Ghidorah Tribe, the Three-Headed Monsters







数日後、カノープス・スピカはサテライツと共に標高1000mは有に超える巨大な山脈の麓で、セルヴァム達と殲滅戦を繰り広げていた。
この戦いはスピカがカノープス達と合流してからあまり時間を置かず、スピカに奇襲を仕掛けた事への報復として行ったものであり、以降休み無く戦いが続いているが、何千・何万年と生きるギドラ一族にとって、人間の感覚に置き換えれば数日間の出来事はたった数十分にも満たない。



スピカ『ねぇ、カノープス?どっちが多くアレを狩れるか、競争しなぁい?勝った方がぁ、あの山を貰えるって事にしましょ♪』



バレエのように宙をくるりと舞いながら、今度は鞭状に変化させた光剣を振るい、しなやかにだが力強くセルヴァム達を捉え、そのまま即座に胴体を両断しつつ、スピカはカノープスに問う。



カノープス『・・・またか。何百回目だと思っているんだ?スピカ。』



カノープスはスピカからの、この星に来て何百回は繰り返された問いに呆れた様子で返事をしながら、大太刀を地面に突き刺して自身の周囲の重力を何倍に増幅させ、近付くセルヴァム達を大地に叩き付けては圧壊させて行く。



スピカ『だってぇ、何か面白みが無いと雑魚狩りなんて飽きて来るじゃなぁい?』
カノープス『・・・これは遊びではないぞ、一応な。』






アクア『ん?母とカノープス様が、どうやら雑魚狩りの数で勝負するみたいだぞ?自分達も、どちらが勝つかやらないか?』
ソルジャー『何を言っているのです!我らがそんな事をしている暇は無い!』
ナイト『自分は面白いと思ったがな?自分は母に賭けるぞ!』
デス『自分は、当然カノープス様だ。』



サテライツもまた、始まってもいない勝負の行方で賭博の真似事を始める。
彼らにとって、もはや殲滅戦は退屈で単調な物事・・・流れ作業にも近いものであったのだ。






???『相変わらず、退屈な戦いを繰り広げているな?者々よ・・・』



・・・が、その怠惰な争いは天の声と雷鳴、そして降り注ぐ三本の電撃によって一変する事となった。
電撃は不規則な動きで戦場を走り、捉えたセルヴァムもサテライツ達も十把一絡げに光に変え、消し去って行く。



グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・



ソルジャー『ぎゃあ!!』
アクア『ひでぶ!?』
デス『ぐあああっ!!』
ナイト『なん・・・!!』



スピカ『もぉ、シリウスったら我が子まで巻き添えじゃなぁい!』
カノープス『王の帰還か・・・』




天の声が聞こえるや、即座に電撃が届かない範囲へ飛んだカノープス・スピカは声と電撃の主を察し、悲喜混じる様子で空を見上げる。
その刹那、雲を引き裂き雷を纏ったまま戦場へと降り立ったのは、両手に黄色いシミターを持ち、頭上に星々輝く宇宙の姿をそのまま貼り付けたような紋様の刀身の魔剣を浮かべた、頭頂部から生えた二又のスプライトヘアー・腰まで伸びたポニーテール・ローグフロントの前髪が龍の頭を象る、金色の髪と屈強な肉体を持った、不敵な笑みの男・・・1908年のツングースカ大爆発の日に地球へ飛来した、招かれざる地球外生命体であった。
そして彼こそが、ギドラ一族の頂点に君臨する最強の存在にして、絶対なる「王」・・・キングギドラ。
またの名を、「シリウス」。
今ここに「ギドラ三王」と称される、約数億年前に天の川銀河から最も近い「モンスター銀河」でほぼ同時に産声を上げた、宇宙最強の一族を統べる宇宙最強の三兄弟が、一同に会したのであった。



サテライツ『『『『お、王!?』』』』
シリウス『久しいな、カノープス。スピカ。俺様が下見に行っていた間にこの星を支配しているものと思っていたが、まだなのか?』
スピカ『仕方ないじゃなぁい?あの在来種、無駄に数が多いし無駄に抵抗して来るんだからぁ・・・』
カノープス『我輩達が不甲斐なかったのは、事実だ。しかし、あの群れを全滅させれば多少マシになるだろう。』
シリウス『・・・あの下等種共を、全滅させれば良いのだな?』



シリウスは不敵な笑みを浮かべたまま、両手を伸ばしてシミターの剣先を交差させると、頭上の魔剣が独りでに動いてシミターに重なり、三つの刀身が一つになる。
すると、三つの剣に夥しい量の雷が収束されて行き、目を背けてしまう程の眩い輝きを放つ巨大な雷の球体が出来上がった。



スピカ『ちょっと、いきなりそれするのぉ!?我が子達、消えたくなかったら逃げなさぁい!』
カノープス『上機嫌なのか・・・余程、良い場所が見付かったようだな。』
シリウス『そう言う事だ・・・醜き者共よ、受けるがいい・・俺様の「王の雷」をな・・・!
セイ、リオス!!』



暫し後、シリウスの叫びと共に放たれた光球は一直線に突き進み、数千ものセルヴァムの群れも、逃げ遅れたサテライツも、大地も木々も全てを巻き込みながら閃光の中へと等しく消滅させて行き、山脈に直撃。
まるで隕石が衝突したかのような何百mものクレーターを山肌に残し、光球が漸く消えた後には、文字通り何も残らなかった。
これこそが、「王の雷」とシリウスが呼ぶ必殺の一撃「セイリオス」・・・ギドラの「王」の力であり、命からがら生き延びたサテライツは目の当たりにしたシリウスの力に誰も等しく怖れを成し、腰を地に付け震えていた。



ナイト『こ、これが「王の雷」・・・!』
ソルジャー『シ、シリウス様の・・・ち、から・・・!?』
デス『な、なんて圧倒的なんだ・・・!!』
アクア『ひ、ひえええっ!!』
シリウス『ふぅん・・・逃げおおし、向かって来る者すらいないのか?どこまでも退屈な存在だな。』
スピカ『そんな事より、我が子達も巻き込まないでって言ってるでしょぉ!何億回言ったら分かるのよぉ!』
シリウス『また貴様が作ればいいだけだろう?それが貴様の、「女王」の役割ではないのかと何兆回言ったら分かる?』
スピカ『作れ、って言うけど妾もすぐに出来るわけじゃないし、あの子達はあんただけのモノじゃないんだけどぉ!なのにあんたったらぁ・・・!』
カノープス『止めろ、スピカ・・・シリウス、確かにそうかもしれないが兵が多い方が支配が早まるのもまた事実だ。お前の攻撃で無駄な損耗が出るのは、やはり我輩は感心しない。』
シリウス『俺様と貴様とスピカ、「王」さえいれば問題なかろう?下等種共は存在そのものが目障りだが、時間さえあれば根絶やしに出来る。こいつらの存在意義は露払いか、俺様の盾でしかないからな・・・何、気にする事はない。』
カノープス『・・・承知。お前は絶対なる「王」だ、逆らう気は無い・・・』



口では「王」への服従を誓いながら、その堅い表情に僅かな迷いを見せるカノープス。
「一族で最も強い」と言うシンプルかつ圧倒的過ぎる一点のみで「王」となっている眼前の兄であり、独裁者・・・シリウスには決して敵わない事を、億年に渡って思い知らさせ続けているからこそ一族の二番手となっている彼には、これ以上の反論は不可能であった。



ソルジャー『盾、か・・・』
アクア『ひど・・・しどいっ!』
ナイト『確かに自分達は、王に仕える事こそが使命だが・・・』
デス『お前達二本足は数は多いが、減る数もまた高いからな・・・』
スピカ『大丈夫よぉ、我が子達・・・妾とカノープスは、あんた達をちゃぁんと同じ一族として大事に思ってるからねぇ?』
サテライツ『『『『は、母・・・!』』』』



同様の理由で、一族の三番手に位置するスピカに出来る事は、シリウスの言葉に萎縮する「我が子達」を慰める事だけであったが、それでも彼らにとって等しく自分の生みの親である愛しき「母」からの言葉は、「王」からの圧力の言葉に並び立ち、和らげる程の力を持っていた。
ちなみに、カノープスとスピカは全く同じタイミングでこの宇宙に生を受けたが、スピカは自分の名前はシリウスから繋がり、カノープスへと繋がる・・・所謂「しりとり順」を理由に自分はカノープスの姉だと言い張っており、カノープスも彼女相手に反論しようと徒労の無駄に終わる事をまた思い知らされ続けているーー若しくは、兄の独裁・暴言に比べれば彼女の発言は可愛気のある只の我が儘に過ぎないーー事から、この順番を受け入れている。
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好釦