Ghidorah Tribe, the Three-Headed Monsters







その頃、カノープス達がいた野原から千里の先は離れた所にある、黄土色の大地が広がった藍色の湖の畔(ほとり)で、セルヴァムの大群とサテライツが激しい戦いを繰り広げていた。



グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・



ソルジャー『『『『てあーっ!!』』』』



ソルジャーギドラはセルヴァムより少し強い程度の戦力である事、武器が殺傷力もリーチもあまり良くない短剣である事から苦戦を強いられていたが、数の多さを生かして一対二に持ち込んだり、追い詰められた仲間を庇ったり加勢したりする事で、ほぼ互角に戦いを進めていた。



アクア『『『ゴボボッ、ゴボボボ・・・』』』



アクアギドラは主に耐久性の高さを生かし、セルヴァムの攻撃を受け止めながら銛で反撃する戦法を取っていたが、何より自分達が最も力を発揮出来る水中戦が可能である湖の畔が戦場だった点を生かし、セルヴァムを湖に引き摺り込んでのワンサイドバトルに持ち込んでいた。



デス『『ぬんっ!!何、手伝え?お前らでどうにかしろ!』』



デスギドラはアクアギドラとは逆に、植物類があまり無い湖の畔での戦いである事から、サテライツの中でアドバンテージが取れる筈のエネルギー補給が出来ずにいたが、植物類に近い身体構造をしているセルヴァムに高い威力を発揮する火炎攻撃と自慢の斧を武器に、他のサテライツに劣らない活躍を見せていた。



ナイト『『『フッ、雑魚共!空中で自分達に勝てると思うなぁ!』』』



ナイトギドラは得意の空中戦と、リーチが長く広範囲に攻撃が届く武器である槍の相乗効果によって、セルヴァム達を苦も無く狩って行き、サテライツの中で一番の戦果を上げていた。



グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・



しかし、セルヴァム達もサテライツの何倍もの数を誇るその物量で強引にサテライツを押し込み、休む間も与えずに攻撃を続ける事でサテライツに実力で劣りながら、一進一退の攻防戦を続けていた。



デス『ちっ、こいつらキリが無いぞ!』
ナイト『だが所詮は雑魚、狩り続ければいつかはいなくなるわ!』
ソルジャー『・・・はっ!向こうにも群れが!』
アクア『ゴボボーッ!?』



セルヴァムの物量差はサテライツの注意力を散漫にし、その隙を突いて翼と足の無いさながらワームのような形状のセルヴァムの一群が、洞窟の中・・・サテライツがセルヴァムを絶対に近付けんとしていた「不可侵領域」へと侵入してしまった。



サテライツ『『『『まずい、母が危ない!!』』』』






グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・



洞窟内に入ったセルヴァム達は、真っ直ぐに洞窟の奥へと這い進む。
その先に、自分達を滅ぼす存在・・・カノープスにも匹敵する者がいる事を、本能で察知しているからだ。



???『んっ?あらぁ、さっきから随分外が喧しいと思ったら・・・あんた達、そんなに妾(わらわ)と戯れたいのぉ?』



そんな洞窟の奥で、セルヴァム達が自分を狙って迫っている事を把握していながらまるで逃げる様子も無く、さながら涅槃像の如く右手を支えにし、極彩色に染まった数メートルはある巨大な植物の葉をシーツ代わりにして横たわる、一人の女がいた。
銅色の肌と熟れた豊満な肢体、黄色く縁取られた白いビキニアーマーと、踊り子を思わせる前後に長い布が付いた深紅のスカートのみを着た露出度の高い艶姿、カノープスと同じ龍・蛇の刺青に加え、ラグジュアリーを彷彿させる形をした胸元・腹・足の幾何学模様、膝まで届きそうな程に長く二又の尾のように太いツインテールと、胸を覆える長さの揉み上げのパッツンヘアー、朱混じりの橙色の髪にこめかみから生えた一対のベージュカラーの角、頬に流れる三つの爪のような形の赤い紋様と黒い口紅が塗られた唇、そして頭に着けた高貴なティアラが目立つ、蛇を想起させるオレンジの眼。
彼女こそ、ギドラ一族の「王」の一体・・・サテライツの生みの親にして一族の「女王」たる、クィーンギドラの「スピカ」であった。



スピカ『まぁ、ここしばらくはちゃんと体を動かしてなかったし・・・あんた達の戯れに、特別に付き合ってあげるわぁ♪』



スピカは涅槃の体勢を解いて起き上がり、自ら目掛けて進んで来るセルヴァム達を眺めながら、赤く長いスプリット舌で妖しく唇を舐めると、腰の両脇に付いた筒状の物を両手に持つ。
すると、筒の先端からオレンジ色の光が走り、長剣の様な形状で固形化した。
カノープスが大太刀使いであるように、スピカは二刀流の光剣使いだったのだ。



スピカ『行くわよぉ・・・アルクトス!デネボラ!』



愛用の光剣の名前を叫びながら、スピカは嬉々とした表情でセルヴァム達へ向かって行き、体を捻らせ一回転しながらセルヴァム達を光剣で切り刻んで行く。
それはまるで、スピカが美しい演舞を披露しているかのような光景であった・・・が、演舞を終えた後に残ったのは観客からの拍手では無く、無惨に四散した物言わぬセルヴァム達の死体だけだった。



スピカ『・・・あらぁ、もう終わり?戯れにもなってないんだけどぉ・・・何だかまだまだ物足りないし、外の我が子達でも助けに行こうかしらぁ?』



スピカは溜め息を付きながら、足元に転がるセルヴァムの死体をおもむろに洞窟の外へ目掛けて蹴り上げ、自身も悠然とした足取りで外に出る。



サテライツ『『『『は、母!?』』』』
スピカ『我が子達?邪魔者共の始末に手こずってるみたいねぇ?』
サテライツ『『『『も、申し訳ありません!母!』』』』
ナイト『母のお手を煩わせるつもりは無かったのですが、奴ら数だけは多く・・・!』
ソルジャー『我らサテライツ、最大の不覚です!!』
デス『母、お怪我はありませんか!』
アクア『奴らに寝込みを襲われませんでしたか!?』
スピカ『妾なら大丈夫、だからあんた達は気にしないのぉ。妾も久々に、体を動かしたくなってるのぉ・・・そう言うわけだからぁ、妾と一緒にさっさと邪魔者共を片付けるわよぉ!』
サテライツ『『『『ラー!!』』』』



洞窟から転がって来たセルヴァムの死体によってスピカの存在に気付いたサテライツは、一斉に一旦は怖じ気付きながらも、彼女からの寛大な言葉に発奮し、忠誠の言葉と共に再びセルヴァム達に戦いを挑んだ。



スピカ『うふふっ、その調子よぉ!我が子達!!』



再起したサテライツの猛攻に、数と勢いでは勝っていた筈のセルヴァム達はすぐに劣勢を強いられ、戦うサテライツの間を縫うようにスピカが舞い、女王の剣の舞はセルヴァム達を輪切りにして行く。



グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・


グォジィィィ・・・



女王の存在一つで戦局が大幅に傾き、彼女への恐怖の本能が勝ったセルヴァム達は戦術的撤退を選択。
サテライツとの戦いを止め、一目散にセルヴァム達は空へ逃げて行く。




スピカ『あらぁ、もう逃げちゃうのぉ・・・そっちから仕掛けておいて、逃げるなんてぇ・・・ぜ~ったいにぃ、ゆるさないわよぉ!!』



だが、「戯れ」の一方的な終了を認めないスピカは両手を左右に伸ばすと、さながらフィギュアスケートを披露するかの如くその場で何度も旋回し、光剣から三日月状の光の斬撃を飛ばす。
斬撃はまるで意志を持つかのように、四方八方へ逃げるセルヴァム達を正確に追い、続々と真っ二つにして行った。



ナイト『母に遅れを取るな!自分達も続け!』
アクア『雑魚狩りじゃぁ~!』
ソルジャー『行くぞ!!』
デス『待てぇ!逃げるなぁ!』



サテライツもまた、セルヴァム達を追撃。
殆どが逃亡に意識を取られ、反撃に移れないセルヴァム達は一方的に背中からサテライツの攻撃、もしくはスピカの斬撃を受け、死体へと変わりながら湖畔に落ちて行く。






カノープス『・・・やはり、加勢する必要は無かったか。』



程無くして、カノープス達が到着した時には既にセルヴァム達は全滅していた。
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