ラゴス島の主を求めて・・・





???『もう!最悪ですわ!ちょっと目を離した隙にバランがいなくなりますし、地図もインファント島に忘れてしまって・・・どうして、こうなりますの!』



同刻、同じ林の別の道をいささか周りの風景と合わない、天女のような女性が苛立ち気味の歩調で歩いていた。
透明な羽衣で止めた橙色の薄着を着た、黄色い髪の女性。
彼女はこの世界とは別の世界から来た、守護怪獣のモスラ。
彼女の手にある白い封筒が、彼女もまた招待された身である事を証明しており、同じ世界から連れて来た仲間の山神・バランとははぐれてしまったようだ。



「‐」モスラ『ここにゴジラもいれば良かったのですのに、チャイルドと一緒に志真と会う約束があるなんて・・・何故この前の時のように、チャイルドと一緒に来て下さらなかったのですか!貴方がいれば、とりあえずわたくしが独りきりになる事はなかったのですわ!』



行き場の無い不満を、この場にいない「‐」ゴジラに対して半ば八つ当たり気味にぶつけつつ、「‐」モスラは当ても無く野良道を進む。
こういう時に、お目付役の小美人がいれば・・・
いつもは自分の自由を奪う、少々厄介な存在である(と勝手に思っている)小美人の事を、今はとても必要に感じるモスラであった。



「‐」モスラ『・・・とにかく、今は早くバランと合流しませんと・・・んっ?この先は別れ道ですのね・・・』



と、彼女の視界の先に左右に分かれた、少し大きめのY字形の道が現れた。
歩調を緩やかにし、「‐」モスラは足を動かしながらどちらの道に行こうか一考する。



「‐」モスラ『・・・こういう時は、東に行くのが良いですわ!』



自己流の勘を信じ、再び足を早めて「‐」モスラは右寄りの道に向かって行く。
しかし、その足はすぐに止まった。



最珠羅「こら、呉爾羅!勝手に進むな!」
呉爾羅「だってもう十分は立ち止まってんじゃん!もう待てねえ!この道を行けば~!何処まで行くのか~!迷わず進め・・・」
最珠羅「だから待てと言っているのが・・・」



「‐」モスラ『西、ウェストなんてあてになりませんわ!やはり東、イーストの方が良いに・・・』



左の道に行こうとして突如固まる呉爾羅と、それにつられてやはり固まる最珠羅の前には、仰天の表情をしながら立ち止まる「‐」モスラの姿があった。
別れた道は、2つの世界をも交差させていたのだ。






「‐」モスラ『そう・・・貴方達も、怪獣なのですわね。』
最珠羅「しかし、別の世界にも同類がいるとは驚きだな・・・それに、君も『最珠羅』とは。」
「‐」モスラ『残念ながら、わたくしは漢字表記ではありませんわ。それにモスラの同類でしたら、また違う世界に何人もいらしてよ?』
呉爾羅「ほ、本当かそれ!?」
最珠羅「何故お前が驚くんだ。」
呉爾羅「いやぁ、最珠羅が何人もいるのかって思うと・・・うぷっ。」
最珠羅「だから、何故吐きそうになる!私への嫌味か!」
「‐」モスラ『ま、まぁそうですの。以前にも違う世界に迷い込んだ事がありまして、その時にお会いしましたわ。勿論、この世界にも他のモスラがいらっしゃいますけど・・・貴方は違いますの?』
最珠羅「私は他人の空似だ。『最珠羅』であって『モスラ』ではない。ただ、元は同じだったかもしれないが・・・」
「‐」モスラ『なるほど・・・貴方は「亜種」とも言える存在かもしれませんわね。』



三人が出会って数分が経ち、彼らはそれぞれ選ばなかった方の道を歩いていた。
やや戸惑う最珠羅に対し、異世界の怪獣と話す事の経験のある「‐」モスラが最珠羅へ上手く話し掛け、特に問題無くコミュニケーションがとれていた。
もっとも、呉爾羅の方は最初から気にしていない様子だが。



「‐」モスラ『そうそう、わたくしは今回「ラゴス島の主」に会う予定なのですが、貴方達もそうですの?』
最珠羅「そうだ。私と呉爾羅、それに私の仲間達もその用件で呼ばれている。突然この封筒が来た時は驚いたが・・・」
「‐」モスラ『貴方達も仲間とご一緒なのですか・・・はっ!仲間と言えば、わたくしの連れを見かけませんでしたか?バランと言う、旅人の様な格好をした者なのですが・・・』
最珠羅「えっ?君、バランさんと知り合いなのか?」
「‐」モスラ『貴方こそ、バランをご存知ですの!?』
呉爾羅「知ってるっつーか、俺と最珠羅の仲間だぜ。多分、もうすぐ来る・・・かな?」
最珠羅「疑問系にするな。来るとはっきり言っていただろう。」
「‐」モスラ『そうですか・・・なら、よかったですわ。』


――しかし、バランも別世界の怪獣と合流があったなんて、意外ですわね?
わたくし達に言って下さっても良かったですのに、薄情ですわ。
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好釦