Pray
2019年・12月、UW。
地球は「偽りの王達」の復活に端を発した、神話時代の神・・・「M.U.T.O.」から「TITANS(タイタンズ)」と呼ばれるようになった怪獣達が闊歩する、新たな時代を迎えていた。
タイタンズは失われた各地の自然を再び芽吹かせ、絶滅に追いやられた生物達を救い、緩やかに破綻しつつあった自然の調和を保つ為に、人間が奪った地球のあるがままの姿を少しずつ取り戻そうとしていた。
もはや人間は地球の絶対的支配者で無くなり、タイタンズとの共存か対立か・・・そのどちらかの選択肢を選らばされる立場となっていた。
レジェンド「・・・」
そして、凄烈なる闘争の末に「偽りの王達」を廃し、タイタンズを率いる王・・・「キング・オブ・モンスター」の称号を冠する事となったレジェンドは今、日本・旧雀路羅(ジャンジラ)市跡に来ていた。
彼の帯刀する刀の鞘の背鰭は更に肥大化し、さながらヒイラギの葉のようになっており、服も隅々が青く変色している。
そんなレジェンドの傍らに、一人の女と男がいた。
???「あれ、この水槽ってこう見たら「MOTHRA」って書いてあるように見えるッスよ、女王。」
???「本当ね・・・ヒトが私を飼うなんてありえないけど、冗談としては面白いわ。王もそう思わない?」
レジェンド「・・・カロル、ルンフイ、今は遊びに来たんじゃない。」
???「わ、分かってるっスよ、王。軽いジョークじゃないッスか~。」
???「そうだ、ここをあなたの新しい家にしない?ここならあまりヒトも来ないと思うし。」
天井に掛けられた、すっかり風化した「HAPPY BIRTHDAY Dad!(パパ、誕生日おめでとう!)」のメッセージが淡々と時間の経過を伝える、雑草が生い茂るとある民家をレジェンドと共に探索する、同伴者の男と女。
巨蝶・ヨナグニサンの羽の模様に似た柄をしたマントを肩から羽織り、背中が空いた黄色いレオタードスタイルのワンピースに、マントと同じ柄の布が後ろに付いた膝下辺りからスリット状になっているオレンジ色の腰巻きを着用した、琥珀色の長髪を後頭部から二つの螺巻きのお下げにしている、高貴かつ優美な雰囲気を持った女の名はルンフイ。
タイタンズの一体に名を連ねるモスラ一族の者であり、「クイーン・オブ・モンスター(怪獣の女王)」の異名を持ち、遥か太古からゴジラ一族と共生関係で結ばれた、タイタンズの中でも特別な存在である。
白いカッターシャツ・黒い長ズボンのビジネスマンスタイルの服の上から、走る紅蓮の炎のような紋様が入った、溶岩を想起させる漆黒のケープとジャケットを着用した、逆立つ毛先が焦茶色になったボルドーの髪と額に垂らした二本の癖毛が特徴である、やや挑発的な感じを持った男の名はカロル。
「炎の悪魔」の異名で恐れられるラドン一族の一人であり、ある経緯からレジェンドとルンフイに頭の上がらない、王(レジェンド)と女王(ルンフイ)の側近の様な立ち位置のタイタンズだ。
レジェンド「・・・ムートーが潜伏していた所だ。いい気がしない。」
カロル「でも、今のタイタンズの中にはそのムートーの生き残りのバーブもいるッスけど?」
ルンフイ「嫌な気持ちは分かるわ・・・でも、傷を癒す為には傷を付けた悪魔と和睦する事も必要なの。そう思わない?」
レジェンド「・・・セリザワが言いそうな言葉だな。」
カロル「それ、もしかして誰かの受け売りだったりするんっスか?」
ルンフイ「えっと・・・フォーチュンクッキーに書いてあったわ。とても長い、フォーチュンクッキーに。」
カロル「へえっ?」
レジェンド「・・・分かった。考えておく。」
カロル「え?分かったん、スか?」
ルンフイ「ありがとう、私の王(キング)。それにしても、見付からないわね・・・何処に行ったのかしら?」
カロル「レガシィコング、でしたっけ?本当にいるんっスかね?そんな地縛霊みたいなコング族が・・・」
レガシィ『ボクちゃんをお探し?』
カロル「ぐわっ!?」
ルンフイ「あっ、いたわ。王。ヤマタノオロチの言っていた通りね?」
レジェンド「・・・」
と、そこに三人の背後に突如現れたのはレガシィコングだった。
本人としては虚を突いて三人を驚かせようとしていたようだが、カロルはともかくレジェンドとルンフイは振り返るだけで特に驚く様子も無く、期待していた反応が貰えず出鼻を挫かれた感のある彼はあからさまに不満そうだ。
レガシィ『あれ?あれれ?レレレのレ~?ちょっと、も~少しびっくりしてくれてもいいんじゃないの~?いいリアクションはごますり君じゃなくったって、必須科目なんだよ?』
カロル「ああん!?誰がごますりクソデカ鳥だって!?」
レジェンド「・・・己には関係無い。」
ルンフイ「そこまで言っていないでしょ、カロル。そんな事より、王の頼みを聞いて?半年前、髑髏島に行ったのを最後に行方を眩ませたあなたを、私と王はタイタンズにも協力させてずっと探していたのよ?」
レガシィ『あ~、だから行く先々でマンモスくんとかシェララたまとかヒオニンちゃんに遭遇したわけね・・・はい、分かってますよ。ルンルン様。で、私のキング様が逃亡者のボクちゃんに何用?もしかして、ツッチーの回し者だったり?』
レジェンド「・・・否。お前の存在を他言する気は無い。連れて行って欲しい場所があるだけだ。」
レガシィ『連れてって?今すぐ?ボクちゃんが?なんで?』
ルンフイ「私も一緒に行くわ。「招待」の話を聞いて、異世界に行ってみたいとは思っていたから。」
カロル「オレも当然同行すっぞ。」
レガシィ『・・・ふぅん、なるへそ♪ボクちゃんに頼むくらいだから・・・ズバリ!王様と女王様がいてもバレない、穴場のデートスポットかなっ?』
レジェンド「・・・違う。」
レガシィ『え~っ?違うの~?じゃあ・・・ズバリ!王と女王の婚約を全タイタンズに発表する、カメラ入りまくりの披露宴会場でしょでしょ?』
ルンフイ「違うわ。」
レガシィ『ええ~っ?これも違うのかぁ・・・ならなら、ズバリ!ムートー顔負けの王と女王の愛の巣に、ファイナルアンサー!』
レジェンド「・・・次ふざければ斬る。魂諸共。」
レガシィ『ちょ、ちょいちょいそれはタンマっ!今のキミなら本当にやれそうな、恐ろしい事言わないでってば~!』
カロル「つうか、オレの存在無視してんのはわざとか?わざとなのか?」
ルンフイ「あなた、本当に『レガシィ』になる前からこんな調子ね。キコ。昔、私に求愛して来た時も・・・」
レジェンド「・・・やはり、斬る。」
レガシィ『だからタンマタンマ!ボクちゃんをズバーンするのも、昔の名前をズバット言うのもっ!ボクちゃん、色んな意味で今のYOUとは戦いたくないんだ、you!結局髑髏島から出てくれなかったボーちゃんに代わって、あの憎っくきギドラ共を倒してくれたYOUに、ボクちゃんもお礼が言いたいって思ってたんだ、you!アンダスタン?』
レジェンド「・・・そうか。」
カロル「ほんとかよ・・・ってか、なぜにラップ?」
ルンフイ「じゃあ、王の頼みを聞いてくれるのね?」
レガシィ『はいはい、分かってますよっと・・・それで、連れて行って欲しいとこって?』