暴龍乃決意‐三魔獣怪獣島襲撃‐
スカナー「こら!お前達、陛下のお通りだ!道を空けろ!」
ライジュウ「そこ、通りま~す・・・」
すると、そこへ三魔獣の前に現れたのは二人の護衛を付けた、俗世間離れした男だった。
深緑色の肩当てとそこから伸びる一対の太い腕が特徴の、腕組みをしながら三魔獣を睨む、緑のセミショートの褐色の青年はスカナー。
黄色い目が付いたフードを被り、口元に縦向きの縫い口のある仮面を付けた、ダウナー気味なパンクファッションの紫のセミロングの少年はライジュウ。
この護衛の二人は、どちらもカテゴリー4の「KAIJU」だ。
ウルフォス『何、お前ら?堂々と道の真ん中を歩くお前らが邪魔なんだけど?』
スカナー「黙れ、新入りが!陛下の前で無礼を働く痴れ者の分際で、身分を弁えろ!」
イーブルス『なんだとっ?貴様らこそ、我らを三魔獣と知らずに挑発しているのか?それでも挑発を繰り返すなら、死合の相手になってやるぞっ!!』
ホーエンス『落ち着け、ウルフォス。イーブルス・・・確かに我らは、お主達を知らない。お主達は何者だ?』
ライジュウ「えっとね、僕はライジュウ。こっちはスカナー。それから、この方はらいじゅー達のボスのスラターン様。」
スラターン「そう、俺は『KAIJU』の頂点たる『大魔獣帝』・・・その無礼、一度だけ許してやろう。」
そして、スカナーとライジュウを引き連れる底知れぬ迫力が溢れ出る男・・・丈の長いジャケットと露出の多い危なげな青黒いボンテージ服を着た、先端が槍のように太く鋭い三叉の尾が目を引く、シャドウブルーのセミロングの男こそがスラターン。
「KAIJU」の頂点に立つ、並び立つ者はただ一人しかいないとされるセリザワ・スケール最高レベルのカテゴリー5に属する、「大魔獣帝」である。
ウルフォス、イーブルス、ホーエンス『『『!』』』
ライジュウ「あれ?なんかあいつら、ビビってる?」
スカナー「当たり前だ。陛下の覇気の前では、所詮この程度の怪獣など・・・」
スラターン「・・・成程、貴様らが『三魔獣』か。なら、そうなるのも必然よ。」
ライジュウ「?」
ウルフォス『大「魔獣」帝?』
イーブルス『また「魔獣」かよっ!!』
ホーエンス『・・・何だ、この感覚は・・・?ジャイガーとも、デスギドラとも違う、この・・・!』
スラターン「貴様ら、此方に来てから『招待』や異世界を覗いているだけのようだな?なら、『我』の命令だ・・・ここに尚も留まるつもりなら、このアンティヴァースの巡回でもしていろ。」
ウルフォス、イーブルス、ホーエンス『『『!!』』』
ライジュウ「じゅんかい?それって、らいじゅー達と同じ仕事やれって事?」
スカナー「此処は広いからな。丁度人手が欲しかっ・・・とにかく陛下の命令だ!逆らうと言うなら・・・」
ウルフォス、イーブルス、ホーエンス『『『・・・御意。』』』
スラターンからの唐突な「命令」に、三魔獣が従う筈が無いと思っていたスカナーだったが、何故か三魔獣はスラターンに頭を下げると、来た道を引き返して行った。
あまりに意外な展開に、ライジュウすらも頭に疑問符が付く。
スカナー「奴らが・・・大人しく従った?」
ライジュウ「あれ、どうしたんだろ~?さっきまで逆らう気満々だったのに。まっ、急にヘコヘコしたのは面白かったけど・・・まさかスラターン様、催眠術でも掛けたんです?」
スラターン「そんな瞞しなどしてはいない。俺は『命令』しただけだ。そもそも初めから奴らが逆えないとは思っていたがな。」
スカナー「そう、その通りです!陛下に逆らえる礼儀知らずなど、このアンティヴァースにいる筈が無い!至極当然の事!」
ーー・・・とは言え、反抗心全開だった奴らがいきなり従う姿に違和感を感じたのは事実。
何故、陛下は初めて顔を合わせた筈の奴らが命令に従うと確信出来たんだ・・・?
ライジュウ「あっ、スラターン様が首に何か付けてる。下だけ曲がった・・・たま?」
スカナー「これは『勾玉』だ、ライジュウ。確か、オニババが行った事のあるニホンの古代人共が付けていた装備らしい。」
ライジュウ「へぇ~。スラターン様も、オシャレに興味あるんです?」
スラターン「いや、ちょっと付けてみただけだ。お気に入りではあるがね、フフフ・・・」
首元に付けた紫色の勾玉に指を当てながら、不気味にほくそ笑むスラターン。
彼の目には、理由も分からないまま自分に逆らえずにいる三魔獣の背中が写っていた。
ウルフォス『自分達、何であんな露出狂に従ったんだ?「大魔獣」だけどさ・・・』
イーブルス『分からん・・・っ!だが、何故か私は主に命令された気分になって、気付いたら・・・』
ホーエンス『やはり、お主達も同じ事を思っていたか・・・某も、主の命令を聞いた時の感覚を思い出した・・・!だが、奴は確実に主では無い筈・・・何故だ?』
三魔獣自身や側近のスカナー・ライジュウさえも分からない、スラターンの絶対の「命令」の理由。
それはただ一人・・・「大魔獣帝」だけが知っていた。
スラターンーー・・・そう、我に逆らえる筈が無いのだ。貴様達だからこそ。
アンティヴァースに土足で乗り込んできて早々、魂魄だけでこの我の身体を支配しようと目論んだ愚かな「大魔獣」を封じたこの「勾玉」がある限り・・・な。
さぁ、次は奴らにどんな「命令」をしてやろうか?
フフフ・・・
ルシカ「それにしてもゴジラさん、『招待』なんて行けていいな~。アタイも違う世界のバラゴンに会いたいよ。」
アンギラス「オイラは・・・まだいいかな。」
ルシカ「えっ?なんで?」
アンギラス「もし、あの時の魔獣達が言っていたアンギラスが来たら・・・って思って。それに他のアンギラスも強くてオイラが最弱だったら、兄貴に恥をかかせちゃうし。だから、もっと強くなってからにするつもり。」
ルシカ「そっかぁ・・・」
テレケ「じゃ、まずはオレぐらい軽く倒せねぇとな?ほれ、特訓の時間だぞぉ!」
アンギラス「よし、来た!今日こそとっておきのカンガルーキックを使わせてやるからな!テレケ!」
テレケ「ならあの時使った『とげキャノン』くらい、ちゃんと使えるようになれってばよっ!」
ルシカーー・・・アンギラス。アタイ、いつでも待ってるよ。
あんたと一緒に「招待」に行ける日を・・・ね。
アンギラス「行っくぞ~!!
暴龍、怪球・・・烈弾ッ!!」
そして、今日も今日とてアンギラスは特訓に励む。
ゴジラ・レッドの最高の相棒に、怪獣島のみんなと愛するルシカを守れる男に、まだ見ぬ「アンギラス」に負けない怪獣に、自分のなりたい「自分」に・・・
いつか怪獣王を、越える為に。
終