アイドル戦士からアイドル女優へ


そして、数日後。
また、マネージャーが興奮気味で私に言ってきた。

「マリエ先生が、お会いしたいそうだ」
「わぁ~、何年ぶりだろう。楽しみぃ」

いつでも遊びに来てね。そう言われて行く気満々だったけど。結局、セーラー戦士として忙しくなって行っていなかった。
マリエ先生も結婚しちゃって、新婚家庭にお邪魔するのも悪いなって。行かなかったのよね。
そしたら、まさか今の今まで会えないとは思いもしなかった。

「いつですか?」
「明日の昼、出版社で会う事になっている」

そう告げられ、何年か振りのマリエ先生との再会に胸を躍らせた。



そして次の日、言われた通りに出版社に行くと、会議室へと通された。
ドアを開けて中を見ると、そこにはマリエ先生が窓側の椅子に腰掛けていた。
あの時と変わらない。少し変わったと言うと、眼鏡をしてない。くらい?それと、結婚式の時以上に美人度が増し増し。って所かな?
ま、私には劣るけどね!

「マリエ先生!」
「美奈子ちゃん!」

感動の再会。お互い駆け寄って抱き締めあった。

「美奈子ちゃん、人気アイドルになっちゃって~。活躍、見てるわよ」
「先生も、新作読んでますよ~。重版出来で、流石です」

結婚引退した先生は、子供を1人儲けたのちに子育てしつつ隙間時間で漫画家復帰をしていた。
またこれが、面白いのよ!

「先生、この度は“オーロラ♡ウエディング”の主演女優として抜擢頂き、ありがとうございます」
「そんなそんなぁ。私と美奈子ちゃんの仲じゃない!」

感謝の一礼をすると、先生は水臭いじゃないと笑う。

「アシスタントして貰ったり、結婚式出てくれたり、感謝しても足りないのは私の方。だから、これはそのお礼よ」
「そんなぁ、私何もしてないですよ?」
「ただ、余計なお世話だったかしら?」

申し訳なさそうに切り出したマリエ先生。
先生曰く、勿論私に出て欲しかった。けど、人気アイドルの私にオファーしようとしたらスケジュールが合わない。
だけど、どうしても私を使いたいとゴリ押ししてくれたそうだ。

「マリエ先生のオファーなら、決まってた仕事は後回しですよ」
「まぁ、美奈子ちゃんったら。仕事は全部コツコツよ」
「てへぺろ♪」
「そうそう、主題歌もお願いしたいわ」
「是非!歌わせて頂きます♪」

マリエ先生、何て良い人……。
主演だけじゃ無く、主題歌まで!
有り難すぎるわ!

「作詞は私がするのよ。それを歌って欲しいの」
「先生作詞の曲を歌えるなんて、光栄です!」

これは、間違いなく私にとってターニングポイントになる。そう感じた。

「衣装とかも、監修させて頂くのよ」

つまり、この映画はマリエ先生プロデュース。完全監修らしい。益々凄い。
これは、本当に気合いを入れないと!

それから私たちはマリエ先生がこの映画にかける想いや、媒酌さんとの結婚生活など、色々思い出話に花を咲かせた。

撮影は、それから2ヶ月後に行われ、映画が封切られたのは翌年のジューンブライド。つまり、6月1日に公開。

今をときめくアイドル、愛野美奈子の女優デビューと言う話題性と、“オーロラ♡ウェディング”の人気により、映画は大ヒット。5ヶ月のロングランとなり、続編も決定。

私はと言えば、それから女優業のオファーが耐えず、連ドラに単発の2時間ドラマ。挙句にはあの、朝ドラの主演まで決定する。正に、飛ぶ鳥を落とす勢い。

お陰様で、芸能界のトップに躍り出る勢いだ。

ただ、彼氏や友達に会う時間が少なくなったことだけが、残念なところ。

ま、人生全てが上手く行く事は無いから、気楽に芸能人ライフ頑張るわ!




END

2022.06.10

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