帰る場所


うさぎと私は保育園の時からの親友。
小学校、中学と共に歩んで来た。
お互いに何でも話す。隠し事はない。

けれど、中二のある時からうさぎには私に内緒にしている事があると感じてる。
私とは違う何かがある。
それが何かは分からない。
知りたい。教えて欲しい。
でも怖い。知りたくない。教えて欲しくない。
知ってしまうと後戻り出来なくなる。
そんな気がするの。
それに、うさぎ本人が言いたくない。言えないと思っているなら、私はそれを尊重したい。

うさぎの事が心配で、高校も同じ十番高校に進学を決めた。
高校に入ってからうさぎの元気が無い。
私の入り込めない事で悩んでいる事は明らかで。
そこに恋人の衛さんの体調が悪いって言っていた。

衛さんの体調が回復して暫くして、留学する事が決まったと落ち込んでいた。
夢が叶うのは嬉しいけれど、離れるのが嫌だと言っていた。
アメリカに行ってからも、うさぎはずっと落ち込んでいて元気が無い。

人気アイドル、スリーライツが転校して来てもあまり興味は無さそう。
最近はその前に転校して来た天才レーサーの天王はるかやバイオリニストの海王みちると仲が良さそう。
亜美ちゃん、なるちゃん、美奈子ちゃんとも相変わらず仲良しで、私の入る隙間が無い。少し、寂しい。
小さい時からそうだったけど、うさぎの周りには友達が常にいた。色んな人と友達で、友達作りの天才だと思う。
どこか安心する雰囲気をまとっていて、うさぎから出るオーラは心地がいい。
きっとみんなもそんなうさぎに惹かれて引き寄せられているんだと思う。
スリーライツとも難なく友達になって打ち解けてる。本当に不思議な子。

けれど、そんなうさぎから友達が消えていった。
亜美ちゃんとまこちゃんの姿が見えない。
美奈子ちゃんも学校に来ていないみたい。
先輩のはるかさんやみちるさんも見かけくなった。
ひょっとしたらうさぎも来なくなるんじゃないかって胸騒ぎがする。

「うさぎ、まぁたテストの点数悪かったのね!」

勿論、そんな事で今更落ち込まないってちゃんと分かってる。
これは私なりの気遣いだ。
明るく、この場にあった話題でうさぎに話しかける。

「アハハハハ。実はそうなんだ」
「全く!中学と違って、留年があるんだから、ちゃんと勉強しなさいよ」

勉強出来る心の余裕なんて無いって分かっているけれど、こう言うしか無かった。
衛さんの留学に、美奈子ちゃん達の長期欠席。寂しがり屋のうさぎには耐えられないよね。

「うっ面目ない」

笑ってはいるけど、張りがない。空元気のうさぎを見ていて、こちらも心が締め付けられそうだよ。

「頑張って!うさぎはやれば出来る子って信じてるから」
「ありがとう、なるちゃん」
「いつでも、私はここで待ってるから頼ってね」
「なるちゃん……うん!」

何が、なんて言わない。
うさぎにはそれで充分伝わったって感じている。
帰れる場所がある。頼れる人がいる。
それだけできっとうさぎには心強いはず。
私にはうさぎをここで待つ事しか出来ないけれど。
いつでもうさぎが帰ってこられる場所を作って待つこと。ただそれだけ。
だけど、それが一番大切だと思うから。




END

2023.06.05

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