いい○○の日2021まとめ
『見守り隊』
石となった四天王はいつもは衛の家で保管され、大切にされていた。
たまに衛から交信が有り、その時はだけは衛と交信出来る。
あまり自由にはできないが、意識を飛ばせる事がある。
その時は決まってそれぞれ前世の想い人の内部戦士の所へと行くのである。
幽霊と言う性質上、彼女達は見えないから喋る事も出来ない。
衛と話せる事が出来るのは、衛のヒーリング能力によるところが大きい。
彼女達にはそう言った力は持たない。
それを承知で、それでも彼女の傍にいられるだけで4人は幸せだった。
そんなある日の一コマである。
「どうだった?」
「ちょっと目を離した隙に変な虫が付いてた……」
最後に帰ってきたネフライトにゾイサイトが尋ねる。元々幽霊で青白い顔が更に真っ青になってショックを受けている様子だった。
「どういう事だ?」
「ジュピターより小さい年下の男の子が懐いていやがった……」
「そ、れは……気の毒と言うか、何と言うか……」
「ジュピターに額にキスまでしてもらってた……」
「ご愁傷さまだな」
3人に慰められるネフライト。
「まぁもう俺死んでるから仕方ないけど、好きな女のそう言うのはきっちぃなぁ……。ゾイサイトはどうだったんだ?」
「俺?あの子はダメだね。勉強ばっかりして色恋無し!それはそれで心配になるわ」
「確かに、押しに弱そうだもんなぁ……」
「そう言うジェダイト、お前はどうだったんだ?」
「俺はマーズと会話したぜ?笑」
「はぁ?何だよそれ?あまりにも衝撃的な出来事があって目をそらす為の妄想だろ?気をしっかりもて!」
「偉い言い方だな。ちげーよ!マジでマーズと喋ったんだって!霊感強いから俺の事見えてて、話も出来るんだ」
「何それ反則だろ?ズルすぎる」
「ま、しょうが無いよな!当たりくじ引いてしまってすまないな」
前世も現世で生きていた時も、ジェダイトは抜きん出て不憫を極めていた。
それは周知の事実として知れ渡っていた。
不器用故、好きな女を誘拐すると言う事で歪んだ愛を示す程……。
「……何で俺、マーズを好きにならなかったんだ?」
前世では4人の中で一番リードしていたと自負しているネフライト。
しかし、今は一番最悪な状況にあり、絶望する。
マーズを好きになっていれば会話が可能。盲点だった。
とは言え、彼女を好きにならなかった理由は明白で。兎に角クールで、会話が成り立たない。息が詰まる。そんな理由だった。
「落ち着け、ネフライト!マーズに合わせてもらえば色々話できるんじゃないか?」
「うわ、面倒くせぇ。ってかそんな事したらマーズに嫌われる」
うっかり口を滑らせたことを、ジェダイトは心底後悔した。事態は思わぬ方向へと動こうとしていたからだ。
「いいじゃねぇか!頼むよ!リーダーからも頼んでくれよ!さっきから黙ってるけど……」
「必死すぎて哀れだな、ネフライト」
「やっと喋ったかも思ったら、一言目がそれって酷くね?」
「哀れな奴に哀れと言って何が悪い」
帰ってきてからクンツァイトは一言も喋らずにいた。
3人が騒がしく、口を挟む暇もなかった。
そして、自身もまたネフライト同様、余り芳しくない状況で、喋れずにいた。
「マジで取り付く島もねぇな。機嫌悪いのか?ヴィーナスんとこ言ってどうだったんだよ?」
「ああ、なんて事はない。アイドルを見てはキャーキャー騒いでいたが、それだけだ」
「何だ、つまんねぇな……」
「面白がるな!そう言えばダンブライトがいたな」
「はあ?ダンブライトってクンツァイト直属の配下だったダンブライトか?」
「ああ、そのダンブライトだ」
「いやいや、何でそんなに冷静なんだよ?何でヴィーナスに取り憑いてんだよ?」
「恐らくアイツもヴィーナスが好きだったのだろう。前世では同じ金星人だったからな」
「サラッと凄いこと色々言ってるぞ」
「可愛がってた子が恋敵か……修羅場だな」
「喋ったのか?」
「いや、全く」
「何だよそれ?なんか喋るだろ?」
「そうだよ!俺とマーズでも喋ってるのに」「逆に聞くが、お前らが俺の立場なら喋るのか?何か喋る事あるか?」
クンツァイトから意外な人物の名前が上がり、どよめく。
まさか前世でも現世でも部下として出来も良く可愛がってた相手が恋敵になるとは。何とも皮肉な話である。
久しぶりの部下との再会が意外な形に、3人は同情し、言葉を失う。
確かにクンツァイトの言う通り、そんな状況では喋る気にはなれないかもしれない。
「まぁ元気出せ、クンツァイト」
「まさかお前に慰められるとはな、ジェダイト」
「そうだぜ!俺よりはまだマシだ」
「確かに、ネフライトは生身の人間が近づいるんだもんなぁ……状況は最悪だ」
「蒸し返すなよ、ゾイサイト。余計凹む。やっぱり、マーズに会って色々聞きてぇな。ジェダイトばっかりラブラブずりぃ!」
「勘弁してくれよ。変な事して嫌われたくねぇ」
「頼むよ!一回だけ!」
「そうだな、ジェダイトだけ抜け駆けはズルいよな」
「ゾイサイトまで。嫌われたらどう責任取ってくれんだよ」
「その時はマーズに事情を話してやる。中を取り持ってやるから心配するな」
「クンツァイトまで……。よっぽどヴィーナスが好きなんだな」
リーダーのクンツァイトにまで言われ、そう言う事ならと渋々了承する形で収まった。
END
2021.11.14
いい石の日