ラゴス島の主を求めて・・・







初代ゴジラ「・・・ここを抜ければ、『あいつ』がいる。」



初代ゴジラは後ろを黙らせる為に一旦停止し、おもむろに目の前の洞窟を指差す。
気付けば辺りにはなぎ倒された木々があちこちに転がっており、ここで争いがあった事を無言で示していた。



最珠羅「これは・・・人為的な破壊の後か。」
ラゴス・ゴジラ「今は全然そんな事ないけどさ、昔のオレ達の世界って、こんな感じだったのかな?」


呉爾羅――・・・なんでだろ?
こういう光景を見慣れてる気がするのって・・・
俺の中にいる人達がずっと見て来た光景だから、なのか・・・?


初代ゴジラ「『あいつ』はこの奥だ。行くぞ。」



黙々と洞窟に入って行く初代ゴジラに続き、続々と入って行く面々。
少し気が滅入りそうになりながらも、足を進める呉爾羅と、この先にいる「彼」の昔の姿を想像する「‐」モスラ。



「‐」モスラ――・・・あの時会った、あのゴジラの昔の姿・・・
やはり、テンションの低さなら誰にも負けないくらい、だんまりとしているのでしょうか?
それともかつてのバランのように、何者も憎んでいらっしゃるのでしょうか・・・?


初代ゴジラ「この先だ。おい、今かえ・・・」
???「あっ、おかえりー!」



初代ゴジラの声をかき消し、聞こえたのは朗らかで若々しい声。
それは駆け足の音に変わって洞窟中に反響し、すぐに収まった。



???「帰りが遅いから、俺も行こうと思っていたんだけど・・・ああ、君達もおかえり。」
ラゴス・ゴジラ「よっ、ただいま。」
シン「ただいまー!」
「‐」モスラ『・・・えっ?』



部屋に現れたこの青年を見て、「‐」モスラの表情はまさに「鳩が豆鉄砲」の言葉が相応しいものになった。
ベージュと国防色の軍服に、首の後ろを布で覆った同じ色の帽子。
それはまさに戦時中での日本兵の服装であり、手には迷彩色の銃剣が握られていた。
しかし、そんな事よりも「‐」モスラがこんな表情になった理由、それは・・・



???「それにしても、今日は客人が多いね。君達もラゴスみたいな感じの客?」
初代ゴジラ「そうだ。この女は異世界から、この連中は未来から来た怪獣らしい。」
???「へぇ~、そんな所から遠路はるばるお疲れ様。まぁ、おしゃべりしながらゆっくりしていってよ。俺やゴジラさんみたいなのがこんなにもいて、嬉しいな。」



あまりにも先程のイメージから剥離した、青年の爽やかな姿であった。
ようやく正気を取り戻した「‐」モスラは密かにシンに一笑されている事にも気付かず、青年に向かって歩み寄って行く。



???「こんなの予想してなかったから、差し入れとか用意してなかったな・・・ごめんだけど、飲み物は少し待って。」
「‐」モスラ『あ、あの・・・お聞きしたい事があるのですが・・・』
???「君が異世界からの客人だっけ?また名前も聞いてないけど、何?」
「‐」モスラ『貴方・・・誰?』






???『・・・すっかり、深緑の中か・・・』



一方、島の別の場所の森を歩く、一人の男がいた。
熊避けの鈴と赤い房が垂れた、肩幅はある大きな三度笠と、風模様の着物を着た赤茶色のポニーテールが目を引くこの男が、「‐」モスラのお尋ね人の一人であるバラン。
その旅人の風体にはいささか不釣り合いである、人間界のハンドバックを右肩に乗せながら、バランはしきりに辺りを見渡している。



バラン『・・・先程は確かに感じたのだが・・・見失ったか。あの感覚、まるで非常に近しい存在を見掛けるかの様だった・・・』


バラン――・・・もう暫く捜索したい所だが、既にモスラを見失ってしまっている以上は、止めるのが懸命か・・・
道は大体記憶している。後はモスラと出会るかどうか、だな・・・



あくまで動じずにバランは笠を上げ、鈴を鳴らして房を揺らす風の往くがままの方向へと、歩いて行った。
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好釦