怪獣今昔物語集
真夏のとある日の昼。
インファント島の砂浜・・・
ハルナ『アンバーにユウミ、今日は遠路はるばるここまで来て下さって、感謝しますわ。』
アンバー『いえ、わたくしもインファント島に一度は伺いたいと心より思っていました。なのでまたと無い機会を作って頂き、こちらも感謝致します。』
ユウミ『まぁ、オレならこれくらいの距離は速攻だけどよ。』
ハルナ『さて、この通りわたくしが最初から『アクア』体になっている・・・と、言う事で今日はこの世界の女性怪獣だけの秘密の海水浴、として来て頂きましたが・・・ちゃんと、水着を着て来られましたわね。』
アンバー『はい。恥ずかしながら、穂野香のいない海水浴は初めてでして・・・この水着は、穂野香に選んで頂きました。』
ハルナ『アンバーのイメージを崩さない、フリルが一杯で素敵なワンピースタイプの水着ですわね~。流石はイマドキ女子の穂野香ですわ♪それでユウミ、貴女の水着はどうですの?』
ユウミ『そりゃ、自分で買ったぞ?一回樹と選びに行ったんだけどよ、あいつ恥ずかしがって使い物にならなくなっちまって・・・』
ハルナ『確かに、心は男性の樹には少々お辛いかもしれませんわね。その結構露出が高めで大胆なビキニタイプの水着も、あの子が選びそうに無いですし・・・それにしても、前々から思っていましたが・・・貴方、胸も尻も中々にいいモノをお持ちですわね?』
ユウミ『怪獣の姿の時の体型通りなんだから、仕方ねぇだろ?それに、デカいチチはいいママの証だしよ♪』
ハルナ『・・・何だか、複雑ですわ。』
アンバー『ユウミは厳密には両性で、単位生殖を想定して生み出されましたから、ある程度身体の部位の操作が可能でして。なので・・・だ、男性器が無いだけ、まだ・・・』
ハルナ『・・・ゑ?』
ユウミ『あぁ、チ〇コなんかぶら下げても邪魔なだけだから出さねぇって。あっても急所が増えて邪魔なだけだし、つうかオレは樹のママなんだからチ〇コとかいらねぇし・・・なら、チチがある方がいざって時のクッションにもなるからいいだろ?』
ハルナ『』
アンバー『な、なんとはしたない言い方を・・・!もう、ユウミったら止めて下さいっ!』
ハルナ『・・・・・・
そっ、それにしてもアンバーはユウミとは正反対の慎ましくも美しい体型で、羨ましいですわー。まぁ、着物は慎ましい体型の方が良く似合うと言いますし、普段のアンバーを見ているとわたくしも同感ですわねー。おほほほほ・・・』
ユウミ『こいつ、話反らしやがったな・・・』
アンバー『貴方があのような、はしたない言葉を使うからです!ハルナ様には少しばかり、刺激が強かったのです・・・ユウミが失言を溢してしまって申し訳ありません、ハルナ様・・・』
ハルナ『失言?それは一体何の事ですの?わたくしは知りませんわよー?』
ユウミ『お前、まだしらばっくれる気か!?つうか、それで上手くしらばっくれてるつもりかよ!』
アンバー『ユウミは落ち着いて下さい・・・!話を戻しまして、そう考えるとハルナ様はわたくしとユウミのちょうど間を取ったような、非常に均整の取れた体付きだとわたくしは思います。』
ユウミ『あー、確かにな?オレのチチがどうとか言ってるけど、ハルナだって十分あるじゃねぇか。』
ハルナ『えっ?そうですの?』
ユウミ『ペッタンコのアンバーに比べたら全然だろ。つうかお前の体型でとやかく言う奴なんて、どうせアニメに出て来るチチとかケツとかが無駄にデカいのが好きなスケベ野郎なんだ、勝手に言わしとけって。』
アンバー『ユウミは相変わらず多少乱暴な言い方をしていますが、周囲からの意見に心を乱される必要はありません。批判も称賛も、あくまで他人の感情・・・本当に大切なのは、自分がどう在りたいか。わたくしはそう思います。』
ハルナ『ユウミ・・・アンバー・・・貴女達はやはり、素敵な女性ですわ・・・!』
ユウミ『ってかよ、そんなにオレみたいな身体になりてぇならホントにママになっちまえよ。ママになったら自然とチチもデカくなるんだろ?誰か、知り合いにアテはいねぇのか?』
ハルナ『・・・あり得ませんわね。ゴジラ、バラン、バラゴン、アオイ、リキ・・・うーん、誰ともお付き合い出来る想像が付きませんわ・・・』
ユウミ『まぁ、女っぽいアオイとかオッサンのリキは分かるけどよ、他の奴もダメか・・・じゃあお前、どんなヤツとなら付き合っていいんだよ?』
ハルナ『そんなの、少なくともわたくしぐらい強くて、わたくしぐらい優しくて、わたくしぐらい礼儀を弁えられて・・・』
ユウミ『ストップ!お前、理想高過ぎって言うか条件多過ぎなんだよ。そりゃ、いつまで経っても相手なんか現れねぇわ。』
ハルナ『なっ・・・!?あ、貴方、ほんとズバリ言いますわね・・・お得意の超音波メスのように、切れ味抜群ですわ・・・!』
アンバー『まぁまぁ、ユウミもそれくらいで・・・それにしても、もっと他の方からのご意見も伺いたい所なのですが・・・本当にこの世界には、わたくし達以外に女性怪獣はいらっしゃらないのでしょうか・・・?』
ハルナ『以前、バランと共に会ったネブラと言う怪獣はどうなのですか?見た目は女性のようだったのでしょう?』
アンバー『ネブラ様は、あくまでかつて親しくしていた多紀理様と言う人間の女性の姿を参考にしているだけで、あの方は厳密には性別を超越した存在です。なので、女性怪獣に当てはまるかどうかは・・・』
ハルナ『性別を、超越?』
ユウミ『つまり、オレみたいなヤツって事か?』
ハルナ『それは何だか、違う気がしますわね・・・?まぁ、貴女がそこまで心を許していらっしゃるのなら、一度わたくしから出向いてお会いしてみても良さそうですわね。』
ユウミ『んで、他の女怪獣の件だけどよ・・・ダメだ、戦った事のあるヤツにも女怪獣がいねぇ・・・!この世界、女怪獣少な過ぎんだろ!』
アンバー『確かにそうですね・・・敵対相手にすら、女性怪獣がいないとは・・・』
ハルナ『つまり、女性怪獣は現時点で本当にわたくしとアンバーとユウミだけ、と言う事なんですの?この男女不平等さ、わたくしどうも許し難いですわ・・・!ただ、「スピカ」を加えるくらいなら、まだ・・・』
アンバー、ユウミ『『スピカ?』』
ハルナ『貴女達もご存じだと思いますが、数年前に地球を侵略しようと宇宙から来襲した「ギドラ一族」、そのギドラ一族を統率する「王」の一体である「女王」こと、クィーンギドラの本名が「スピカ」なのです。』
ユウミ『あぁ、あのインベーダー野郎共か。てんで日本に近寄らねぇから、オレ達四神も手出ししずらかったんだよなぁ・・・』
アンバー『その「女王」と、ハルナ様はこの島を守る為に激闘を繰り広げた、と伺いましたが・・・「女王」ならば確かに、女性怪獣ではありますね。』
ハルナ『一応、ですわよ?同じ女として、わたくしはあの超ふしだら女を絶対に認めるわけにはいきませんわ!いいですこと?あの女、普段からユウミのこの水着くらい露出の高い悪趣味な服装だっただけでなく、終始わたくしを「いたぶり甲斐のある玩具」扱いして、下品な高笑いをしながら何度も何度もわたくしに鞭を打つ、最低の性格なんですの!そして何より、他のギドラ一族を生み出す為に自分の鱗を放つ際・・・なんと自ら服を脱いで全裸になると言う、ストリップ紛いの事までなさるんですのよ!』
アンバー『ふ、服を脱ぐ!?』
ユウミ『とんだア〇ズレって事か?インベーダー野郎だけあって、感覚の違いまでダンチってワケかよ。』
アンバー『もう、貴方はまたそんなはしたない言葉を・・・止めて下さいっ!』
ハルナ『別にあの女相手なら、そのはしたない言葉も問題ありませんわよ?なにせ、はしたなさ過ぎる女なのは天地が引っくり返っても変わらない事実なのですから?』
アンバー『ハルナ様まで・・・とにもかくにも、侵略者かどうかに関わらず死人を冒涜するのは、これ以上は止めましょう。わたくし達は世界を守る「守護神」なのですから。』
ハルナ『はっ、あの時の事を思い出してつい・・・申し訳ありませんわ、アンバー。わたくしも「守護神」にして淑女にも関わらず、はしたなかったですわね・・・』
ユウミ『え?お前、言う程の淑女か?』
ハルナ『失礼な、わたくしも立派な淑女ですわよ?一目で見て分かりませんこと?』
ユウミ『いや、バニーガールみたいな水着を着てんのにそれはねぇだろ。つうか、それ水着じゃなくてバニー服なんじゃねぇの?』
ハルナ『な、何をおっしゃるのですか!?バニーガールならお尻にウサギの尻尾が付いていたり、ウサ耳カチューシャが付いているでしょう?ですが、そんなの無いではありませんか!ほら、ちゃんと確認なさい!』
ユウミ『そりゃ、そんなのねぇけど・・・形がな?ってか、やっぱ淑女はそんなの着ねぇって。』
ハルナ『そんなのとは何ですか!遥とも相談して買った、この水着を・・・』
アンバー『二人共、口論はそこまでに!ハルナ様の水着がハルナ様に良くお似合いなのは事実ですし、遥様と相談されて買われた物なのでしたら、ハルナ様への水着への侮辱は遥様への侮辱にもなります。わたくしと違って、心から思った事を誰に対してもはっきりと言えるのはユウミの良さの一つだと思っていますが、時には謹んで下さい。』
ユウミ『・・・はぁ、分かったよ。すまねぇな、ハルナ。アンバー。』
アンバー『ハルナ様も淑女だと仰るのでしたら、もう少し感情的な振る舞いは抑えて下さい。無論、その感情性豊かな所こそが一緒にいるだけで楽しくなるハルナ様の長所ではありますが、ユウミのように逆に作用してしまう事もあるので、どうかご一考の程をお願い致します。』
ハルナ『わ、分かりましたわ・・・ユウミ、それにアンバー。申し訳ありません。』
アンバー『・・・これで喧嘩両成敗、ですね?それでは、改めて海水浴を楽しみませんか?わたくし達が集まった目的は、この美しいインファント島の海を心行くまで堪能する事なのですから。』
ユウミ『忘れてねぇって。だからこの辺りのオススメポイントとか教えろよ、ハルナ!』
ハルナ『勿論ですわ、ユウミ!では二人共、わたくしに着いて来て下さいませ!』
アンバー『はい、心得ました♪』
ユウミーー・・・ホント、昔から変わんねぇよな。アンバーのこう言う、いつだって相手の事までしっかり考えるトコ・・・
オレの方が強いっていつもお前は言うけどよ、オレからすりゃお前の心の強さには、いつだって敵わねぇや。
ハルナーーアンバーのこう行った所が、様々な男性が彼女に心惹かれる理由なのでしょうね。ぐうの音も出ない程に、納得ですわ。
そしてこうして、同じ「モノ」同士で自由な一時を楽しめる事こそが・・・遥達といる時とはまた違う、今までのわたくしでは出来なかった、最も素晴らしき事ですわね♪
それにしても・・・本当にこの世界には、わたくし達以外に女性怪獣はいらっしゃらないのでしょうか・・・?
あともう一人くらい、それこそこうしてわたくし達と海水浴を楽しめるような方が、いて欲しいですわね・・・
終