暴龍乃決意‐三魔獣怪獣島襲撃‐
ウルフォス『あぁ、それもそうか。ありがとう。』
イーブルス『土下座だぁ?ふざけんなっ!蘇らせてくれた事には感謝するが、土下座なんてやらんぞっ!』
ホーエンス『止めるんだ、イーブルス。また地獄に戻されても良いのか・・・?それが嫌なら、きちんと礼を言うんだ。』
イーブルス『・・・ふん!私達を蘇らせてくれて、クソありがとうございましたっ!!』
ホーエンス『それでいい・・・では、ジャイガー。某が彼の分まで礼を言う、だから彼を許してやって欲しい。我らに三度目の機会を与えてくれて・・・感謝感激、雨霰(あられ)。』
バルゴン「あられ?ってか、何やねん!クソありがとうって!あやまってへんやろ!」
ジャイガー「・・・ふぅん。そこの鳥頭は無礼にも程があるが、お前がそこまでと言うなら特別に許してやろうぞ。」
ウルフォス『そうそう、自分はウルフォス。で、あいつはイーブルス。こいつはホーエンスだから。』
バルゴン「ふ~ん、なんかお前らみんなタイガースみたいな名前やな。生まれは大阪なん?」
ウルフォス『大阪?』
イーブルス『何言ってんだ、あのトカゲは。馬鹿か?』
バルゴン「なんやと!!お前、今ワイに『バカ』って言うたな!!」
イーブルスが軽く口にした愚弄の言葉を聞くや、激怒したバルゴンは先端が膨らんだ長い舌を出しながら、イーブルスを激しく威嚇する。
イーブルスもまた、大阪で育った者にしか分からないバルゴンの怒りの沸点が理解出来るわけが無く、困惑しながらも苛々が隠せない。
イーブルス「なっ、なんだ貴様っ!私を挑発する気かっ!」
バルゴン「生まれはニューギニア、育ちは大阪・神戸のワイにバカって言うからには、本気でワイとやるつもりなんやろな!!」
ウルフォス『ニューギニア?』
イーブルス「何がなんだか分からんが、戦うと言うなら喜んで相手になってやるよっ!私は挑まれた死合は必ず応じる位、死合は大好きなんでなっ!!」
ジャイガー「その程度で激怒するなと言っとろうが、全く・・・売られた喧嘩を買うこいつも同レベルじゃがな。」
ホーエンス『理由は読めないが、イーブルスの阿呆な言動は侘びる・・・だから落ち着いてくれ、バルゴンよ。』
バルゴン「しゃあないな・・・お爺ちゃんがそう言うんやったら、許したる。やけどな、そのデカいあんちゃんみたいに大阪人にはせめて『アホ』って言えっちゅうねん!分かったか!」
イーブルス『いやいや、全然分からんわっ!馬鹿(バカ)と阿呆(アホ)と何が違うんだよっ!』
ホーエンス『バカとアホの壁は、それほど深いのだろう・・・そういえば、大阪・・・近畿はウルフォスが主に侵攻していた地では無かったか?』
ウルフォス『自分が?そうなの?』
バルゴン「ほんま!?やっぱ兄さん、ワイといっしょなんや~ん!」
ウルフォス『いや、別に自分はお前の兄じゃないんだけど。と言うか、なら近畿には嫌な思い出しか無い。あのゴジラとか言う奴に海みたいな湖に沈められたの、ほんと今思い出しても腸が煮え繰り返る・・・!』
バルゴン「ええっ!?それ、もしかしなくても琵琶湖とちゃいます!?それならやっぱ、ワイと兄さんはいっしょなんや~ん!」
ウルフォス『別に名前なんて知らないし、一緒じゃなくていいって。』
バルゴン「そんなつれない事言わんとって~や、兄さぁ~ん!かく言うワイも昔、琵琶湖に沈められて一度怪獣生終わらさせられた身でしてね、ワイの皮膚は水で溶けてまうってのにガメラのドアホウが・・・」
先程とは正反対に、自分との共通項であるウルフォスの死に場所を聞くや、有頂天になりながらウルフォスにすり寄るバルゴン。
ウルフォスの方は逆に鬱陶しい事この上無い様子で、眉間に皺を寄せながらバルゴンを強く睨むも、バルゴンは全く気付いていない。
ウルフォス『ねぇ、この話全部聞かないといけないの?すこぶるどうでもいいんだけど。』
ジャイガー「バルゴンも俺以外の話相手が欲しかったのじゃろう。共通点があるのなら、尚更な。蘇生の代金代わりじゃ、最後まで聞いてやれ。」
ウルフォス『えぇ・・・』
ホーエンス『そういえば、お主・・・ジャイガーも「大魔獣」だと小耳に挟んだのだが・・・まことか?』
ジャイガー「左様。俺は一万二千年もの昔に存在した、『ムー』と言う大陸で生まれた『大魔獣』じゃよ。お前達の蘇生は始めての事じゃが、人間程度なら一瞬で白骨化させられる光線に唾液を固めたミサイル、水遁の術の様な芸当から寄生術まで、多種多様な戦法には自信がある。」
ホーエンス『成程・・・多種多様な戦法、まさに我らの主と同じ。ならば・・・ジャイガーよ、我ら三魔獣にも主である「大魔獣」がいたのだが、知らないか?』
ジャイガー「大魔獣?」
イーブルス『そう、「暴龍」のアンギラス様だっ!我ら三魔獣を従え、私達が足元にも及ばない強大な魔技を持って、時代を超えて愚かな人間共を恐怖で蹂躙した、我らが主よっ!!』
ジャイガー「暴龍、アンギラス・・・?俺の知る奴とは随分違うが、『アンギラス』がいる場所なら知っておるぞ。」
ホーエンス『なんと・・・!やはり、主は先に蘇っていたのか・・・ジャイガーよ、どうか暴龍様の場所を教えて欲しい。』
イーブルス『えっ?ホーエンス、もしかして今から暴龍様の所に行くつもりなのか?』
ホーエンス『当然。暴龍様がもういらっしゃるのなら、我らは早く馳せ参じなければならない・・・!』
イーブルス『うっ・・・』
ジャイガー「アンギラスは『怪獣島』と言う、俺達と同じ人の姿をした怪獣達が住む島におる。怪獣の気配を辿りながらあそこの方向に向かえば、着ける筈じゃよ。」
ホーエンス『了解した。本当に、感謝感激雨霰・・・!ウルフォス、イーブルス、そうと決まれば我らも向かうぞ。』
ウルフォス『分かった。そう言うわけだから、お前の話はここまで。』
バルゴン「えっ、もうどっか行ってまうん?」
ウルフォス『うん。だって、主がいるなら早く会わなきゃいけないし。じゃあ、さよなら。』
バルゴン「そ、そんな殺生なぁ・・・まだワイが大阪に来た時の話の途中やのに、堪忍やわぁ・・・」
ウルフォス『はぁ・・・じゃあ、ここに来ていいって暴龍様に言われたら、続きを聞いてやるよ。』
バルゴン「ホ、ホンマでっか!!それ、ワイとの約束やで!絶対やで!!」
イーブルス『~っ!!分かったよ、やってやるよっ!!御仕置きだろうが何だろうが受けてやるよっ!そうと決まれば急げだ、じゃあなっ!!』
ホーエンス『ジャイガーにバルゴンよ、三度目の復活で最初にお主達に出会えて良かった・・・それでは、またの機会に・・・』
ウルフォスはホーエンスの背中に乗り、イーブルスはその上空を飛んで、ウェスター島を去って行った。
バルゴンは名残惜しそうに、ジャイガーは何か考え事をしながら三魔獣を見送る。
バルゴン「ウソ付いたら針千本、やで~っ!!
・・・あぁ、なんか昔の話してたらニューギニアの虹の谷に帰りたくなって来たわぁ・・・!お爺ちゃん、お願い!ワイを虹の谷に連れてって~?」
ジャイガー「・・・」
バルゴン「・・・あれ?お爺ちゃ~ん?」
ジャイガーーー・・・アンギラスは確かに「暴龍」と呼ばれ、先代はゴジラによって倒されたと聞いたが・・・大魔獣なる二つ名も、魔技なる攻撃手段も持っていなかった筈じゃ。
そもそもアンギラスが儂と同類なら、あの魔獣共と同じように気配で分かるしのぅ・・・
ならばもしや、あの者達は異なる世界からの来訪者か?