手紙~過去~(ゾイ亜美、ゾイマキュ)
最近、亜美は私の家にもちょくちょく来るようになった。と言っても、数える程で、何なら私が適当な理由をつけて釣ってるだけだけど。
今日も亜美は私の家でお家デート。
私の家では専ら私がピアノの演奏をするのを聞いている。彼女の指定席は、私の隣。
弾いている曲は“エリーゼのために”
ベタだけど、亜美の為に、亜美の為だけに弾いてあげる。
弾き終わると、良い雰囲気が出来上がっていた。
流れでキスしようと目を閉じながら顔を近づけて行く。
「か、かゆーーーーーい」
「……はぁ」
キスチャレンジ、失敗。私は大きなため息を着く。
一体何回目の失敗かしら?
いつになれば何の障害もなく出来るようになるのか、誰かマジで教えて欲しい。
目を開け、彼女の身体の状態を確認する。
「蕁麻疹、治らないわね……」
「ごめんなさい」
素直に謝られると、この後の愚痴が言い難い。
相変わらず全身に満遍なく出来ていて、見てるこっちまで痒くなってきそう。
「いつになれば慣れるのかしら……」
別に責めてる訳では無い。出てしまうものは止められないし、仕方が無いこと。
けれど、この雰囲気は恋人である以上何度も通るし、今までも幾度となくあった。
だからこそ、もどかしい!
「亜美からの時は、大丈夫なのにねぇ」
「そんなに、積極的には……」
そう、彼女からの時は出ない不思議な現象。
多分、人から予期せぬ状況を与えられると身体が拒否反応を示し、蕁麻疹が出るみたい。
自分から動くと、蕁麻疹は全く出ないのは予想しているから。
何と我儘。いや、失礼。分かりやすい身体のメカニズムか。
「確かラブレター貰うと出てたって言ってたけど、心当たりは?」
蕁麻疹を処方された薬を塗っている彼女に聞いてみる。
原因さえ分かれば、対処や対策が出来るはず。
「心当たりは……」
「やっぱり思い当たらない……か」
期待はしていなかったけど、良い答えは返ってこなかった。
心当たりがあれば、今頃は蕁麻疹なんてとっくに治ってキスもセックスもやり放題よねぇ。と不謹慎な事を考えている。
こんな中性的な見た目で、オネエ言葉だけど男であり、恋人がいる以上はどうしても下心は発生するし、普通にヤリたい!
こう見えて、結構限界が来てたりする。
多分、四天王の中で1番遅れを取っている自信がある。和永にさえも負けてる気がする。
とは言え、キスは何度かしてるけど、その先が見えない。
「いえ、思い当たらない事も、無い……かも」
相変わらず煮え切らない言い方ね。
「あるの?無いの?」
「あります!思い出したの……」
優しく言ったつもりが、ついキツい口調になって責め立てていた。
「で、原因は?何なの?」
原因である相手がいるならば、そいつと話し合うまでよ。
余裕があった私は、軽くそう考えていた。
次の亜美の言葉を聞くまではーー。
「えっと、覚えてませんか?」
「なんの事?」
何故ここで聞き返されたのか、皆目見当もつかない。聞いてるのは、こっちなのに。
「前世での事です!」
かなり大きな声で、どうして大切な思い出を忘れているの?と言わんばかりに責め返して来た。
前世での出来事なんて考えた事も無かったから、不意をつかれた。
そして、彼女は前世でのある日の事を語り始めた。