酒と泪と男と女(まもうさ)



「て…え、うさ?え?何で?」
ダメだこりゃ。酔っ払い過ぎて私がいることさえ忘れてるみたい。
「まもちゃんが帰って来た時から私、いるよ?」
「俺、どうやって帰って来た?」
「大学の友達が送ってソファーまで運んでもらったの」
本当に全く覚えてないんだね。どんだけ飲めばこんなに記憶が無くなるんだろう。
「一体、どれだけ飲んだの?何を飲んだらそんなに酔えるの?」
まもちゃんは自分に厳しいから自分の酒の量の限度や飲めるお酒は熟知していて。
それなのにこんなに酔うなんて、私はどうしても考えられなくて。
「……覚えて、ません。すみません!」
まぁそうだよね。直前の事も、私がいる事さえも忘れてたんだから。
「俺、帰ってから何か……した?」
「したよ!」
可哀想だけど、ちょっといじめてやろうと思った。
私の事さえも忘れられてて悲しかった罰と今までいじめられてた逆襲。
こんなチャンス、滅多に無いもんね!
うさ、激おこプンプン丸なんだからね!
「何を……したんだ?」
「まずリバースしたよね!」
「ど……どこ、に?」
青ざめて遠慮がちに恐る恐る聞いてくる。
どこにしたら面白いかな?
「私のスカート。おニューだったのに……」
聞いた瞬間、更に顔は青ざめて土下座をしてきた。
「本当に、申し訳ありませんでした!」
「許しません!お詫びに新しいスカート買ってね」
「も、勿論!買わせて頂きます!」
あちゃー、あっさり信じちゃった。
本当にまもちゃんかな?って思うくらい素直。
もうちょっとからかっちゃお♪
「あ、後は?」
「ん~、あんな事やこんな事……かな?」


オレはうさのお説教を聞きながら呆然としていた。
酒に酔っただけでなく、あんな事やこんな事までしてしまったなんて。
まるでネコ型ロボットの主題歌じゃないか。本当に時を戻せるならひみつ道具の一つや二つ借りたい気分だ。
「……聞いてる?」
「はい……すみません……」
一体どこまでしてしまったのだろうか。うさの怒りようを見るに一線を越えてしまったような気さえする。スカートにリバースしたのだから、当然脱いだわけで。
「すまない……本当に最低な男だ、オレは……」
「はぁ……ちょっとイジメすぎちゃったかな?」
「どういう……?」
「何にもしてないよ」
「ほ、本当か!?」
「リバースはしたけど、袋に入れて処理しました」
「あんな事や、そんな事は……」
「したいのなら、これからしてもいいよ?」
挑発的な視線でオレを見るうさ。
どうやら本当にからかわれていたらしい。
「よ、よかった……」
「よくないよ! あんなに泣きながら縋りつくんだから!」
「す、すまない……何か途中から悲しい気分になって、そこから記憶がないんだ」
「もう飲みすぎたりしない?」
「あぁ、約束する!」
「じゃあ、許してあげる」
「うさ……」
「その代わり、次やったら……」
「えっ……」
「既成事実にして、みんなから必殺技のオンパレードだからね♪」
「……はい」
オレは今日という日を忘れない。
本気で怒らせたら、誰が一番怖いかを知ることができた夜を。
そう心に誓った午前一時だった。

END

2021.09.08

※はやさんのpixiv(https://www.pixiv.net/users/6739455)にもアップされています。

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