Pray
・・・おぎゃあ!!
おぎゃあ~!!
おぎゃあああああああっ!!
『・・・ルンフイよ。今日からそなたの王は、儂の息子だ。』
『はい。承知しました、王たるダゴン様・・・』
おぎゃ・・・う~?
『・・・こんにちは。私の王(キング)。』
その日・・・
新たな王が生まれ、
それを私は見届け、
私の王になった。
キコ『ねぇ、ルンフイ様♪ボクと「楽園」デートしないっ?激レアなアルビノのボクと女王のルンフイ様って、きっとお似合いだよ♪』
ルンフイ『・・・残念だけど、私の王はあなたじゃない。あの人なの。』
レジェンド『・・・』
キコ『ええっ!こんなボウヤが、アナタの「王」だって!?年の差、あり過ぎぃ!?』
ルンフイ『だから、あなたと添い遂げる事は出来ないの。ごめんなさい。』
キコ『ガーン・・・やっぱ無理かって思ってたけど、まさかあんな子供に負けるなんて・・・』
ルンフイ『あなたにも、いつか良き伴侶が見つかる事を祈っておくわ。コング族のキコ。』
レジェンド『・・・いこ。』
ルンフイ『はい。行きましょう、私の王(キング)。』
誰が何と言おうと、関係無い。
王の誕生を見届けたあの時から・・・この子が、この人が私の王。
親でも、兄弟でも、友人でも無く・・・私の限り無き命を捧げ、最後まで仕える相手。
私の命をかけてでも、絶対に守る相手。
私は自分に、そう誓った。
レジェンド『・・・あそこ、いきたい。』
ルンフイ『駄目です。あの場所には「死の群れ」共がいます、あなたにはまだ危険です。私でも、あなたの安全を保証しきれません。』
レジェンド『・・・いきたい!いく!』
ルンフイ『めっ!』
レジェンド『いてっ!む~っ・・・またそうやって、でこぴんする!』
ルンフイ『分かって下さい。私はあなたを、守らないといけないんです。』
レジェンド『・・・いじわる。』
ルンフイ『何と言われようと結構です・・・ですが、王との手合わせで一発でも入れられたなら、あそこに行っても大丈夫でしょう。勿論、私と一緒にですが。』
レジェンド『・・・わかった。だから、やくそく。』
ルンフイ『はい。約束しましょう、私の王(キング)。では、指切りを・・・』
レジェンド『・・・それと、るんふいとずっといっしょ。ゆびきり、げんまん。』
ルンフイ『・・・もう。分かりました。私は、あなたへの忠義を忘れず、貴方の事を絶対に守ります・・・指切り、げんまん・・・』
自然の成り行きで成体になった私は、時に王を守る為なら、王の意志に反した事もあった。
ただ従うだけが、仕えると言う事では無い。過ちを犯す事を止め、器に合わない危険から遠ざけ、その人の為になる事を行う事こそが、真の主従なのだから。
私は王に、必ずあなたを守り・・・あなたの傍に必ず居る事を誓った。
ルンフイ『・・・私の、王(キング)。暫し・・・お暇(いとま)を、頂戴します。』
レジェンド『・・・るん、ふい?』
それから時が過ぎ、僅かな隙を突いて私の王の命を狙って来た、不届き者の「死の群れ」共と相討ちになり、幾度めかの「死」を迎え・・・
ーー・・・何だろう、この感情。
まるで、大切な何かを無くしたかのような・・・?
空の彼方・・・常人では辿り着けない、世界の果てにある「天上」に住まう、死した全ての怪獣の命を新たな命として転生させる、正真正銘の「神」・・・「土御門(つちみかど)」に導かれた、輪廻の輪の中で私は現世に置き去りにした王の事を思い返し、涙が出そうなくらいの悲しさを感じた。
今まで、どれだけ輪廻の輪にいてもこんな感情を感じた事は無かったのに・・・この時の私にその理由は分からなかったけど、私は初めて無性に誰かに・・・王に会いたいと思った。
ーー・・・どうか、待っていて下さい。私の王。
たとえ、距離や時間が私とあなたを別け隔てようと・・・必ず、あなたに・・・
『・・・いま、あいにいきます。わたくしのきんぐ。』
数百年のお暇(いとま)が過ぎ・・・私は、卵から幼子の姿で再び生まれ出でた。
王はまだ、私の事を覚えてくれているのか・・・?
一抹の不安を覚えながら、私は王を探し・・・見付け出した。
ルンフイ『きんぐ・・・』
レジェンド『・・・!!』
ルンフイ『ただいまもどりました。わたくしのきんぐ。』
レジェンド『・・・本当に長い、いとまだったぞ・・・!
おかえり、ルンフイ。』
ルンフイ『・・・はい!わたくしは、あなたと・・・いつまでも、いっしょです・・・!』
・・・少し背が伸びた私の王は、私を待っていてくれた。
心の底から、嬉しいと思った。
今まで気にならなかった時の流れが、長く感じた。
私はこの方に仕えた事を・・・この方が私の王になってくれた事を、心から感謝した。
何があっても、この方と添い遂げよう・・・
私は、自分と王に誓った。