暴龍乃決意‐三魔獣怪獣島襲撃‐











数時間後、怪獣島。
その砂浜を歩く、一人の少年がいた。
端がギザギザになった茶色いノースリーブと黄緑の短パン。
背中に背負った無数の棘が生えた甲羅と、同じく棘が均一に生えた尻尾。
額に巻いた赤いラインが通ったバンダナと、茶色いツンツンとしたショートヘアを掻き分けて生える五本の角に、鼻と右目下に付けた絆創膏が特徴的である、快活な雰囲気の少年だ。



???「何だか、天気が悪くなって来たなぁ。兄貴のデート、どうなってるかな・・・?」
イーブルス『どけえええええっ!!』
???「えっ?う、うわあああっ!?」



曇り空を気にする少年だったが、そこへ海を渡ってウェスター島から怪獣島に辿り着いた三魔獣が水平線の彼方から向かって来た。
少年は慌ててジャンプし、砂を周囲に撒き散らせながら砂浜に上陸する三魔獣との衝突を避ける。



???「ごほっ、ごほっ・・・なんだよ、一体・・・」
イーブルス『到着っ!!ここが・・・えっと、珍獣島だな!』
ウルフォス『怪獣島、だよ。数時間しか経って無いのにもう忘れたの?鳥頭。』
イーブルス『うるせっ!もっと特徴のある名前だったら、ちゃんと覚えられたんだよっ!』
ホーエンス『それでも覚えていたかは疑問だが・・・この幾つもの怪獣共の気配、恐らくここが怪獣島で間違い無い筈・・・そこの者、この島は怪獣島か?』
???「う、うん。ここは怪獣島だよ。オイラはアンギラス。あんたら、見ない顔だけど何処の怪獣?」
イーブルス『知らないか?なら聞かせてやるっ!我らは「暴龍」に使えし三魔・・・んっ?』
ウルフォス『今、アンギラスって言わなかった?』
アンギラス「えっ?そうだけど・・・と言うか、今『暴龍』って・・・」
ホーエンス『まさか、こんなにも早く再会出来るとは・・・!』
ウルフォス、イーブルス、ホーエンス『『『我らが主、「暴龍」のアンギラス様!我ら三魔獣、今戻りました!!』』』
アンギラス「・・・へっ?へえええっ!?」



三魔獣は右膝を立てて座り込み、深々と頭を下げる。
突然服従のポーズを始めた三魔獣に狼狽えるこの少年こそが、三魔獣の目的であるアンギラスであったからだ。
ただ、このアンギラスは生まれも育ちも獣人界である、彼らの探す「アンギラス」では無いのだが。



ウルフォス『やはり主も、復活なされていたのですね。』
アンギラス「復活?別にオイラは何も休んで無いけど・・・」
イーブルス『主っ!!どうか、邪魔者たるゴジラ達を討てなかった私を・・・我らをお許し下さいっ!!』
アンギラス「許すも何も、オイラはあんたらなんて知らないし・・・って言うか、ゴジラ?」
ホーエンス『・・・もしや、主は人間に変わった影響でまだ記憶を取り戻していない?それなら、説明が必要か・・・実は貴方様は我らの主にして、世界に破壊と混乱をもたらす「大魔獣」であらせられる、「暴龍」のアンギラス様なのです。そして、我らは貴方に使えし陸・海・空の三魔獣でございます・・・!』
ウルフォス『「岩狼」の、ウルフォス。』
イーブルス『「剛禽」のイーブルスっ!』
ホーエンス『「重鯨」のホーエンス・・・どうでしょうか?思い出して頂けましたか・・・?』
アンギラス「いやいや、思い出したも何もオイラは記憶喪失だとか言われた事無いし、『暴龍』の呼び名はあるけど『大魔獣』なんかじゃないって。」
ホーエンス『なんと・・・!主の記憶喪失は、相当なものなのか・・・!』
イーブルス『と言うか、なんか主から魔の気配を全く感じないんだが・・・本当にこんな未熟な人間みたいな奴が主なのか?』
ウルフォス『自分も思ったけど、もし主が上手く誤魔化してるだけなら、後でお前消されるよ?』
イーブルス『ひいっ!?も、申し訳ありませんでしたっ!主っ!!どうか、御仕置きだけはご勘弁をっ!!』
アンギラス「だから、オイラはそんなのしないって!もしかして、オイラをジャイガーと間違えてない?確かに四つ足で茶色系で棘は生えてるけど、それ以外はオイラとアイツは全然違うから!」
ホーエンス『いえ、我らはそのジャイガーによって蘇りましたので、それは絶対にありません・・・』
ウルフォス『兎にも角にも、早く我らの使命を果たしましょう。主。』
イーブルス『復活を祝って、まずはこの島を怪獣共と一緒にぶっ壊しましょうっ!!』
アンギラス「な、何言ってんだ!?そんな事、オイラがやるわけ無いだろ!?ゴジラの兄貴はいないけど、ここはオイラやみんなの住処なんだぞ!この島を壊すってなら、オイラが相手になってやる!」



そう、この島の「主」であるゴジラ・レッドは今、キングシーサーとの逢瀬の為に怪獣島を出て、沖縄・万毛座に行っていた。
しかも、それに加え・・・






キングシーサー「ゴジラさーん!何処へ行ったのですかーっ!ゴジラさーんっ!!」


ーーゴジラさん・・・どうして、突然何処へ行かれたのでしょう・・・?
今さっきまで、私の後ろにいましたのに・・・気付いたら、まるで神隠しにあったかのように・・・
何かに巻き込まれた、もしくは悪しき怪獣の陰謀、そうですよね・・・?
貴方が何も言わずに私を・・・ミニラさんを置いていくなんて、しませんよね・・・!



ゴジラ・レッドはこの獣人界が「招待」に参加するに相応しいかを確かめる為、ある存在によって密かに「異世界」へと飛ばされていたのだった。
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好釦