怪獣島ツーリズム・延長戦!







怪獣界の夕刻。
乱闘騒動の去ったアッシリ湖には再び平穏が戻って来ており、薔薇と蔦があしらわれた緑色の如雨露(じょうろ)を手に、ビオランテが花の水やりをしていた。



ビオランテ「全く、異界のもんを連れて来るのは結構じゃが、場をわきまえない阿呆な行為は慎んで欲しいものじゃの。折角イシュタルとダガーラが上手く行きそうじゃったのに・・・あれはもうしばらく、進展は無さそうじゃの。いっそ、私の手で色々・・・」
ダガーラ「俺とイシュタルが、どうかしたのか?」



ブツブツと独り言を呟くビオランテの背後から、突然ダガーラが現れた。
大抵は取り乱すシチュエーションだが、幾多の時を過ごした影響が性格にまで染み込んでいるビオランテはその余裕の態度を全く崩す事無く、平然とダガーラとの会話に興じる。



ビオランテ「誰かと思えば、ダガーラか。イシュタルとのデートの続きかの?」
ダガーラ「い、いや、違う・・・ちょっとビオに頼みたい事があって来た。」
ビオランテ「頼みたい事とな?」



よく見ると、ダガーラの隣に見慣れない男がいた。
黒いシャツとジーンズの中に隠された、屈強でかつたくましい肉体。
燃え上がる炎にも似た髪型をしている、肩まで伸ばした黒髪。
佇まいから伝わる、幾多の戦いを乗り越えて来たであろう猛者のオーラと、王者の顔立ち。
そして何より、彼の背中からはゴジラ一族のものに酷似した背鰭が生えていた。



ビオランテ「ほう・・・この気配、お前も異界から来たゴジラか?」
???「流石はビオランテの同個体、って所だな。その通り、オレも別世界から来たゴジラだ。『レッド』とでも呼んでくれ。」



そう、彼は怪獣界・人間界・「‐」世界とはまた違う世界、「獣人界」から来たゴジラであり、愛称はレッド。
彼がいる世界は、大戦と呼ばれる大規模な争いを経て、何かをきっかけにして時間の退行が起こり、その反動として怪獣達が人の姿を模すようになった世界である。
地球、宇宙、「超獣」や「KAIJU」の分け隔て無く、人の姿を取った怪獣達は互いの領域を侵さない事を条件に人類と共存し、こことは違う人類に管理された「怪獣島」を中心に、独立した社会を形成していた。



ビオランテ「お前達一族の気配なんぞ眠っていても分かるぞ。独特のオーラを纏っておるからの。」


ビオランテ――それに、私も「ゴジラ一族」じゃからな。
見た瞬間に同族の気配がぴんぴん来よったわ。
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好釦