最悪な休日
久しぶりの休日。私は本屋で買いそびれた漫画や自分が乗ってる雑誌を片っ端から買っていた。
いっぱい買って満足した私は、乗ってきた自転車で家へ帰ろうとした。
助走を付けて乗ろうとした時、斜め向かいの喫茶店に見覚えのある男性2人を見つけて、乗るのを止めた。
「あれは、まもちゃんとがーすーくんじゃ無い?」
そう、知り合い中の知り合い。寧ろ腐れ縁。いや、前世からの恋敵。まもちゃんとジェダイト。いや、現世名は和永か。
2人が一緒という事は、うさぎとレイちゃんもいるのでは?
忙しくて会えてなかったから嬉しい。
2人に会えるの、楽しみだな。
そう思いながら、喫茶店の中へと入って行った。
「まもちゃん、和永っち!やっほー♪」
勢いのままに、入っていったら2人だけだった。うさぎもレイちゃんもいない。
「おう、美奈。久しぶりだな」
「有名人の登場だな」
「……って、2人だけ?」
大っ嫌いなメンツ2人だけに、絶望する。あからさまに落ち込む。
「ああ、うさは学校が忙しい」
「同じく、レイも大学さ」
って、2人ともまだ学生なのに平日の午後にこんな所にいるのは、どうしてなの?サボり?
「うさぎとレイちゃんと待ち合わせてたわけじゃないの?」
「ああ、たまには2人で話すか?ってなってな」
「何それ、意味分かんない」
その場に立ち尽くし、呆然となる。
テーブルに目を落とすと、2人の食べてたものと飲んでた物に絶句する。
まもちゃんはホットコーヒーにチョコケーキ。これは分かる。好物でいつも食べていたから。
問題は和永だ。トマトジュースにラズベリーケーキ。真っ赤なんだけど。グロイわ。
いや、そういう問題じゃない!
食べ物から«レイに会いたい»と言う感情がダダ漏れで引いてしまった。
わかりやすすぎて嫌気がさす。
「座らないのか?」
ボーッと突っ立っていると、和永に座らないか聞かれて、腹が立つ。
座れるもんなら座りたいわよ!ただ、座れないのよ!
窓際で、しかも向かい合わせに固定されたソファー。どっちに座っても得がない。
寧ろ、どっちに座っても座り心地が悪い。
何でこんな席に座ってんのよ?
もっとあったでしょーが!
っても、私が予想外の乱入をしたから仕方ないんだけど。でも!
「座るわよ!」
勢いで和永の横に座ってやった。
雑誌類はまもちゃんの横に置いてもらった。
なんで、和永の横かっていうと、単純にこの顔を見たくなかったから。
レイちゃんの彼氏だから嫌い。それもあるけど、もう1つ理由があった。
私が殺したエースに雰囲気が似てると気付いたから。
記憶の中のエースは少年で、幼い。だけど、もしも生きていたらきっとこんな雰囲気になってたのかも……なんて思ったら、古傷が抉られる思いだった。
「何か頼むだろ?」
そう言われたから、頼む事にした。
「すみませーーん!オレンジジュースとプリンアラモード下さーーい」
うさぎとレイちゃんがいないとはいえ、せっかくの喫茶店。何も飲み食いせず帰るのは損した気分になる。適当に頼む。
「うさとレイちゃんが来なくて残念だったな」
見透かされてて、何か腹立つ。最も、分かりやすいのは自覚済みだけど。
まもちゃん、前世から私の大切な人をサクッと奪っていって。その余裕な面を見て、腸が煮え繰り替えってた。
まぁ、前世も現世もうさぎが選んだ人だもん。
うさぎの幸せが私の幸せ。うさぎがまもちゃんといて幸せなんだから何も言わず、見守ってる。
「紛らわしいのよね、2人が一緒なの!」
だからうさぎとレイちゃんもいるんだ。来るんだと思ったから来たのに!来ないとか!
「そりゃあ、悪かったな」
言葉とは裏腹に、笑顔で全く悪びれてない和永に更に腹立たしい気持ちになる。
レイちゃんは何でこんな奴が良かったのか……?謎深し。
まぁ、レイちゃんが決めた事だから今更とやかく言わないわ。
男嫌いで、恋はしない!って宣言してたけど、心許せる異性が見つかったんだし、良しとしなきゃ。
恋をする事を勧めたのは他でもない、私なんだし。
「公斗は、仕事か?」
分かりきったことを聞かれて、またイライラ。
アイツ、有休で休んでもくれなかったな。社畜、マジムカつく!
「その分だと、相手して貰えなかったか?リーダー、クソ真面目だからなぁ~」
ええ、そーよ!流石、四天王。良く、ご存知で!
まぁ、不規則で中々会えないから、同棲始めたんだけどね。
それに、少なからず有名人だから、男と2人でデートは難しいし。
いや、この状況もギリギリアウトだけど。
「2人はどうなの?順調?」
聞きたくないけど、愛の女神として聞いといてやるか。
「ああ、変わらずだ。お互い忙しいから会える日は少なくなったけど、会える時は会ってるよ」
「俺も、火川神社のバイトは続けてるから、合法的に会えてるな」
「あっそ!」
聞いといて何だけど、興味無いから面白くも何とも無いわね。寧ろ、つまらない!
嫌いな奴と一緒するのは息が詰まるわね。
早く食べて、この場を立ち去ろう。
「どーでもいいけど、2人とも、うさぎとレイちゃん泣かせたら、この私が愛の天罰、落とさせて頂きますからね!」
「肝に銘じとくよ」
「愛の戦士、マジ怖いな。心の片隅に置いておくよ」
「堂々と真ん中に置いときなさいよ!泣かせたら、マジ許さないから!」
私は愛の星出身者。みんなの幸せを願っているの。
勿論、うさぎだけじゃなくて、レイちゃんにも幸せになって欲しい。
まこちゃんも亜美ちゃんも同じ。
私の大好きな人達の幸せを、私は願っているの。
みんなで幸せになりたいから。
運ばれて来たプリンアラモードを食べながら、早くこの場を後にしたい。その気持ちと戦いながら、みんなの幸せを思っていた。
この後私は、2人に煽てられ、何故か奢らされることになってしまった。
うさぎにもレイちゃんにも会えないばかりか、一番会いたくない男2人と相席をする。と言う苦痛を強いられたのに!
どうして、奢らされなきゃいけなかったんだろう……。
散々な久々の休日だった。
END
2022.03.07
美奈の日