酒と泪と男と女(まもうさ)



「うっ」
間一髪で間に合い、まもちゃんはビニール袋にリバースした。
キスしようとしたからバチが当たったのかと後悔した。
お酒と吐いた物の臭いで気分が悪くなりそうになりながらも中の物を処理をする。
普段、完璧でかっこいいなまもちゃんがこんな醜態を晒してくれることが滅多に無いからお世話出来るのは何か嬉しい。
汚いはずのそれも大好きなまもちゃんのだと思えば苦じゃなくて。
「まもちゃん、水。飲んで?」
吐いてスッキリしたのか水を持って行くと寝落ちしていた。
「ふふっ可愛い♪」
吐くまで飲むって一体何をどれだけ飲んだのか?
まだ飲める年齢では無いからお酒はよく分からないけど。
「二日酔いになっちゃうよね?」
ふと思った私は二日酔いに効く薬は無いかと思いつき、こんな時の亜美ちゃんと閃く。
携帯を取り出し時間を見るととっくに日付が変わっていた。
流石に迷惑だと思い、自力で頑張ることにした。
「まもちゃんも医者志望だし、薬の本とかあるよね?」
本棚を探し始めた。
それらしいものが見つかり、早速中身を見ようと本を開く。
「うっ字ばっかり……」
分かってたけど、活字ばかりで私の方が酔いそうだし、頭痛くなりそう。
「頭いってぇ」
だけど実際頭痛を訴えたのはまもちゃんの方だった。


「まもちゃん、大丈夫!?」
まもちゃんは口元を押さえながらうなだれていた。
「うさ……」
「どうしたの? こんなに飲んじゃって……」
「オレはもう、ダメだ……」
「えっ?」
泣きそうな顔をしながら言う様子を見て、いつものまもちゃんじゃないことを悟る。
「いつも周りに迷惑かけて……うさの足を引っ張ることしかできない……」
「ど、どうしちゃったの!?」
「うぅ……オレはどうしようもないヤツなんだ……」
めそめそと泣く目の前の方は、本当にまもちゃんなのだろうか。いつもの落ち着いた雰囲気も、包容力のある優しさも見受けられない。ひょっとして、これが泣き上戸ってヤツなのかな?
「許してくれ……うさぁ……」
「ほらほら……あたしはどんなまもちゃんも好きだから、泣かないの……」
「けど……オレは……」
あたしの胸に抱きつきながらおいおいと泣く恋人を見て、どうしたものかと頭を悩ませる。きっと今までため込んでいた自分の弱さとかが、お酒をトリガーに爆発しちゃったんだと思う。
「まもちゃん……」
少し考えて、コレしかないという手段を思い付く。もうこれでダメならひっぱたくしかない。そう思って唇を重ねた。
「んっ……」
まもちゃんの瞳が見開く。
「うさ……」
「目、覚めた?」

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