酒と泪と男と女(まもうさ)



「今日は大学の付き合いで遅くなる」
何日か前からそう聞いていた私は今日は会えないって分かっていた。
だけど、足は勝手にまもちゃんのマンションへと向かい、気づけば部屋の前へと来ていた。
「あらら、まもちゃんいないのに来ちゃった。でも、大丈夫♪合鍵があるもんねぇ~」
エッヘンと威張りながら合鍵を手に持ち、上へとかざす。
鍵を開けて入っていく。
いつ頃帰るかは聞いていない。
だけど一目でも会いたくてどんなに遅くなっても待とうって決めていた。
家主のいない家はとっても広くて。
何をするでもなく待っているのってとても長いし、何だか寂しい。
いつも1人でどんな想いでここにいるんだろう?
早く帰ってこないかな、まもちゃん。
うさ、寂しくて死んじゃうぞ!

「地場!大丈夫か?もうすぐお前ん家着くから頑張れ」
まもちゃんを呼ぶ声が聞こえてきてハッとなる。帰って来た!
慌ててドアを開けると大学の友達に支えられてぐったりしているまもちゃんが目に入って来た。
「まもちゃん、どうしたの?」
慌てて駆け寄る。
「地場の彼女さん?コイツ酔っ払っちゃって……後、頼んでいい?」
「はい、送って下さってありがとうございます」



グロッキー状態のまもちゃんをリビングのソファーまで運んでもらい、お友達にお礼を言って部屋へ戻る。
「それにしても、こんなに飲んじゃうなんて……」
普段そんなにお酒を飲んだりしない人なのに、ここまで酔いつぶれるなんて何かストレスでもあったのだろうか。
「まもちゃん、まもちゃん!」
ほっぺを軽く叩いても起きる様子はない。
「……キスしちゃうぞ?」
寝てるのをいいことに唇を至近距離まで近づける。
「キレイな顔……」
整った顔立ちに改めて赤面していると、まもちゃんが唸り始める。
「ううん……」
「ま、まもちゃん!?」
とっさに距離を取って我に返る。これじゃあまるで夜這いじゃない。
「うさ……どうしてここに……?」
「まもちゃんの部屋で待ってたんだよ、そしたらお友達が酔ったまもちゃんを連れて来て……」
「そうか……うさ……」
「な、なぁに?」
体勢を立て直したまもちゃんが、あたしに向き直る。
「オレは……」
「えっ?」
まさか、この状態で愛の告白?
「うさ……オレは……」
「は、はい!」
「吐きそうだ……」
「……はい?」
「気持ち悪くて、吐きそうなんだ……」
「ちょ、ちょっと待って!?」
あたしは慌てて、近くにあったビニール袋でまもちゃんの介抱をすることにした。

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