第一章『覚醒ー2つの聖石ー』

『100年先も愛を誓おう(エンセレif)』


「エンディミオン…エンディミオンに逢いたい…」

セレニティはエンディミオンに逢いたくて泣いていた。
ここの所ずっと逢えない日々が続いていた。
月と地球、ただでさえ色々と中々逢えない距離にいる。
その中でも何とかやりくりしながら忙しい合間や厳しい監視下からくぐり抜けて逢っていた。

しかし今回は、今回ばかりはいつもとは違っていた。
セレニティもエンディミオンも公務に追われ、将来自分が継ぐ為のカリキュラムがお互いに本格化し始めたが故、多忙を極めていてチャンスを作れずにいた。

もうどれくらい逢えていないのだろうか?
半年?いや、それ以上か?
以前であれば半年や1年など1000年を生きるシルバーミレニアムの月の王国の姫であるセレニティは本の数日の感覚だったのだが…。
エンディミオンと焦がれるような恋をしてからは逢えない一日がとても長く感じられた。
逢える日を楽しみにして指折り数えて待つのが日課だった。

それがもう両手では到底数えられない程逢えていないばかりか、今度はいつ逢えるか分からない状態。
絶望に打ちひしがれ、祈りの間へと隠れるように逃げ込み誰にも見られないよう泣いていた。
誰にも見られてはいけない。自業自得なのだから。

“地球と月の住人は通じてはならない それは神の掟 好きになってはいけない”

分かっていたけどそれでも止められず愛してしまい、ヴィーナス達の忠告も無視して逢瀬を重ねて来た。
全ては自分の我儘が引き起こした事、自業自得がもたらした結果。
それが分かっているからこそ祈りの間に来て1人エンディミオンを想い涙する。


一度流した涙は簡単には止められず、止めどなく滝のように流れて止まらない。
止めるつもりも、止める努力もするつもりは無かった。

「エンディミオン…貴方はどうしてエンディミオンなの?どうして…?」

どうして同じ王国(くに)に生まれ無かったの?
どうして自由に恋愛出来る立場に生まれなかったの?
考えても仕方の無い虚しい事を考えてしまう。
分かっていても考えずにはいられなかった。
それでしか自分を保てなかった。

しかしまた、エンディミオン自身も同じで王国を継ぐ身。
どう足掻いても結ばれる事はないと頭では分かっていても、想いは裏腹に止められずにここまで来てしまった。
止められる簡単な恋ならしていない。

このまま一生逢えないのでは無いかと泣きながらも最悪の事を考えていた。
それならそれで、逢う前に戻るだけなのだから変わりはない。
一国の王子であるエンディミオンにとってもその方が良いに決まっている。
でも終わりにするにしてももう一度逢ってキチンと終わらせたいと思っていた。
しかし、また逢ってしまえば別れの言葉なんて出て来ないばかりか、きっともう止まらなくなり、引き返す事が出来なくなると分かっていた。
それ程までに逢えない時間が愛を育て上げて恋しくなっていた。

エンディミオンは今どうしているのだろうか?
自分と同じで逢えない事に嘆き悲しみ、逢いたいと思ってくれているのだろうか?
同じ気持ちでいてくれたなら逢えない日々もそれもまた報われ、救われるのに…。

叶うならば今すぐ愛するエンディミオンの元へと飛んでいきたい。
そんな虚しい考えに苛まれていた。

とその時、流れていた涙が光り輝き、王国全体を強烈な光で包まれた。

エンディミオンに逢いたいと想う純粋な気持ちから涙が結晶化したようだ。
その色、形を見てセレニティは驚き、止まらなかった涙が止まる。
そう、それは紛れも無く“幻の銀水晶”そのものだったからー。

「…これは、幻の銀水晶?」

これまでどれだけ使い方を教えられ、やってみても全く使いこなせなかったばかりか、何の力も目覚めなかった。
正統な継承者としての自覚が足りないばかりか、こんな時に何故…?

突然の目覚めと銀水晶の出現に戸惑いを隠せないセレニティだが、紛れも無い自身の銀水晶を手に取るとまた再びエンディミオンを想い、涙を流す。

その想いに呼応するかのようにまた銀水晶から光が輝き、その光に包まれたセレニティは次の瞬間、祈りの塔から消え、見覚えの無い場所へと飛ばされた。
そして目の前には恋焦がれて止まないエンディミオンその人がいた。


「エ、エンディミ…オン!?」
「セ、セレニ…ティ!?」


お互いに何が起きているのかさっぱり状況についていけずにいた。
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