ラゴス島の主を求めて・・・





婆羅護吽「私は・・・お地蔵さんと、信仰の心かな。私達護国聖獣は、元は人々の信仰から生まれたから。最近はないがしろになってるけど・・・私達がいるって事、忘れないで欲しいな。」
呉爾羅「だよなぁ。去年もまた、お供え物の団子の数が減ってたし。」
婆羅護吽「もう!だからそう言う問題じゃないだろ!」
シン「あたしはもちろん、世界平和!」
「‐」モスラ『わたくしもですわ!平和は誰にとっても恒久であらなければならないものですから。』




各々が自分の「残したいもの」を話す中、それを聞きながら一人浮かない表情をする初代ゴジラ。
そして苦虫を噛むような表情をしながら、絞り出すように初代ゴジラは淡々と話し始める。



初代ゴジラ「・・・忘れてほしくないもの、でも構わないか?」
スペース「似てはいるな。それなら別に大丈夫だろう。」
初代ゴジラ「俺は・・・『過ち』だ。」
呉爾羅「過ち・・・?」
初代ゴジラ「人間の過ち、その全てだ。下らない意地と抗争が戦争を生み、戦争が悲劇を量産する。人間が省る生き物だと言うが、ならどうして今なお戦争や争いを始めようとする?罪無く死んでいった犠牲者や英霊の声を、何故聞かない?だから遂には悪魔の火を焚いて、街を焼いた・・・!」
呉爾羅「・・・」



彼らの言葉に触発され、内に溜まった人間への怒り・憎しみを吐き出すように呟く初代ゴジラ。
一方で、呉爾羅もまた自らの中で渦巻く数多の霊が発する八百万(やおよろず)の思いに苦しんでいた。



ザウルス「お、おいゴジラさ・・・」
初代ゴジラ「何故、死んで行った者の叫びに耳を貸さない?何故、聞かないなんて事が出来るんだ・・・?」
呉爾羅「・・・!」






最珠羅「・・・呉爾羅?」
シン「いえ、まだ諦めちゃ駄目よ!こうなったら長男として・・・」
「‐」モスラ『あれ、最珠羅。何処に行きますの?』
最珠羅「少しだけ、ゴジラ組の所に行って来る。」



呉爾羅の苦しみを察知した最珠羅もWモスラの元を抜け、まだ地面に引っ伏している魏怒羅を無視し、呉爾羅の所へ向かった。



魏怒羅「・・・」
婆羅護吽「あの、ちょっと初代さん!」
スペース「それ以上は流石に言い過ぎだ。ここは非難の場所では・・・」
初代ゴジラ「人間は所詮、同じ事を繰り返す愚民共だ!この地球に存在する価値の無い存在だ・・・!」
呉爾羅「っ・・・!」



初代ゴジラの怒りの言葉が、呉爾羅の胸を刺す。
双方の思いが分かる分、ここまでの苦しみは彼だけしか味わえないものであった。



最珠羅「すまないが、もうそこで・・・!?」



初代ゴジラの肩を掴もうとした最珠羅・・・だが、彼より早く初代ゴジラの肩を掴んでいたのは、ゴジラザウルスであった。



初代ゴジラ「お前・・・!」
ザウルス「ちょっと話を止めて、呉爾羅を見ろよ・・・ゴジラさん。たとえ正論でも、それが誰かを傷付けたら、意味がないだろう?」



初代ゴジラの肩を掴むゴジラザウルスの手の力は強く、痛みすら感じる程だった。
初代ゴジラは直ぐ様に察した。
あの温厚なゴジラザウルスが、呉爾羅の為に怒っていると。



最珠羅「それからお前にはまだ話していなかったが、呉爾羅のもう一つの正体・・・それは戦争の犠牲者と、戦争に参加した英霊達の集合体だ。」
初代ゴジラ「何だと?」
最珠羅「お前はそうして姿無き者達の意志の代弁者をしているのだろうが、こちらにも代弁者はいる。こっちの代弁者の事も・・・考えて欲しい。」
初代ゴジラ「・・・お前の中の者達は、何と言っている?」
呉爾羅「・・・お前と同じ人もいれば、違うって人もいますし、騒ぎ立てないでって人もいれば、何も言わん人もいよる。」
スペース「オレは人間否定派だ、よって初代の言う事自体は正しい。」
シン「ちょっと、スペゴジ!」
スペース「だが・・・お前のその強引な主張は気にいらない。ゴジラ同士で争ってまで、主張する事では無い・・・オレはそう思うだけだ。」


ラゴス・ゴジラ――アニキ・・・
きっと前にオレとJr.パパが言い合いになったり、親父との戦いがあったからそう言ってるんだよな・・・
気に入らないやつは誰でも見下すけど、ゴジラ一族の事は大事にしてるし。
なら、オレに出来る事は・・・!


魏怒羅「・・・本当にめんどくさいよな、呉爾羅って。だからって誰も代わってやれないし、辛いよな。」
初代ゴジラ「・・・」



いつの間にか起きていた魏怒羅も、相変わらずの起きたてこもり声で一言そう言うが、二重まぶたの瞳が完全に見開かれていたのが、彼が今真剣な状態なのを示していた。
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好釦