ラゴス島の主を求めて・・・




ラゴス・ゴジラ「・・・呉爾羅。」



と、そこへ珍しく沈黙を保っていたラゴス・ゴジラが呉爾羅の元に歩み寄った。



呉爾羅「ラゴス・・・俺、怖いよな。気味悪いとよ。だって僕の中、数えられへんくらいの人の思いがあるし、ウチだって時々自分が分からんようなるし、今だって・・・」



人格すら固定されない、情緒不安定な口調で得体の知れない自分の中で渦巻く、膨大な感情への不安を語る呉爾羅。
そんな呉爾羅の頭にラゴス・ゴジラは自分の右手を置き、目をつぶる。
彼の特殊能力の一つである、相手の心を読む力を使っているのだ。



婆羅護吽「ラゴス・・・何してるの?」
シン「読心術。今、呉爾羅の心の声を読んでるの。」
「‐」モスラ『ラゴスに、そんな能力があったのですか?』
スペース「そうだ。しかし今あいつの心が、意志が一つどころでは無い事は分かっている筈。それを承知で、無謀な事を・・・!」
魏怒羅「・・・」






ラゴス・ゴジラ――ぐっ・・・!
物凄い、感情の数だ・・・!
しかも、どれも押し潰されそうなくらいに昂ぶってる・・・!
二重人格とか、そんな話じゃないぞ・・・!



呉爾羅の中に眠る、おびただしい人格の声がラゴス・ゴジラの精神を襲う。
彼にとってはまるで押し寄せる大波の如き勢いであり、ラゴス・ゴジラの表情は苦悶に満ちていたが、それでも彼は決して手を離そうとしない。



「‐」モスラ『何だか、ラゴスまで苦しそうですわよ・・・?』
スペース「いかん、止めろ!ゴジラ!これ以上力を使えば、お前の心が飲まれるぞ!」
シン「ゴジラ・・・がんばれ・・・!負けないで・・・っ!」
婆羅護吽「呉爾羅・・・ラゴス・・・!」
初代ゴジラ「・・・」


ラゴス・ゴジラ――・・・アニキ、シン。それにみんな・・・
オレなら・・・大丈夫、さ・・・!
もう・・・呉爾羅を見つけたから・・・な!



ラゴス・ゴジラは左手を呉爾羅の後頭部に回したかと思うと、そっと呉爾羅を抱擁した。
それと同時に何の反応を見せなかった呉爾羅の体が、ピクリと動く。



呉爾羅「・・・!」
ラゴス・ゴジラ「もう、凄い昔だけど・・・オレの母さんはオレが泣きそうになったら・・・こうしてくれた。お前は、どうだ?」
呉爾羅「・・・俺の中の、ほとんどのやつが言ってる・・・僕も、おれも、私も、こうされたって・・・」
ラゴス・ゴジラ「じゃあ・・・次はお前らじゃなくて・・・お前は?呉爾羅・・・?」
呉爾羅「・・・きっと、そうだと思う・・・」



手を離し、一気に力の抜けたラゴス・ゴジラは地面に尻餅を付く。
だいぶ体力と精神力を使ったようだが、彼の顔は一杯の笑顔になっており、無意識の中の意志が再び引いて行った呉爾羅の顔は、もう元に戻っていた。



魏怒羅「・・・良かったな。呉爾羅。」



二人が無事に戻って来た事を確認し、一同も胸を撫で下ろす。
意外にも、シンよりもスペースの方が感情の振り幅が大きかったが。



スペース「全く、本当に無茶な事を!呉爾羅の中の人間の意志など、きっぱり捨ててしまえばいいだろうに・・・!」
シン「でも、悪くはないでしょ?スペゴジ。」
スペース「・・・確かに、それがオレの弟だ。」
婆羅護吽「ラゴスって子供みたいな印象だったけど、こんな一面もあったんだね。」
魏怒羅「婆羅護吽も子供扱いされるって悩んでるからなぁ。」
婆羅護吽「何よ、もう!さっきからちっちゃいとか、子供みたいとか!場所取るのっぽに比べたら全然マシだろ!?」
魏怒羅「・・・zzz」
「‐」モスラ『それに、小柄な女の子はそれだけで可愛らしいですわ。』
婆羅護吽「お姉様まで、私をからかって・・・もう。」
最珠羅「・・・ラゴス、未熟な形(なり)をしながら、私達にも出来ないような事をやってしまうとは・・・」
初代ゴジラ「・・・」
ザウルス「お節介だったかもしれないけど、ゴジラさん。やっぱり俺、人間を全て嫌いにはなれない。新堂さんみたいな立派な人間がもっといるって、俺は思うから。」
最珠羅「それに、そんな奴がいたら溺死させればいいだけの話ったい。」
初代ゴジラ「甘い奴らだ・・・だが、俺の口出しは無駄なようだな。」
スペース「そう言う事だ。さっきも言ったが、人間が愚かな点自体はオレも同意だ。だが・・・相手と空気ぐらいは考えるんだな。」



恩師・新堂靖明の事を思い出しながら穏やかに話すゴジラザウルス、人間への失望を理解しながら弟とその友人の為に諭すスペース、何故か九州弁が出た最珠羅の単純だがやや問題のある言葉、そしてラゴス・ゴジラの捨て身の行動に、初代ゴジラは人間への怒りを鎮め、行き過ぎた自分の言動を戒めたのだった。



初代ゴジラ「・・・悪いが、俺はだからと言ってすぐに人間を信用する事は出来ない。しかし・・・お前達への無礼は詫びる。」
ラゴス・ゴジラ「へっ・・・なんだ、ちゃんとゴメンって言えるじゃんか。なら、いいんだって。」
呉爾羅「・・・ゴリラとクジラの代わりに、許してやるよ。それで・・・いいよな?」
初代ゴジラ「・・・好きにしろ。」


ザウルス――もう、ゴジラさんはほんと素直じゃないな。
口を緩めるゴジラさんなんて、俺もそんなに見た事ないのに・・・
俺はいつでも、素直に生きていたい・・・そうしたら、いつか新堂さんが帰って来てくれるのかな・・・?
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好釦