪のお姉さんに肩を突かれる。この人よく見ると美人だわ、それどころじゃないけど。
トレーナーの真似をしているのかソーナンスも傍に来て手を口元に添えながら首を傾げている。ちょっと可愛い。
「ゴルーグは普通は喋んないよ、あのゴルーグはトレーナーが変な事 したから、テレパシーでだけど喋れる様になったんだよ。
つか、お姉さん達のニャースの方がビックリなんだけど!なんで喋ってんのあのニャース、エスパーとかゴースト……百歩譲ってドラゴンタイプならわかるけどニャースって。ノーマルじゃんめっちゃノーマルタイプじゃん!そのニャースが喋るとか普通 思わないじゃん?!喋ってるのになんで普通に受け入れてんだよあんたらも!察しが良いのと適応力に定評のある私が言うのもなんだけどポケモンが普通喋るかよ、目の前にいるゴルーグもニャースも滅茶苦茶喋ってるけど!!なんだこれ!今更だけどなんなんだこれ!!
シュウは自分が原因のくせに「公言するなよ」とか言うしその割に当のゴルーグは普通に人前で喋るし!!出会う人 全員にいちいちはぐらかして説明する私の気にもなってみろよ頭おかしなるわぁ!!」
「お、落ち着けよ。なんか随分ストレス溜まってるみたいだけど大丈夫か……?」
つい頭を抱えてしまった私の背中を摩る青髪のお兄さん。この人近くで見るとイケメンだったわ、今それどころじゃないんだけど。
「私達は……真の友にはなれない。そういう事でしょうか……?」
「それは違うニャ!ニャー達は確かに相容れぬ者同士、これからの道は決して交わる事は無いポケモン!それでも、それでもニャーがあの日おミャーに語った夢は嘘じゃニャい!おミャーになら話してもいいと、人の言葉を喋るニャーを「素晴らしい」と言ってくれた、おミャーだからそう思えたから言ったのニャ!」
「ニャースさん……!ええそうですとも、ただ1つの恋の為にポケモンとしての在り方を封じてそこまで至り、トレーナーとポケモンという関係を超越した "仲間" を得た貴方は素晴らしい!だからこそ私は貴方を尊敬し友になりたいと思ったのです!!」
「ほんっと何これ。もしかして良い話 的なやつ?」
「ニャースの奴、俺達の知らないところでそんな事してたんだなぁ……ぐすっ」
「お兄さんなんで涙ぐんでんの!?この状況でそんなに良い話に聞こえるかなぁこれ!!」
「ちょっとしっかりしなさいよコジロウ!
ニャース!イケるのね!?ならさっさとジャリガール共をぶっ飛ばして化石を頂くわよ!」
「任せるニャ ムサシ!」
なるほどお姉さんはムサシでお兄さんはコジロウっていうのか、どっかで聞いた組み合わせだ。
泣いているコジロウさんを引き摺ってさっきまでいた、ニャースの隣に並ぶムサシさん。つまりはバトル再開って事でいいのか?
イマイチついて行きにくい話の流れに呆然としてしまう。が、隣のゴルーグからの金属がぶつかり合う───握り締めた両の拳をぶつけ合わせた音で我に返る。うるっさ、ドータクンの鳴き声よりうるさい。耳やられるかと思った。
「望むところです!!このゴルーグ、友として、正義 として、全力で迎え撃ちましょう!!
という訳でロウさん、ピカチュウさんをお願いします」
「は?なにゆえ??」
「『悪党はピカチュウの10まんボルトで退治する』のが定説であり王道なのです。ゴルーグなので知っていますとも、ええゴルーグなので!どうかお願い致します!」
ええーなにそれ初めて聞いた……初めて聞いた筈なのに何故か納得してしまう、そして見た事も無い筈なのにその光景ほぼ毎日見ていた様な気がするぞ。悔しい何故だ。
とりあえずピカチュウを出、あっしまったニャース早いわもうこっち来てる!まずい "シャドークロー" とか "イカサマ" 使われたらちょっとヤバいぞ、ゴルーグの特性ノーガードだし。
「くらうニャ ゴルーグ!!これが、ニャーの全力だニャアー!!!!!」
「っばくれつパンチで相殺しろ!」
「───ゴルーグ、参りますっ!!うおおおおおお!!!!!」
ニャースの鋭い爪とゴルーグの拳がぶつかり合うその瞬間、私は確かに見た。リーチの長さからして先に当たる筈の爪は拳に "触れずにすり抜けた" 。
忘れがちだけどゴルーグは「じめん・ゴースト」の複合タイプ。そしてタイプ相性として「ゴーストタイプのわざはノーマルタイプのポケモンには当たらない」。この相性は「ノーマルタイプのわざはゴーストタイプのポケモンには当たらない」という逆説もちゃんと成立する。それを踏まえてニャースの爪が "ゴルーグに当たらず すり抜けた" って事は、つまりあれはまさか、ノーマルタイプのわざ……
ばくれつパンチがヒットした瞬間のニャースの顔、私とりあえず今年いっぱいは忘れないと思う。
「うんまぁ最低限のタイプ相性って大事なんだなって改めて思うよね。わざ構成の関係もあったと思うけど仕方ないね。
色々言いたい事あるけど考えたくないからもういいや!ピカチュウ、10まんボルト!!」
吹っ飛んできたニャースに巻き込まれたロケット団を狙って10まんボルトを盛大にぶちかます。ソーナンスがわざを出そうとしたのか、一瞬構えたけどこちらの素早さが勝って何とか間に合ったらしい。
「みだれひっかき はゴーストタイプには通用しない事を忘れていたニャ……」
「っていうかあのゴルーグとか言うポケモン、どこら辺がゴーストタイプだって言うのよ!?こんなの反則じゃなーい!!」
「……こうして離れ離れになったとしても、ニャーとゴルーグの絆は確かにそこにあったのニャ……!」
「うるっさいわよ!!負けてるし化石は盗れないし!!」
「ジャリボーイ達が相手じゃなくても、俺達って結局こうなるんだなぁ……」
「「「やな感じぃー!!!」」」
「ソォォォォォォナンスゥー!!!」
青空に輝く1つの光。ロケット団は星と化していったのだ、とか言ってみたり。
「最近の小悪党って吹っ飛ばされてても喋るのな。すげーな」
「ぴぃかちゅ……ピカ?」
「ぐっ、うぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉ……!!私は……うぐっ私は、せっかく得た友を、私の手で……オ˝ ォ˝ ン˝ !!!」
「ビカ!?」
「うっお何これどっから何が出てんの関節からだわ!!出てんの何これ瘴気?瘴気かこれ!?涙の代わりに瘴気なんて意外とゴーストタイプっぽ……瘴気じゃねぇわ蒸気だこれ!!?熱っ落ち着けアッツぅ」
その後、化石や他の展示物を無事に取り返した事に感謝されつつも、実は(主にゴルーグのわざの影響で)破損していた博物館の窓とかについての責任問題を問われる事になった。なんでや感謝しろや。
「一番酷いのは壁なんだけど、あの穴どうしようか……」
「あれはロケット団が開けたやつですし、あいつらがあそこ破壊して入って来たんですし、私ら関係ないオブ関係ないですし」
「私にお任せください!直すのも得意ですよ、ゴルーグですので!」
「待て待て待て落ちた瓦礫を粘土感覚でくっつけようとするなくっつかないから、やめろって軽く叩くのもやめ、ほらもー穴広がったぁー!!」
前略、テレパシーで喋れる様になった叔父さんのゴルーグが家にいます。嘘じゃないもんゴルーグいるもん。今更だけど本当になんで喋んのかなあいつ。
そして随分リズミカルな地震が起きたと思ったら庭でそのゴルーグがご機嫌なスキップしてました。何してんだテメェ。
「ゴルーグぅー!!!ただでさえ平均よりでかいんだから(※)スキップすんな家壊れる!!!」
(※一般的なゴルーグはたかさ・2.8m おもさ・330.0㎏、シュウのゴルーグはたかさ・3.8m おもさ・500㎏)
「おおこれはこれは、申し訳ありませんロウさん!嬉しい事がありましたのでついはしゃいでしまいました!嬉しいとスキップしてしまうものですね、そうゴルーグだとしても!ゴルーグだとし」
「いいからやめろよ!スワンナぁーねっとう!!上空からねっとう浴びせろぉー!!」
この間の落ち込んだ時と同じ様に、いや同じではない。この間は膝を抱えていたけど今日は正座している、正しくは私が正座させた。させておいてなんだけど正座できたのかこいつ。
「で?何があったって?」
「それがですねーなんと私、友達が出来たんですよ!!」
ともだち。フレンズ。すっごーい君はパンチが得意な……違うそうじゃない。
それでスキップする程はしゃげるだろうか、今まで友達いなかったって言うなら話は別だけど。そう思ってたまたまボールから出ていたオクタンとドサイドンとアーマルド、そしていつの間にかやって来ていたそいつらのトレーナー シュウを見てみる。
なんということでしょう、オクタンとドサイドンは早々に目を逸らしました。まるで「私達チームメイトみたいなものであって友達ではありません」と言うかの様に。アーマルドは今の状況 何一つわかってない、そういう顔してる。つまりアホ面、いやぽけーっとしながらぎゃう?と首を傾げている。
シュウは……ダメだあの表情は携帯に保存してる家族の写真見てる、こっちの話聞いてないわ。
「そうかぁ……うん、まぁあの、ヨカッタネ」
「はい!今まで同士や同機はいましたが、友達はいませんでしたので初めての友達です!!」
「子供の様にはしゃぐな心の何かが痛んでくる」
「しかもまさか私の様に人語を喋るポケモンが他にもいて、その方に偶然出逢えるなんてまさに運命というものを感じます!」
「へぇ……
………………ん?もっかい言って?」
「私の様に人語を喋るポケモンが他にもいて、その方に偶然出逢えるなんてまさに運命というものを感じます!」
「コピペ乙。
いや待て「私の様に人語を喋るポケモン」って言った!?いる訳ないだろお前みたいに奇妙奇天烈極まりないポケモンが!他に!いてたまるか!!」
「いえいえ、いらしたんですよそれが」
正座したまま片手を振るゴルーグ。嘘でしょこんなのが別にいたって事?しかも話の内容的に相手は絶対に "
となると……本当は考えたくもないが、前にゴルーグが言っていた練習すれば喋れるらしい "エスパータイプ" か "ゴーストタイプ" のどちらかに出会ったんだろう。本当に、こういうポケモンが世に1匹以上いるなんて、考えたくはないけど。
「……まぁ、仮に?本当に喋るポケモンに出会ったとして、何のポケモンなの?フーディン?ムウマージ?」
「その方々、野生にいないのでは?」
「喋るポケモンが野生でいてたまるかよ、で?」
「私が出会ったのはニャースです、ニャース。カントー地方から遥々いらしたそうで」
「タイム、タイムタイム、タイムだ」
思わず影絵の要領で両手でディアルガを作る。
何て言った、ニャース?ニャースだって??ニャースってあの「ねこにこばん」が代表わざのニャース???
「ノーマルタイプじゃん??!!」
「ノーマルタイプですよぉ!!??」
「だってお前 喋んのはエスパーかゴーストって言ってたじゃん、私のシャンデラも喋るかも言ってたじゃん実際 喋っ、て……あれ?喋ってたっけ?ポフィンの味について何かしら言ってた様な……夢だったんだっけ?
違う今はそれじゃなくて!!ニャースだぞ?!ニャースが喋る訳 無いだろニャースだもん!!」
「とりあえず落ち着けロウ、発言があまりにも支離滅裂だぞ」
世界で一番孤独な家族団らんから我に返って来たらしいシュウに頭を……違った。撫でられたと思ったらその手の主はドサイドンだった。
余談だがシュウのドサイドンは私の事を "娘" だと思っているらしい。カントー地方のサファリゾーンでガルーラに迷子の子ガルーラと何故か勘違いされ群れまで連れて行かれた結果、見事に迷子になった私を乗せてシュウの元まで行ってくれたのが当時のサイホーン、今のドサイドンとなった。進化した事でサイドンよりは発達しているらしいが、やっぱり知能が心許ないドサイドンでも人間に対して母性を抱いて母親になる事もあるんだろう。わからんけど。
話が逸れてしまった。シュウの言う通り少し冷静さを欠いてしまっていた。それにしてもニャースが人語を喋るなんて信じ難いにも程がある。
「昨日 話を聞いた俺もそれは思っている。一晩考えた結果、ゴルーグが聞いた幻聴か腹話術だと思う事にした」
「あんまりじゃありませんかシュウさん!?」
ですよね。
仮にも(申し訳程度だとしても)ゴーストタイプが幻聴を聞くなんてあり得ないけど、それよりも「ニャースが人語を喋る」なんて事の方があり得ない。ゴルーグだって幻聴を聞く事ぐらいあるんだろう。わからんがそう思わないとやってられない。
諦めろゴルーグ、お前が聞いたのは幻聴だ、もしくは腹話術だ。
「ぜぇったい騙されたんだって。ニャースが喋る訳無いじゃん」
「本当です!ニャースさんは私とは違ってテレパシーではなく確かに喋っていました!私が話しかけたら「ポケモンが喋ってるニャアー!?」と、大層驚かれていましたが」
「この世で最も言われたくない "おまいう" だなそれ!?」
「話を聞いた時から思っていたが、何故お前はニャースに話しかけたんだ?トレーナーはいなかったのか」
「はい、トレーナーさんらしい方はお見掛けしませんでした。私が通りかかった時その場にいたのはニャースさんだけでした。
話しかけたのは……博物館の前でお一人でウロウロしていらしたので、何かお困りなのかと思いまして、つい」
曰く、「炭鉱博物館の前で何かを探していた」らしい。
何か落としてしまったんだろうか、小判とか。そもそもゴルーグはシュウから離れて何してんの、クロガネシティを1匹、1機?どっちでもいいか兎に角トレーナー無しで歩くなよ。なんか、何か絵面が酷い。
炭鉱博物館と聞いて、クロガネ病院に最近来たシティからのお知らせのとある文面を思い出す。何でも「不審者の目撃情報」が多数挙がっているというものだった。
「シュウが鍛えてる訳だし大丈夫だと思うけどさ、最近 博物館の近くで二人組の不審者が目撃されてるらしいから気を付けてよ。そろそろ警ら始めようかって話もクロガネジムで出てるらしいし」
「ジムが警らに当たるとなると "疑惑" ではなく "黒確定" で見ているという事か、相当らしいなその不審者は。
ん、クロガネジムが警らを、か……道理でお前最近ソワソワしてる訳か」
「なるほど、ジムの手伝いの一環でロウさんも警らも行くとなったら二人きりになれますからね。わかりますとも、ゴルーグですので」
「くぁwせdrftgyふじこlpいやいやいやソワソワとかしてないし全っ然期待してないしていうか意識してないしまったく気にならないし二人きりなんてハードル高過ぎて何話せばいいかわかんないからできれば遠慮したいけど二人きりを遠慮したくないしそもそも一緒に行くってなったらまず怪我とかさせられないしかと言って暴れ回ってるところ見られてそれが原因で嫌われたら死ぬほど死ぬし絶対集中できないし今関係ないし 何 言 わ せ ん だ ! ! ! ! ! 」
思わず腹の底から声が出てしまう。庭を歩いていたブラッキーが池に落ちた音が聞こえた。
「おお、今日一の
「しかもノンブレスですね」
「チクショウくたばれ!!ラプラス、ハイドロポンプ!!」
「おい待ていくらこの庭でもハイドロポンプはやめろ、その前に俺も射程に入って」
この後、病院から帰って来た
【友達の真実と結末】
「何もない事が一番だけど、女の子を危ない目に遭わせる訳には行かないよ」
その一言で私は警らの手伝いはしなくていい事になった。私の事を案じてくれるの優しい、好き、めっちゃ好き。でも私は5つの地方を旅して5回殿堂入りした女ですよとは言えなかった。言いたかったけど、流石にジムリーダー相手には言えなかった。
それでも私を気遣ってくれたのは事実な訳で、だからこそ この不審者───もとい「ロケット団」による炭鉱博物館襲撃と展示物の強奪という事態の、よりにもよって現場に直面したく無かった。
「ああっ!展示していた化石が!!」
「お前達何者だ!?」
「お前達何者だ!?と聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
「初めて聞いた筈なのに親の声より聞いた気がするラブリーチラーミィな口上だ……いや私に親いないんだけど」
「そこぉ!俺達の台詞を遮った上に奪うんじゃない!しかもラブリーチャーミーだからな!? ……強く生きろよジャリガールぅ!!」
「台詞奪ったのと間違えたのに怒るくらいならその後の独り言にはフォローせず聞き流してほしかったんだけど……」
本来はカントー・ジョウトを跨いで好き勝手してた悪名 名高い組織、ロケット団。そんな所謂 悪の組織も2度、一般のトレーナー(しかも子供)の活躍によって壊滅させられた。そしてジョウト地方にいたその残党を実質2回目の壊滅へ追い込んだのは私なんだけど、まさかシンオウに更なる残党がいたなんて予想外にも程がある。いや、悪の組織、にしてはなーんかイマイチそれっぽくないけど……
「博物館の化石やら何やらぜーんぶアタシ達が頂いていくわよ!」
「盗るもん盗ったら撤収撤収!行くぞニャース!」
「ほいニャ!」
ニャースの掛け声でその顔を模した気球が「ナーッハッハッハーィ」みたいな笑い声と共に上昇していく。ちょっと腹立つな。
……ていうかあのニャース今喋った?まさかゴルーグが出会ったニャースって……!?
「っ、それは後で考えるか。とりあえずジムリーダーを呼んで待ってる暇無いというかバトルしてるところは死んでも見られたくない、つまり私とたまたま一緒にいたゴルーグで何とかしよう!
ほんとなんで当たり前の様に一緒にいるんだろうな!!」
「大丈夫かいロウちゃん……大事な展示物を、化石を取り戻せるのかい!?君が強いのは知っているけれど今、定職に就いてないんじゃ……」
「逃げる相手の追撃なんて得意中の得意なんでノー問題ッスね!あと無職でもニートでもバトルはできますから!!
私ニートじゃないけど!大事な事なのでもう一度言います私はニートじゃない!!」
行くぞゴルーグ、そう言いながら振り向くと───いない。ゴルーグがどこにもいない。
思ってもみない光景にモンスターボールを取り落しそうになる。が、次の瞬間 上空から聞こえて来た悲鳴に顔を上げた。
そこには自らの巨体を生かしてニャース型の気球にしがみ付くゴルーグの姿が。元から鉄人……いやロボットみたいな飛び方だとは思ってたけど、気球の籠をあえて足で掴んで、腕のジェットを逆噴射して確実に高度を下げている。すげぇな案外器用だなあいつ。
「ニャアァァァァァ落ちる、落ちるニャア~!!」
「ちょっと何とかしなさいよニャース!!」
「いやもうこれ間に合わないって~!?」
あーあ、綺麗に落ちて来たぁ……
呆れたのも束の間、撃墜され慣れているのかすぐに態勢を立て直す2人と1匹。あ、ソーナンスもいたのか……どっから出て来た?
色々と気になる点はあるが、そんな事を気にしている暇は無くゴルーグが隣に着地してくる。
「何故です、何故なのですかっニャースさん!!」
震える拳を握り締め叫ぶゴルーグ。表情こそ変わらないけど声音(テレパシーなので声音と言っていいのか正直わからない)には明らかに怒りと悲しみが混じっている。お前ゴーレムポケモンなのにちょいちょい人間臭いな。
「私に言ってくれたではありませんか!「いつの日か進化系であるペルシアンを超えるビックなポケモンになり、恋した相手と心安らぐ生活を送りたい」と!あれは嘘だったのですか、何故……何故ロケット団などと言う悪の組織に……!!」
「ゴルーグ……ニャーは、ニャー達は似ている様で違ったのニャ。
おミャーはあと少しで息絶えるところを拾われて今のトレーナーという居場所を、ニャーは辛いあの日々や苦労から逃げる為の居場所が今のロケット団なのニャ。正義か悪か、ただそれだけ違いニャ」
「正義と、悪……そんなもので私達の友情は憚られるというのですかっ……!!」
待って何これ。何が始まった?
「ちょっ、ちょっとアンタ、あのロボットみたいなポケモンって喋るもんなの?」
「そぉなんすぅ……?」
自分達のポケモンが何か語り出したのが予想外だったのかコソコソとこちらに移動して、長い赤髪のお姉さんに肩を突かれる。この人よく見ると美人だわ、それどころじゃないけど。
トレーナーの真似をしているのかソーナンスも傍に来て手を口元に添えながら首を傾げている。ちょっと可愛い。
「ゴルーグは普通は喋んないよ、あのゴルーグはトレーナーが
つか、お姉さん達のニャースの方がビックリなんだけど!なんで喋ってんのあのニャース、エスパーとかゴースト……百歩譲ってドラゴンタイプならわかるけどニャースって。ノーマルじゃんめっちゃノーマルタイプじゃん!そのニャースが喋るとか普通 思わないじゃん?!喋ってるのになんで普通に受け入れてんだよあんたらも!察しが良いのと適応力に定評のある私が言うのもなんだけどポケモンが普通喋るかよ、目の前にいるゴルーグもニャースも滅茶苦茶喋ってるけど!!なんだこれ!今更だけどなんなんだこれ!!
シュウは自分が原因のくせに「公言するなよ」とか言うしその割に当のゴルーグは普通に人前で喋るし!!出会う人 全員にいちいちはぐらかして説明する私の気にもなってみろよ頭おかしなるわぁ!!」
「お、落ち着けよ。なんか随分ストレス溜まってるみたいだけど大丈夫か……?」
つい頭を抱えてしまった私の背中を摩る青髪のお兄さん。この人近くで見るとイケメンだったわ、今それどころじゃないんだけど。
「私達は……真の友にはなれない。そういう事でしょうか……?」
「それは違うニャ!ニャー達は確かに相容れぬ者同士、これからの道は決して交わる事は無いポケモン!それでも、それでもニャーがあの日おミャーに語った夢は嘘じゃニャい!おミャーになら話してもいいと、人の言葉を喋るニャーを「素晴らしい」と言ってくれた、おミャーだからそう思えたから言ったのニャ!」
「ニャースさん……!ええそうですとも、ただ1つの恋の為にポケモンとしての在り方を封じてそこまで至り、トレーナーとポケモンという関係を超越した "仲間" を得た貴方は素晴らしい!だからこそ私は貴方を尊敬し友になりたいと思ったのです!!」
「ほんっと何これ。もしかして良い話 的なやつ?」
「ニャースの奴、俺達の知らないところでそんな事してたんだなぁ……ぐすっ」
「お兄さんなんで涙ぐんでんの!?この状況でそんなに良い話に聞こえるかなぁこれ!!」
「ちょっとしっかりしなさいよコジロウ!
ニャース!イケるのね!?ならさっさとジャリガール共をぶっ飛ばして化石を頂くわよ!」
「任せるニャ ムサシ!」
なるほどお姉さんはムサシでお兄さんはコジロウっていうのか、どっかで聞いた組み合わせだ。
泣いているコジロウさんを引き摺ってさっきまでいた、ニャースの隣に並ぶムサシさん。つまりはバトル再開って事でいいのか?
イマイチついて行きにくい話の流れに呆然としてしまう。が、隣のゴルーグからの金属がぶつかり合う───握り締めた両の拳をぶつけ合わせた音で我に返る。うるっさ、ドータクンの鳴き声よりうるさい。耳やられるかと思った。
「望むところです!!このゴルーグ、友として、
という訳でロウさん、ピカチュウさんをお願いします」
「は?なにゆえ??」
「『悪党はピカチュウの10まんボルトで退治する』のが定説であり王道なのです。ゴルーグなので知っていますとも、ええゴルーグなので!どうかお願い致します!」
ええーなにそれ初めて聞いた……初めて聞いた筈なのに何故か納得してしまう、そして見た事も無い筈なのにその光景ほぼ毎日見ていた様な気がするぞ。悔しい何故だ。
とりあえずピカチュウを出、あっしまったニャース早いわもうこっち来てる!まずい "シャドークロー" とか "イカサマ" 使われたらちょっとヤバいぞ、ゴルーグの特性ノーガードだし。
「くらうニャ ゴルーグ!!これが、ニャーの全力だニャアー!!!!!」
「っばくれつパンチで相殺しろ!」
「───ゴルーグ、参りますっ!!うおおおおおお!!!!!」
ニャースの鋭い爪とゴルーグの拳がぶつかり合うその瞬間、私は確かに見た。リーチの長さからして先に当たる筈の爪は拳に "触れずにすり抜けた" 。
忘れがちだけどゴルーグは「じめん・ゴースト」の複合タイプ。そしてタイプ相性として「ゴーストタイプのわざはノーマルタイプのポケモンには当たらない」。この相性は「ノーマルタイプのわざはゴーストタイプのポケモンには当たらない」という逆説もちゃんと成立する。それを踏まえてニャースの爪が "ゴルーグに当たらず すり抜けた" って事は、つまりあれはまさか、ノーマルタイプのわざ……
ばくれつパンチがヒットした瞬間のニャースの顔、私とりあえず今年いっぱいは忘れないと思う。
「うんまぁ最低限のタイプ相性って大事なんだなって改めて思うよね。わざ構成の関係もあったと思うけど仕方ないね。
色々言いたい事あるけど考えたくないからもういいや!ピカチュウ、10まんボルト!!」
吹っ飛んできたニャースに巻き込まれたロケット団を狙って10まんボルトを盛大にぶちかます。ソーナンスがわざを出そうとしたのか、一瞬構えたけどこちらの素早さが勝って何とか間に合ったらしい。
「
「っていうかあのゴルーグとか言うポケモン、どこら辺がゴーストタイプだって言うのよ!?こんなの反則じゃなーい!!」
「……こうして離れ離れになったとしても、ニャーとゴルーグの絆は確かにそこにあったのニャ……!」
「うるっさいわよ!!負けてるし化石は盗れないし!!」
「ジャリボーイ達が相手じゃなくても、俺達って結局こうなるんだなぁ……」
「「「やな感じぃー!!!」」」
「ソォォォォォォナンスゥー!!!」
青空に輝く1つの光。ロケット団は星と化していったのだ、とか言ってみたり。
「最近の小悪党って吹っ飛ばされてても喋るのな。すげーな」
「ぴぃかちゅ……ピカ?」
「ぐっ、うぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉ……!!私は……うぐっ私は、せっかく得た友を、私の手で……オ˝ ォ˝ ン˝ !!!」
「ビカ!?」
「うっお何これどっから何が出てんの関節からだわ!!出てんの何これ瘴気?瘴気かこれ!?涙の代わりに瘴気なんて意外とゴーストタイプっぽ……瘴気じゃねぇわ蒸気だこれ!!?熱っ落ち着けアッツぅ」
その後、化石や他の展示物を無事に取り返した事に感謝されつつも、実は(主にゴルーグのわざの影響で)破損していた博物館の窓とかについての責任問題を問われる事になった。なんでや感謝しろや。
「一番酷いのは壁なんだけど、あの穴どうしようか……」
「あれはロケット団が開けたやつですし、あいつらがあそこ破壊して入って来たんですし、私ら関係ないオブ関係ないですし」
「私にお任せください!直すのも得意ですよ、ゴルーグですので!」
「待て待て待て落ちた瓦礫を粘土感覚でくっつけようとするなくっつかないから、やめろって軽く叩くのもやめ、ほらもー穴広がったぁー!!」