ラゴス島の主を求めて・・・
???「と~さんが~、よなべ~をして~。」
???「呉爾羅、父さんじゃなくて母さんだ。」
1954年、人間界・ラゴス島。
鬱蒼とした巨木が作り出す林の中を、二つの影が歩いている。
一つは藤色の頭布とマントを付けた、黒髪の青年。
もう一つは袖無しの狩衣に腹帯、額に海色の勾玉を付けた、セミロングの緋色髪の青年。
緋色髪の青年は黒髪の青年の言う事に真顔で突っ込んだが、相手の方は大して気にしていない様子だ。
???「えっ、そうだっけ?まぁいいや。なら次行ってみよう!次は最珠羅の番な。」
???「ど、どうして次は私なんだ!何の脈絡も無いだろう!」
???「いいじゃん、最珠羅の歌ってあんまり聞いた事ないし、減るもんじゃないし!」
緋色髪の青年の言う事を意にも返さない黒髪の青年は、相も変わらずに両手を上げてはしゃぎ、それを見ながら頭を抱える緋色髪の青年。
彼の正体は遥か昔、大和の「くに」を守る為の聖獣と祀られた怪獣「護国聖獣」の一角であり、彼は海の守護神である「最珠羅(モスラ)」。
他には地の守護神の「婆羅護吽(バラゴン)」、天の守護神の「魏怒羅(ギドラ)」がいる。
黒髪の青年は戦争の中で死んで行った数々の犠牲者と、英霊達が一体化した存在である「呉爾羅(ゴジラ)」。
今こそ歴史の闇に埋もれてしまったが、元々はモスラ・ギドラ・バラゴンと共に「火」を司る存在として祀られた身であり、同じく闇に埋もれた存在として「風」を司る「婆羅陀巍(バラン)」がいる。
人々から忘れられながらも、護国聖獣達は互いの交流を絶やす事は無く、今日もその手筈であった。
しかし、本来彼らのいる時間をも超えて二人がこのラゴス島にいるだけでなく、他の仲間がいない理由、それは・・・
最珠羅「とにかく!それは置いておいて・・・ちょうど、十一時か。」
呉爾羅「って言うか、約束の時間って正午だったよな?もっと寝たかったのに、最珠羅と一緒に行って損したぜ・・・」
最珠羅「魏怒羅みたいな事を言うな。そのまま寝て、正午に起きたらどうするんだ。私達は招待されている身だし、遅刻したら時間を超えてここに来る事すら無理なんだぞ。それに約束の時間より早く出るのは、犯罪者の輩でも分かる常識だろう?」
シビアとも言える、最珠羅の真っ直ぐな信条が出たからであった。
やや露骨に不満げな顔をする呉爾羅をよそに、最珠羅は手に持った白い封筒を見る。
乱雑に振り回される呉爾羅の手にも同じ封筒があり、彼らは時間をも超越出来る「何者か」に招待されているようだ。
呉爾羅「けどよ・・・んっ、人生の別れ道だ。」
最珠羅「人生は余計だ。」
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