アイドル戦士からアイドル女優へ


それは突然の話だった。アイドル生活3年目。思いもよらぬオファーが舞い降りてきたのは。

「美奈子、大変だ!」

マネージャーがかなり取り乱して興奮していた。
普段、私とは違いまぁまぁクールな男性マネージャー。その人が、ここまで取り乱す程に大変な事って何だろう?

「どうしたんですか、そんなに興奮して」
「これが、落ち着いてられるかって!」
「いやだから、何?」

説明を求めているにも関わらず、要領を得ない。と言うか、話が噛み合わない。
こんな話しが通じない人だったっけ?

「聞いて驚くなよ?」

驚く時の前置きの常套句に、うんざりする。
それって、驚けってことでしょ?
マネージャーが驚くくらいなんだから、私も多分驚く話。

「だから、何ですか?」
「お前に映画出演の話が来ている」
「映画出演?マジですか?」
「ああ、マシだ。大マジ!」

実は私、アイドルと言えど歌って踊る方と、バラエティ。それにグラビア中心でやって来ていた。
早々に馬鹿であることを見抜いたこのマネージャーによる戦略で、台詞などお前には覚えられないだろう?女優はダメだ。と言う売り方をされていた。
だからか、マネージャーがこの話はネズミに水で、信じられないと言うことらしい。結構、酷いな。

「どんな映画ですか?」

誰がオファーくれたか知らないけど、私を起用したいだなんてお目が高い!
昔、エース主演映画の恋人役オーディションで女優デビューしかけた事はあるけど……。
私が殺した事によって、お蔵入り。誰も私が女優経験ある事はアルテミス以外は知らないはず。

「“オーロラ♡ウェディング”って漫画は知ってるか?それが、今度実写映画化の話が持ち上がっているそうだが、原作者の舞頼堕流マリエ先生が、主演は愛野美奈子でないとOK出さないと言っているそうだ」
「“オーロラ♡ウェディング”が実写映画化?それに、マリエ先生直伝に?嬉しい♡♡」

何と、映画はマリエ先生の“オーロラ♡ウェディング”だった。
マリエ先生とは昔、愛犬を助けた縁で知り合い、少しだけアシスタントもさせて貰っていた。所謂、旧知の中ってヤツ。
なるほど、それで私を指名してくれたのね!ありがとう、マリエ先生様♡

「マリエ先生、お前のファンなのかな?」

まぁ、知らない人からすればそう言う疑問にぶち当たるわね。
ファンでいてくれてはいると思う。応援もしてくれてるかもしれない。だからオファーが来たとも言える。でも……。

「私とマリエ先生は、昔からの知り合いなんですよ。恋のキューピットもしたし、結婚式にも出席しました」
「そうだったのか?ってか、お前本当に何者だよ……」
「あはははは~」
「で、出演OKの返事、していいか?」
「勿論、よろしくお願いしま〜っす」

逆に断るって選択肢があるのか知りたい。
女優経験無いから、いきなりの主演抜擢はマネージャーにとっては不安しか無いんだろうけど。私は、やる気に満ち溢れてるわよ!
マリエ先生からのオファーってのもあるけど、この漫画、本当に大好きなのよね。
映画撮影が、楽しみだなぁ〜。

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