天体ショーでSS


ジェダレイ

「月、綺麗だな」
中秋の名月のこの日、氷川神社にて和永は月を眺めて呟いた。
神社の境内で月見団子とススキを飾り、月を見る。
正に、これを風流で趣があると言わずしてなんというのだろうか。
そんな穏やかな気持ちで思った事を口にしたのだが、レイは違っていたようだ。
「私より?」
空を見上げ、月ばかり見入っている和永に少しムッとする。
月はレイの主君であるうさぎの守護星だ。
その月を見て綺麗と呟くことの意味する所は……。
「私よりうさぎがよいのかしら?」
「あ、いや、その……レイが綺麗なのは大前提さ。この満月も霞んでしまうほど美しいよ」
月はプリンセスであるうさぎの守護星だと気づいた和永は、レイが怒っている理由を一気に理解して慌てて弁解した。
「うふふっ月は綺麗よ。あの子の星なのだから当たり前ですわ」
ちょっといじわるしてみたかっただけだ。とレイは呟いた。
「月が綺麗ですね」
ホッとした和永は気を取り直して言葉を言い直す。
「そうね。ずっと輝いていたいわね」
ちゃんと意味を理解していたレイは、和永の気持ちを汲み取りそう答えた。




ネフまこ

「中秋の名月だからチューしようぜ、まこと!」
月に興味が無いのか、マンションへ到着するや否やまことに直行してサラッと言いのけた。
「バカなこと言ってねぇで、月見団子でも食ってろ!」
勇人の行動にすっかり慣れたまことは、“またか……”と頭の中で思いながら月見団子を適当に口の中に入れてやる。
これでキス出来なくなる。そう考えての行動だった。
「んっ」
口いっぱいに入れられた月見団子を必死で食べる勇人は、喋れずにいた。
「はぁー、美味かった!まことの手作りか?」
「ああ」
「和菓子も作れるのか?流石だな」
「いっぱい作ったからじゃんじゃん食ってくれよな」
「じゃあ、遠慮なく」
月に見向きもせず、食欲を満たして行く勇人。
まことの思惑に乗せられ、手のひらで転がされてるとも知らず。




クン美奈

「月が綺麗だな」
「あったり前よ」
アホな美奈子に言葉の意味するところが理解して貰えず、スルーされた公斗はロマンティックとは?愛の女神とは?と呆れた。
そして美奈子は何故だか得意げである。
「何故お前が威張る?」
「うさぎの守護星だから」
主君を想う美奈子は笑顔で美しく見えた。
キスをしようと顔を近づけると。
「はい、アーン」
近くに供えであった月見団子を取った美奈子は、公斗の口に入れようとした。
こういう在り来りな恋人の時間を設けていなかった2人。公斗は素直に受け入れようと口を開いた。
しかし、待てど暮らせど一向に口の中に月見団子が入って来ない。
どうしたもんかと美奈子を見れば、まるでピッチャーにでもなったつもりか?と思うほどのポーズで月見団子を放り投げようとしていた。
「行っくわよー」
その合図とともに月見団子をボールに変え、公斗の口に直球した。ストライクだ。
「食べ物を無駄にするな!月見団子はきびだんごとは違うぞ」
怒った公斗も投げ返して粗末にしていた。
訂正していたが、きびだんごも投げるものでは無い。




ゾイ亜美

「月が綺麗ね」
「そうね、普遍的よね」
彩都は、遠回しに告白する。博識な亜美なら意味を分かってくれるだろうと推測した。
“普遍的”とは、ずっと変わらず愛しているということかと解釈する。
「こうして亜美と月が見られるのはやっぱり感慨深いわ」
前世、ずっと地球でマーキュリーがいる月を一人見上げるだけだった。
それが今は同じ地球でこうして月見が出来ることが彩都にとって、至福のひとときで尊いもので。
「まさかこんな日が来るなんてね」
人生、何があるか分からないものだ。そう亜美は呟いた。
この日、二人はずっと一緒に夜空を眺めていた。




END

2022.09.10

中秋の名月




本当は四四それぞれ1000文字くらいのボリュームで書きたかったのですが、時間が足りず少しだけで無念です💦
来年、ムーンリベンジ出来ればと思います。

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