「はぁ～～～ぁぁ……彼氏、欲しいなぁ～」

また、言ってるよ。
よくもまぁ、毎日飽きないわね。
口を開けばこればかり。
呼吸をするかの如く、同じ言葉の繰り返し。

“恋がしたい”
“彼氏が欲しい”

それが日常的に美奈が言う言葉。
平和になり、普通の生活が出来るようになって来た。だから、分からなくはないのだけれど……。
そんなに彼氏って欲しいものかしら？
自分の時間が減ったり、束縛されたり。煩わしいだけだと思うのだけれど。

「どっかに良い男、落ちてないかなぁ？」

こんな事言っているけど、本当は分かっている。
美奈は容姿が良いし、性格も底抜けて明るい。そんな彼女は、モテる。
実際、何度も告白されているし、OKして付き合っていた人も何人かいた。
けれど、どれも長続きしていなかった。

“タイプじゃなかった”とか“思ってたのと違った”と言う理由で、振っていた。

長続きしない理由は、火を見るより明らか。
それは、プリンセスであるうさぎだ。
ギャラクシアとの戦いで、十番高校の屋上でスリーライツに向かって宣言していたあの言葉。

“もうとっくにあたしには命を捧げたたった一人の人がいるわ”

プリンセスの守護戦士のリーダーとして、覚悟を纏った凛々しい姿は、この先何があってもうさぎを守ると堅い決意が伝わって来た。

恋人が欲しいのも本当だと思う。でも、それ以上にうさぎが大切だからこそ、恋愛に身が入らないのだと思う。

前世から、彼女はずっとプリンセス一筋で、プリンセスの幸せを願っていた。
それが、転生して生まれ変わっても変わらない。変わっていないことが、何だか嬉しい。

まぁ、前世も惚れっぽい性格だったから、それが現世にも受け継がれているのは、頂けないけれど。

もしかしたら、長続きしない理由が前世での恋にも影響しているのかしら？
同じ志を持った、エンディミオン王子直属の配下、四天王が一人でヴィーナスと同じくリーダー。ーークンツァイト。

潜在的に美奈の心の中にいるのだとすれば、長続きしないのも仕方の無い事かも知れないわね。
同じ志を持った人であれば、きっと……。

愛の女神なのに、本気の恋が出来る相手が現れないなんて、皮肉なものね。
けれど、きっとそれは使命に全う出来るように、と言う事なのかも知れない。

恋愛にうつつを抜かすのも良いけれど。私たちは戦士。プリンセスを、やがてクイーンとなるうさぎを守護する戦士。
リーダーとして、あの時のように自覚をしっかり持って。

誰よりプリンセスに忠実な守護戦士、セーラーヴィーナス。私たちの頼れるリーダー。これからも変わらず、私たちを引っ張って行ってね。

期待してるわよ、美奈！




END

2022.03.07

美奈の日