Pray




アンバーーーもし、レジェンド様がわたくしに告白して来たとしても・・・何とかお断りしなければ。
確かにレジェンド様は偉大で素敵な方で、夫にするならとても良い殿方だと思いますが・・・わたくしには、隼薙と言う想い人がいます。
この想いは、決して変えられません・・・!






レジェンド「・・・すまなかった。」
一同「「「『!?』」」」



レジェンドからの告白と、それを断る事を覚悟していたアンバーだった・・・が、レジェンドは目を閉じたかと思うと・・・アンバーに向かって、90度直角に頭を下げた。
綺麗なまでの流れで行われた、まるで参拝客のような「王」の心からの謝罪を示すポーズに、アンバーだけでなくルンフイ・カロル・愛美華も各々の動揺の様子を示す。



アンバー『レ、レジェンド様!?』
ルンフイ「王・・・?」
カロル「オ、オレの『ドゲザ』より整ったL字謝罪を、王がぁ!?」
愛美華「あらあら・・・流石はマイペース王様、まず丁寧に謝るとはやってくれるわね?」
アンバー『あの・・・わたくし、レジェンド様から謝罪されるような不快な事はされていないのですが?』
レジェンド「・・・己自身が思い、決めた戒めだ。この事を解決しなければ、己はルンフイと寄り添う資格は無い。」
ルンフイ「私と?」
アンバー『レジェンド様が?』
レジェンド「・・・己は、半年前にタイタンズの『王』となり、幼少の頃に見知っていた彼女と、タイタンズの『女王』であるルンフイと巡り会い・・・永遠に共に居たい、寄り添っていたいと思った。」
ルンフイ「王・・・」
レジェンド「・・・だが、己はお前を見ながら、無意識に記憶の中のルンフイを追っていただけだったのかもしれない。そう思うと、『招待』でお前の事を見ていた己自身を恥に思い、そんな己はルンフイと寄り添う資格は無いと・・・ずっと思っていた。」
愛美華「やっぱり、ね・・・律儀にも程があるけど、私は素敵だと思うわ。
だから、ついつい通りすがりの女性に目が行く、そこの男性読者諸君?レジェンドさんの誠意を、どうか見習ってよね?」
カロル「男性読者?何言ってんだ、こいつ?」
愛美華「それはいいから、これはどう言う事なのか貴方は分かってるの?」
カロル「えっと・・・つまり、王は女王と再会するまでこのアンバーってのに勘違いで恋していたかもしれない、そんな事をわざわざ謝りに来たってのか?その為だけに、数ヶ月かけてレガシィコングってのを探してたのか?オレ達タイタンズ!?」
ルンフイ「いいじゃないの、カロル。王の望みは、私達タイタンズの望み。そして、私の望みは・・・私の王と同じだったと分かったのだから。」



下手をすれば嫉妬や疑念を増幅させかねない、レジェンドのカミングアウトであったが、狼狽えるカロルをよそにルンフイの心には一片の揺らぎも無かった。
間接的にだが、自分の「王」への羨望や使命を越えた「愛」を、王・・・レジェンドも持っていてくれたのが、ようやくはっきりとしたからだ。



カロル「ここまでしてまでやる事っスか、これ?次の『招待』の時にでもやれば良かったんじゃ・・・」
愛美華「もう、貴方やっぱり分かってないわね?恋に関わる事に次もヘチマも無いのよ?こんなにも愛されているなんて、ルンフイさんも幸せなのに・・・」
カロル「ヘっ?ヘチマ?」



ルンフイの静かな歓喜を察し、レジェンドへの仮説が正しいと確信した愛美華は淑々とした笑みを浮かべ、レジェンドの心情を察したアンバーも優しい笑顔で両膝を曲げて屈み、レジェンドと目線を合わせる。



アンバー『・・・わたくしにも、既に心に決めた最愛の男性がいます。なので、レジェンド様に心揺れていたのに・・・と言う事はありませんし、いきなり謝罪されて迷惑だとも思っていません。だからどうか、お顔をお上げ下さい。レジェンド様。』
レジェンド「・・・感謝する。やはりお前は、強く優しき心を持った女だ。」
アンバー『「王」たる貴方からお誉めに預かり・・・光栄の極みです。
ではあと、一つだけご質問を・・・わたくしとルンフイ様を見ての、最大の違いは何でしょうか?』
レジェンド「・・・全身全霊で誰かを大切にしたいと、命に変えても護りたいと言う気持ちを感じたのはルンフイだけだ。寄り添う事は迷惑ではなく、彼女を失う事に己が怖気付いていただけだった。今はそう思う。」
愛美華「そう、それが恋よ!やっと気づいたのね♪」
ルンフイ「・・・♪」
カロル「まぁ、円満解決って事でいっか・・・いいよな?」
レジェンド「・・・これからも異世界の『友』として、『招待』で会おう。アンバー。」
アンバー『心得ました。次からの「招待」も、宜しくお願い致します。レジェンド様。』



レジェンドとアンバーは立ち上がり、清々しい表情で互いを見た後・・・「友情」の握手を交わす。
そこには後腐れたモノは一切無く、また「友」として関係を深められた嬉しさに満ちていた。
そんな二人の元に、今度はルンフイが歩み寄って来る。



ルンフイ「・・・立派だったわ、私の王。それから、アンバー。あなたも。」
アンバー『ありがとうございます、ルンフイ様。レジェンド様と、どうかいつまでもお幸せに。』
ルンフイ「ええ、ありがとう。本当に、王が言っていた通りの女性だったわね。儚くも強い琥珀の輝きを放つ、透き通った水晶のようなヒト・・・何だか、ほんの少しでも嫉妬に似た感情を持ったのが愚かしいわ。」
レジェンド「?」
ルンフイ「アンバー・・・どうか私とも、握手して下さる?」
アンバー『・・・勿論です、ルンフイ様。「女王」たる貴女からの最高の誉れ、有り難く受け取らせて頂きます。』



「王」のレジェンドに続き、「女王」のルンフイと握手を交わすアンバー。
こちらも汚れた感情や思惑が微塵も無い、「王」を称える淑女同士の友情が生まれた瞬間だった。



愛美華「うんうん・・・昼ドラチックなドロドロとは違う、一人の男がきっかけになった綺麗な女の友情も、たまにはいいわね・・・♪」
カロル「ラドンもそうだそうだと言っています、っと。」
ルンフイ「じゃあ、私の王。アンバーにも話さない?あなたの・・・真の『王』の戴冠式の事を。」
レジェンド「・・・分かった。」
アンバー『では、どうかわたくしにお聞かせ下さい。この半年の間に、何があったのかを・・・』
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好釦