あなたの知らない世界(レイ美奈)
「レイちゃんってさぁ、私達が見えてないものがいつも見えてるんだよね?」
ある日の休日、私の家に来て部屋で寛いでいた美奈が突然言ってきた。
見えてないもの、それは幽霊や妖怪と言った類のものを指している。
「急にどうしたのよ?」
「ん、いやぁ何となく気になっただけ」
美奈の言う通り私は他の人には見えないものが日常茶飯事的に見えている。
それは物心ついた時から当たり前のように見えていた。
それが当たり前だと思っていたけれど、違っていた。
幼少期は割と見えている子が多いと聞く。
だけど歳を重ねる毎に見えなくなるのが普通らしい。
でも私の場合は見えたままだった。
どうやら特別な力を与えられてしまったみたいだった。
所謂、第六感、シックスセンスってヤツ。
それで日常が脅かされたり危害を加えられたりする事はなかった。
けれど、それが見えるという事で周りからは忌み嫌われた。
怖いのは幽霊では無く人間。
幽霊から危害を加えられそうになっても除霊する術を持っていたから、彼らが襲って来ると力で捩じ伏せていた。
でもそれが出来ないのが人間。
言われのない事で攻撃してくる。
相手が人間だから力は出せない。
お陰で次第に距離を置くようになった。
そんなこの世に絶望しかけていた時にうさぎと出会い、セーラーマーズとして覚醒した。
そこで漸く合点がいった。
他人と違う力があったのは……戦士だったから。
戦士として必要だったからなのだと。
幼少期に2羽のカラスをフォボスとディモスだとピンと来たのもそう言う事なんだと分かった。
そして唯一とても愛していた男性、海堂さんに振られてしまい男運が無かったことも戦士として全うする為だった。
だから、それまで嫌だったこの力もこの瞬間(とき)から受け入れ始めて、好きになろうと考えていた。
「何かあったんじゃないの?」
「……うーん、私も見た……かも?」
「何その歯切れの悪い言い方」
「たったの1回だったし、1人だけだったからなぁ……。レイちゃんの場合って常に色んなものが見えてるんだよね?」
美奈の言う通り私は毎日見たいわけじゃないのに気を抜くとあっちこっちでこの世のものじゃないものが見える。
それは悪霊だったり、生霊だったり、守護霊だったり……。
死んだ時の姿のままおどろおどろしい見た目の霊もいれば、綺麗な見た目の霊もいる。
見た目がそれと分かる分かりやすい姿なら構わないんだけど、生きてる私たちと変わらない姿だと見分けがつかないからある意味厄介。
怖いと思っていたこともあったけど、流石に日常茶飯事的に見るから麻痺してしまった。
これが私が四六時中見ている世界。
中々にシュールな世界でしょ?
まぁ流石に慣れたけどね。
だけど見えているから心霊スポットや心霊特集、ホラー映画やお化け屋敷と言った類の所には行かないように、見ないようにしている。
こう言う場所には大抵いるから。お勧めはしない。
美奈が聞いてるのはこう言うことなんだと思う。
「まぁそうね。同時に色んな霊が見えるわ」
「じゃあやっぱり私が見たのは違ったのかな?」
「どんなのか知らないけど、それも立派な霊だと思うわ」
「へぇ~じゃあレイちゃんが見てる世界、私も見たんだ。何か嬉しい♪」
美奈は普通にそう言う事を言うわよね。
凡そ私の見える景色が見えて苦労を垣間見て、どんな世界か知れたことが嬉しくて何も考えずに言ったんだと思う。
けど私はそう言う美奈の一言や一挙手一投足にどれだけ心掻き乱されるか。
「何?あんた幽霊見たかったの?」
「レイちゃんが見てる世界を見て見たかったんだよね」
「どうして?」
「そりゃあ、レイちゃんの苦しみが分かるかなって。でもたった数分、1人だけじゃ上辺だけしか分からないか……」