Ghidorah Tribe, the Three-Headed Monsters
それから、数十年の月日が経ち・・・
地球のあちこちで、人間同士の血で血を洗うような争いが起こっていた中、太陽系を離れた先の「とある星」でもまた、星を揺るがす争いが起こっていた・・・
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
ここは、地球から約11.9光年離れた先にある、地球に似た大きさ・環境を持った星・・・所謂「居住可能地球型惑星」の一つにして、最も地球から近い「地球型惑星」である、後に「くじら座τ(タウ)星e」と名付けられる星。
その星の地表を覆い尽くす、地球に存在しない未知の植物が形成するうっそうとした深緑色の森の上空を、腕の代わりに一対の翼を持った赤い目の漆黒の竜が、何十もの数の群れを成して飛んでいた。
この竜の正体は、怪獣界にもかつて存在し、「破壊の使徒」「悪鬼の使い」と呼ばれていた怪獣・セルヴァム。
無論、この星のセルヴァムは「破壊神」とは一切関係の無い、純粋なこの星の在来種であり、大きさも5m前後くらいのサイズであるが、怪獣を除く全ての地球生物よりも脅威の存在である事に変わりは無い。
???『・・・』
やがて、セルヴァム達は緑で塗り固められた中にぽっかりと空いたように広がる野原にたどり着き、その中央には一人の男がセルヴァム達に背を向ける形で立っていた。
左肩に龍・右下腕部に蛇のように見える黒い刺青が刻まれた、鋼のように鍛え上げられた屈強な全身の筋肉を際立たせる銀色の肌、背中に背負った身の丈はあろう程の長さの一本の大太刀、腰に付いたスカート状の漆黒の装甲、金と紺のボサボサとしたセミロングヘアーとこめかみから生えた一対の銀の角、そして至る箇所に切り傷が走る、口を固く閉ざし彼方を見つめる紅の瞳を持った、この者が歴戦の勇士であると一目で分かる覇気に満ちた顔。
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
???『・・・来たな。だが、幾ら数を揃えようと、我輩には勝てん・・・メラの錆にしてくれる!』
男は背中の大太刀を右手で抜き、左手を持ち手に添えると共に即座に振り返り、目と鼻の先にまで迫るセルヴァム達に刃を振るう。
すると大太刀から重力波が発せられ、セルヴァム達は瞬く間にプレスされたかのように圧縮された後、粉々に砕け散ってしまった。
???『・・・この宇宙最強の生物である、我らギドラ族。その「帝王」たる我輩に、数だけで勝てるなどと思うな!』
そう、男の正体は数億年前に天の川銀河の隣に存在する「モンスター銀河」のとある星に生まれ、それから数多の地球型惑星の文明や在来種を根絶やしにし、資源を貪った挙げ句に星そのものを滅ぼして来た、「星を喰う者達」と恐れられる宇宙最大・最強・最悪の生物・・・「ギドラ一族」。
そのギドラ一族の頂点に立つ、比類無き強さを持った三体のギドラ・・・「王」の内の一体である「帝王」こと、カイザーギドラの「カノープス」であった。
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
グォジィィィ・・・
続けて、先程の一群と同規模のセルヴァム達がカノープスの左右を挟み撃ちにしようと迫る。
だが、カノープスは動揺一つ見せる事無く冷徹な赤い眼でセルヴァム達を捉えると、まず「メラ」の名を冠する大太刀を左へ振りかぶりながら刀身から電撃を放ち、左から迫るセルヴァム達全てを電撃によって炭化させる。
続けて、右から迫るセルヴァム達を一体、また一体と直接刀で力強く切り捨て、胴を両断されたセルヴァム達の亡骸がカノープスの前に積み重なって行く。
グォジィィィ・・・
大量のセルヴァム達も、僅か数体となった・・・が、カノープスが別のセルヴァムを切り捨てた隙を付いて、最後の一体のセルヴァムが上空からカノープスに爪を付き立てながら、勢い良く迫る。
カノープス『・・・無駄!』
しかし、その程度の不意打ちが「帝王」に通用する訳が無く、カノープスはセルヴァムの爪が頭を捉えるその前に、左手でセルヴァムの首を掴んで不意打ちを阻止したかと思うと、そのまま左手からセルヴァムの生命エネルギーを吸収した。
グォ・・・ジィィ・・・!
生命エネルギーを吸われたセルヴァムの体は急激に干からびて行き、暫し後に全ての生命エネルギーを絞り取られたセルヴァムはミイラのように変わり果てた末、死亡。
カノープスは亡骸を無造作に投げ捨て、自らが築いたセルヴァムの死体の山を、表情一つ変えずに睨み付けた。
カノープス『・・・我らに歯向かったばかりに、哀れだな。』
???『『『『カノープス様!ご無事ですか!』』』』
と、そこに他のギドラ族の一団がカノープスに駆け寄って来た。
彼らは「女王」に生み出された、ギドラ一族の兵隊と言える存在・・・一纏めにして「サテライツ」と呼ばれており、人形の球体関節に似た形の関節とV字状のアイシールド、首元程度の長さの揉み上げとショートヘア、カノープスより小さめの角と右目の下のバーコードに似た形の黒い刺青・・・と、どのサテライツも多くの構成要素が共通しているが、それ以外の構成要素の違いで差別化された、四種類の個体に分かれていた。
カノープス『・・・この群れ、お前達に任せた筈だが?何故我輩が、お前達の尻拭いをせねばならない?』
ソルジャー『『『『はい!大変申し訳ありません!カノープス様!』』』』
灰色の髪・肌・アイシールドの、ギドラ族の中で最も弱いが最も数の多い個体である、短剣を武器にしている非常に真面目な性格の「ソルジャーギドラ」。
アクア『『『自分達は、カノープス様なら必ず一網打尽にしてくれると・・・』』』
カノープス『・・・我輩に頼るな、愚か者めが。』
緑色の髪・肌・アイシールドの、主に水中戦や耐久戦に長けた個体であり、銛を武器にしているやや楽観的な性格の「アクアギドラ」。
デス『『全く、これだからお気楽なアクア共は足を引っ張って困る・・・』』
カノープス『・・・同感だな。』
赤いアイシールドに黒混じりの髪・肌の、最も個体数は少ないが植物類の生命エネルギーを吸う、カノープスに近しい特殊能力を持った個体である、斧を武器にしている少々自分勝手な性格の「デスギドラ」。
当然ながら、異世界のデスギドラとは怪獣体の姿以外は一切関係が無い。
ナイト『『『フン、自分達ならそんな真似は絶対にしない!』』』
カノープス『・・・ならば、この群れを我輩に擦り付けるな。』
水色のアイシールドに鉛色の髪・肌の、兵隊ギドラで最も強く空中戦に長けた、槍を武器にしているとても傲慢な性格の「ナイトギドラ」。
「王」の足元にも及ばない力ながら、他の生物にとっては脅威以外の何者でも無い彼ら「サテライツ」の存在もまた、ギドラ一族が宇宙最強の生物と呼ばれる由来である。
カノープス『・・・まぁ良い、それよりスピカの方はどうなっている?あいつなら大丈夫だと思うが、一応状況を把握しておこう。』
ソルジャー『はい!幾つかの群れが「母(はは)」の所に向かったと、自分は聞いています!』
アクア『確か二、三の群れだったらしいですよ?』
デス『曖昧な・・・ちゃんと把握しておけ。』
ナイト『自分達ならまだやれますが、如何致しましょう?』
カノープス『・・・加勢しておくか。行くぞ、お前達。』
サテライツ『『『『ラー!!』』』』
カノープスは大太刀を背中に背負い直すとゆっくりと上空へ舞い上がり、さしずめ軍隊の兵士のように敬礼と了解の言葉を叫ぶサテライツを引き連れ、次なる戦場へと向かって行った。