Pray




ルンフイーー・・・あの時、無力に命を弄ばれてしまった哀れな存在だったあなたが、今は神に近しい存在になるなんて・・・
私が輪廻の環の中に留まっていた間も、あなたはこの世界の酸いも甘いも見つめ続けていたのね・・・キコ。



ルンフイは目を瞑り、思い出していた。
彼が「レガシィコング」となるきっかけとなった、億年の昔の惨劇の記憶を・・・










あの日・・・後に「髑髏島」となる「地下空洞」の彼の地が「天から降ってきた大いなる龍」に襲撃されたと聞いて、私は彼の地に舞い降りた。



『本当に、ここが「楽園」?信じられない・・・』



焼け野原になった、元は美しかった花園。
そこに転がる、コング達の亡骸。



『あのコング族が、こんなにも殺されてしまうなんて・・・えっ?あの子は・・・!?』



その中に、見知った顔がいた。
綺麗な白髪を持った、以前私に求愛して来た事がある、コング族の希少なアルビノの少年。
でもその髪は、不自然なほど紅い血で汚れていた。
生き残った者の話では、天から降ってきた「黄金の三つ首龍」に真っ先に狙われ、弄ばれ、最初に彼を庇って殺された女性のコングの血を意図的に浴びせさせられた末に、首を折られたそうだ。
まるで、他人の玩具(おもちゃ)で勝手に遊んで、壊して返すかのように。



『・・・そんなの、残酷過ぎる。何故、この子がそんな目に遭わないといけないの?この子はただ、アルビノとして生まれたと言うだけなのに・・・!』



私は、冷たくなった少年の亡骸の前で膝を折り、瞳を閉じて十字を切った。
「土御門」の元で次に生まれ変わる時は、どうか平穏な時を過ごせます様に・・・
それまでは・・・



『お休みなさい。ーーーキコ。』










ルンフイ「・・・」
レジェンド「・・・どうした、ルンフイ?」
ルンフイ「えっ?いえ、何でもないわ。キコは今どうしているのか、考えていただけ。」
レジェンド「・・・レガシィコングなら、必ず己の願いを叶える。信じよう。」
ルンフイ「・・・ええ。私も信じているわ、王。あの子を・・・コング族の『遺産』を。」



それから約一時間後、雀路羅の上空から光の柱がレジェンド達に伸び、光に吸い込まれたレジェンド達はUWを出て異世界へと向かって行く。
レジェンドが会いたいと望む「彼女」がいる世界、「‐」世界へ・・・






ヒオニ「レリゴー♪レリゴー♪」



一方、南極では人間達の声援に煽られ愛美華とはぐれてしまった、雪の女王・・・ではなく「六脚の氷女郎」の異名を持つタイタンズの一体・スキュラことヒオニが、ありのままの姿・・・ではなく人間の姿で、液体窒素を撒き散らしながら南極の環境の均衡を保っている所であった。
まるで舞踏会に参加している貴族のような、手首の辺りが薄紫になった水色のドレスグローブに、肩と背中が露出した水色のバッスルドレスを着た、薄紫のグラデーションをした黄緑の髪を頭頂部と後頭部から右寄りに花飾りの様に結んだ、赤い口紅と睫毛の長い、金色の瞳孔が複眼のように二つ並んだグレーの瞳が目を惹く、片手に紫色のエレガントな傘を差した女性が辺りを冷気で包んでいる様相は、確かに「雪の女王」に相応しくはあるのだが。



ヒオニ「・・・ふう、これくらいでよろしいかしら?全く・・・わたくし達はかつてのこの星の支配者である、雄大なるタイタンズですのに、わたくし達を観光スポットか何かと思っている人間にも、困ったものですわねぇ・・・恥ずかしいではないですか。」



人間達からのタイタンズの扱いは千差万別であり、大抵は「共存」か「殲滅」かに分かれているが、中にはタイタンズを生き神の如く崇め奉る狂信者や、有名人や観光地を目撃したかのようにSNSにタイタンズの写真や動画を拡散する今時の者達もおり、ヒオニを追いかけていたのは「今時の者達」であった。
ただ、照れ屋で控えめのヒオニにとって「今時の者達」の相手は羞恥心を煽られる苦手なシチュエーションであり、逃げ足の早さから人間達を巻く事は出来たものの、気付けば南極まで来てしまっていたのだった。



ヒオニ「まぁ、わたくしも空腹のあまり石油船を襲いかけて、『王』に止められると言う羞恥を晒しているのも原因なのですが・・・あら?」



数ヵ月前に起こしたレジェンドとの軽い衝突の一幕を思い出し、更なる羞恥心から顔を赤らめたヒオニが、ふと南極の氷山の一角に目を向けると、その頂上に人影が見えた。



ヒオニ「こんな所に、人間?もしくは、タイタンズの誰か・・・はっ!?」



目を凝らして人影の正体を知るや、ヒオニの顔は赤面のからみるみる内に蒼白に染まって行き、震えながら彼女は即座に氷山の影に隠れる。
ヒオニが目撃した「影」はそれ程までに恐ろしく、この場にいる筈のない・・・いてはならない存在だったのだ。



ヒオニーー早く、この事を「王」に報告しなければ・・・!
まずは「彼ら」に存在が知られないよう、ここから離れないと・・・



陸・海の両棲生物であるヒオニは静かに海中に潜ると、流線型を描きながら泳いで南極を去って行く。
だが、「影」はさながらヒオニを見送るかのように、彼女が去って行った方の海面を見つめていた。



???「おれとシュー兄ちゃんとドゥ兄に、バレてないとでも思ったのかなぁ~?ヒオニちゃ~ん♪」
???「良いのか?あの女を行かせちまって。今のアイツ、オレ達の事を絶対あの野郎にチクるぞ?」
???「丁度いいメッセンジャーだ、むしろこれで挨拶に行く手間が省けたろう?『王』に教えてやればいい・・・我らが、復活したとな!」
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好釦