ラゴス島の主を求めて・・・
洞窟での一幕に一段落が付いた頃、洞窟の入口に人影があった。
???「やっと着いたか・・・呉爾羅達は無事に着いているか?」
そう、バランだ。
しかし今回は「‐」モスラでは無く、呉爾羅達の事を案じていたが。
チリンと鈴を鳴らし、バランは洞窟の先に進む。
バラン「しかし、私とした事が寄り道をし過ぎてしまった・・・あの気配は何だったんだろう。何だか、私と同じものを持っているような・・・」
歩いている内、道の先からざわざわと聞こえて来る仲間の声と、見知らぬ者の声。
開かれている宴に急ごうと、バランはマントを翻し、足を早めた。
婆羅護吽「えっ、お姉様の世界にもバラゴンが?」
「‐」モスラ『ええ。まだお会いしてはいませんが、わたくし達の世界のゴジラが住む島によく来ているとの事でして、ゴジラの子供のチャイルドとはいいお友達だそうですわよ。』
婆羅護吽「そうなんですか・・・会ってみたいなぁ。」
呉爾羅「そういや、『バラゴン』と『バラン』の名前の違いってなんなんだろ?」
初代ゴジラ「単に『ゴ』が入っているか否かではないのか?」
ザウルス「でも、『バラゴン』の方が一文字多いのに小さいんだよね。普通なら一文字多い方が大きくて、強い印象があるけれど。」
魏怒羅「確かにずっと疑問だったな。」
最珠羅「なんだ、魏怒羅もか?」
魏怒羅「どうして、カラオケの採点は大きな声の人に甘いのか。」
最珠羅「いや、根本から違うぞ魏怒羅。お前今の今まで寝てただろ。」
婆羅護吽「もう!みんなして馬鹿にして!バランさんがいたら怒り心頭だよ!」
バラン「呼んだか?」
婆羅護吽の叫びに続いて唐突に聞こえて来た、低い声。
声の主を知らない者は驚き、知っている者も勿論驚く。
「‐」モスラ『バ、バラ・・・』
???『待たせたな。』
更に聞こえて来た、同じような・・・いや、ほぼ同じ声質の呼び声。
一同がその方向に振り向いてみると、そこにはまたしても同じよう・・・いや、相似としか言いようがない男がいた。
最珠羅「バラン・・・さん?」
「‐」モスラ『いえ、バランはこっちですわよ?』
婆羅護吽「やだなぁ、お姉様。バランさんはこっちで・・・え?」
ザウルス「えっと、最後の連れって・・・どっち?」
魏怒羅「どっちも、バランじゃん。」
誰も錯乱するのも無理は無い。
初代ゴジラに案内されたこの広場の入口と、奥にある別の出口にはバランが一人ずつ向かい合わせにおり、それはどう見てもバランが二人いるようにしか見えなかった。
この状況の答えは簡単。このバランの場合、偶然にしてはあまりにも似すぎていたからである。
呉爾羅「バランが、分裂した!」
スペース「これは一体、どういう事だ?どちらも確かに、以前見たバランの姿だぞ?」
シン「・・・あっ!!あれよ!あれ!ドッペルゲンガー!」
ラゴス・ゴジラ「ドッペルゲンガー?」
シン「自分と全く同じ姿をした存在が、世界には3人いるって話よ。同じ一族とかじゃ無くて、本当に一緒の。」
ラゴス・ゴジラ「えっ?それってそっくりさんって事なんだろ?」
シン「ううん・・・ここからが恐ろしいとこ。ドッペルゲンガーに会っちゃった人は・・・しばらくして、死んじゃうんだって。」
婆羅護吽「えっ、し、し・・・!?」
ザウルス「死ぬ!?」
シンの言葉を聞き、一同のバランを見る目が一気に変わった。
ザウルス「こ、これってまずくないか・・・?」
「‐」モスラ『バランが・・・死んでしまいますの!?』
呉爾羅「バラン、死す。か・・・寂しくなるなぁ・・・またあ~うひ~ま~で~・・・」
婆羅護吽「ち、ちょっと呉爾羅!そんな縁起でもない事言わないでよ!バランさん!早く逃げて下さい!」
だが、婆羅護吽の台詞とは正反対に二人のバランは前へ歩んで行き、少しずつだが接近して行く。
初代ゴジラ「本当のバランを決める気か。」
「‐」モスラ『そんな・・・!バラン!ここから早くお逃げになって!貴方が死ぬかもしれませんのよ!貴方がいなくなったら、わたくし達は・・・瞬はどうなるのですか!』
スペース「バラン・・・!」
一同の願いも虚しく、バランは面と向き合ってしまった。
互いを確かめ合うように、二人はただ見つめ合うだけだ。
バラン&バラン「『・・・』」
魏怒羅「・・・zzz」
少し前に初代ゴジラと対峙した時のような緊張感が、洞窟の面々を包む。
こんな時にもいびきを立てて眠る魏怒羅を除き、誰一人として一言も言葉を言えずにいた。
バラン&バラン「『・・・お前(御前)か!』」
そして次の瞬間、二人のバランは全く同じタイミングで手を出して・・・握手をした。
一同「『・・・えっ?』」
固く手を繋ぐ二人のバランの表情は、まるで遥か昔に止めた探し物を見つけ出したかのような、爽やかなものであった。
バラン&バラン「『やっと、会えたな!』」
初代ゴジラ「なんだ、ただの茶番か。」