暴龍乃決意‐三魔獣怪獣島襲撃‐







アンギラス「・・・オイラは、そんな事なんて・・・!」
ホーエンス『主が動揺している・・・使命を、記憶を思い出そうとしている!』
イーブルス『なら、もっとダメ押しだっ!主、このままゴジラに負けていては大魔獣の名折れ!全てを完膚無きまでに叩きのめし、蹂躙し、大魔獣の誇りを取り戻すのですっ!!』
ウルフォス『主なら出来る筈ですよ?ゴジラを抹殺する事も。でも、今の主には無理だ。だから早く思い出して下さい、本当の「暴龍」としての貴方を。』
アンギラス「本当の、『暴龍』・・・オイラが、兄貴より強く・・・」



微かに心に残っていた「ゴジラ」への憎悪、怪獣の本能が求める強さへの渇望、「兄貴」の為に激しい流血や顎を裂かれる事さえも厭(いと)わなかったにも関わらず「噛ませ犬」と蔑まれ続けた、屈辱の日々。
それらへの不平不満全てを抑え、健全な理性を保てていた理由であるゴジラ・レッドと言う存在が無い今、理性と願望の間で揺れるアンギラスは三魔獣が望む「暴龍」となりつつあった。



ウルフォス、イーブルス、ホーエンス『『『さぁ、主!今こそ我らと共に覇道へ向かいましょう!!』』』
アンギラス「・・・オイラが、最強に・・・」
???「ちょっと待った!!」



・・・が、その時。
甲高く力強い声ーー聞き慣れた彼女の声ーーが、アンギラスを静止した。
声の主である少女・・・頭に付いた大きな黄色い一本角と半月状の耳に、茶の基調色にしたボーイッシュなパンツルック、細めだが立派な赤茶色の尾、薄い茶髪のショートヘアと濃いイエローの瞳に少年のやんちゃさと少女の繊細さを宿した、彼女の名はルシカ。
この世界のバラゴンにして、アンギラスのガールフレンドである。



アンギラス「ルシカ!」
ルシカ「アンギラス!何やってんの!あんた、見てからに悪いあいつらに協力しようとしてたよね?なにあんたらしくない事してるんだよ!」
ウルフォス『なに?あの女。邪魔なんだけど。』
イーブルス『引っ込んでろ、小娘っ!今私達は主を取り戻そうとしているんだっ!』
ルシカ「引っ込むのは、あんたらの方だ!何よ、主って!アンギラスがあんたらみたいな悪い奴、子分にするわけないでしょーが!バッカじゃないの!?」
イーブルス『ば、バカだとっ!バルゴンでは無いが、貴様の様な小娘に言われるとすこぶる腹が立つぞ・・・っ!!』
ルシカ「小娘じゃない、アタイの名前はルシカ!またの名をバラゴン!誇り高き地底怪獣だ!」
ホーエンス『バラゴン・・・?もしや、お主は「護国聖獣」の地の神・婆羅護吽か?』
ルシカ「・・・だったら、なに?」
イーブルス『護国聖獣、覚えているぞっ!我らと同じ使命を持ちながら人間に屈し、あまつさえ奴らの守護神となった裏切り者共っ!!』
ウルフォス『だったら、裏切り者は始末しないと。行くよ、イーブルス。ホーエンス。』
アンギラス「えっ・・・?」
ホーエンス『そうだな・・・裏切り者を我らが始末すれば、主も完全に復活されるやもしれない・・・!』
イーブルス『そう言う事だ、この裏切り者っ!!我ら三魔獣が、引導を渡してやるわっ!!』
ルシカ「っ!」



三魔獣はルシカに標的を変えると一転、ルシカへ攻撃を始めた。
イーブルスは飛び上がって両手から羽根をミサイルのように飛ばし、ウルフォスは砂を諸ともしないスピードでルシカへ突撃。
ルシカも即座にイーブルスの羽根ミサイルを跳躍でかわし、ウルフォスの突撃を砂浜に潜って避ける。
しかし、それこそが三魔獣の狙いだった。



イーブルス『ホーエンスの言った通りっ!あの小娘、地面に潜ったぞっ!』
ウルフォス『頼むよ、ホーエンス。』
ホーエンス『了解だ・・・たとえ地に逃げようと、某の波動からは逃れられない!』



ホーエンスは両手の拳と拳を突き合わせ、周囲に波動を放った。
ウルフォスとイーブルスは阿吽の呼吸で波動を回避し、波動は砂浜を抉って中を潜行していたルシカに直撃する。



ルシカ「そんな・・・!?あうっ!」



砂浜から弾き出され、宙を舞うルシカ。
だが非情なる三魔獣がその隙を逃すわけもなく、ウルフォスの再度の突撃とイーブルスの飛び蹴りが、ルシカを容赦無く襲った。



ルシカ「がはっ・・・!」
アンギラス「ル・・・ルシカ!!」



ルシカは受け身も出来ずに砂浜付近の林の大木に叩き付けられ、その勢いで折れた木と共に力無く倒れる。
突然の蛮行にアンギラスが唖然とするのをよそに、三魔獣はルシカへ歩み寄って行き、即座に到着したイーブルスがルシカの首を掴み、そのまま彼女を宙に持ち上げる。



ルシカ「あ、ぐううっ・・・!」
イーブルス『あははははっ!いいザマだな、裏切り者めがっ!』
ウルフォス『命乞いは聞かないよ?裏切り者の癖に、さっき自分達に大口叩いたんだしさ。』
アンギラス「ルシカっ!?おい!お前ら何してんだ!!早くルシカを離せ!!」
ホーエンス『何を仰る・・・?我らは主や某達を裏切り、敵となった愚か者を始末しているだけ。主もあの裏切り者が始末されれば、真に目覚めて下さると思っての行動なのですよ?』
アンギラス「だから、オイラはお前らの主じゃないって言ってるだろ!!ルシカを離さないなら、オイラがお前らを倒すぞっ!!」
ホーエンス『やれやれ・・・今の主の記憶喪失具合はイーブルス以上らしい。不本意ながら暫く、大人しくして貰いましょう・・・』



ホーエンスは再び拳を突き合わせて波動を放ち、今度はアンギラスを砂浜に抑え込んだ。
凄まじい波動の圧に、アンギラスは体を動かすどころか呼吸をする事さえ精一杯なまでに追い詰められる。



アンギラス「う、ぐっ・・・!」
ルシカ「アン、ギラス・・・!」
アンギラス「くそっ・・・ルシカ・・・!」
ルシカ「アンギラス・・・にげ、て・・・!」
アンギラス「なに、言ってるんだよ・・・!このままじゃ、キミが・・・!」
ルシカ「わたしの事は、いいからぁ・・・にげ、てぇ・・・!」
ウルフォス『まだ喋れんの?こいつ。鬱陶しいな。』
ルシカ「うる、さいっ!あんたら、なんか・・・すぐ、ぶっとばしてやるから・・・かくごしろ!」
イーブルス『「剛禽」の私に首を取られながら、まだ減らず口を叩くかっ!その首、握り潰してやるわっ!!』
ルシカ「あがあっ・・・!?」
アンギラス「や、やめろぉ!!ルシカを・・・はなせぇ!!」
ホーエンス『そうはいきません・・・主が大魔獣に戻る為ならば、我らは如何なる手段も辞さない。さぁ、早く思い出すのです。主よ・・・!』



ルシカーーああは言ったけど・・・やっぱ、逆転は無理そう・・・
私もこのまま、先代みたいに首を折られて死ぬのかな・・・?
ごめんよ・・・アンギラス・・・!
私・・・もっと、あんたと・・・
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好釦