ロダン温泉湯煙事件 前編・後編







ロダン温泉に入った一行は、足早に続々と風呂に入って行った。
一方、カントは一人施設の奥の警備室に移動し、施設中に配置された監視カメラの映像を中央の大きなモニターに映すと、ちょうどモニターの真ん中が見える位置に置かれた座布団に座る。
怪獣ランドでの「悪しき怪獣」襲撃を受け、カントはセキュリティ強化の一環として、自ら監視カメラをチェックし不審者の警戒をしようとしていた・・・



カント「・・・世の男達は勇者になるなどと言って、わざわざ危険を冒して女湯の覗きを行っているようですが・・・私からすれば、愚かとしか言いようがない・・・!
怪獣だって脳が、知恵があるんですからそれを使わないなんて、愚の骨頂!
その目で見るよりも安全で、正確に、鮮明に見える文明の利器を、何故使わない!
まぁ、私のオーナーとしての権限もありますが・・・こうした方がいいに決まっているでしょう。私はあくまで、温泉の安全を守っているに過ぎないのですから・・・!
ふふふふふ・・・!」



・・・わけもなく、カントの本当の目的は直権乱用・公私混同の極みたる行為・・・堂々と女湯の覗きをしようとしていたのだ。






メガヌロン『ひっ!?』
メガニューラ『な、なんだ?この笑い声は・・・』



また、警備室外に漏れるカントの笑い声に通りかかったえんば組が恐怖を感じる。



メガニューラ『これはもしや、最近この近くに現れると言う『返せ』の霊なのか!?』
メガヌロン『うわさの・・・あの!?』
えんば組『『て、撤収~!!』』






カント「さて・・・それでは、始めましょうか。私の美しき極上の時間を・・・!」



えんば組の事など露も知らないまま、カントは傍らのパソコンを操作し、モニターに女湯の映像だけを映すように設定した。



カント「・・・なっ!?」



・・・が、何故かモニターには砂嵐のようなノイズしか映らず、思い描くパラダイスが欠片も見えないこの事態にカントは激しく動揺する。



カント「ど、どういう事だ!?確かにここには最上級の性能と強度のカメラを、到底気付かれないように設置した筈なのに、壊されている・・・!
ま、まさか・・・誰かが、気付いた・・・?」






アンバー『・・・愛美華様?どうかしましたか?』
愛美華「いえ、ちょっとあの壁の向こうの兄様が覗いていないか確認しただけよ?気にしないで。」



件の女湯では、露天風呂への戸を開けるや隣の男湯の露天風呂とを隔てる竹の柵を見る愛美華を、アンバーが訝しげに見ていた。
愛美華本人は何事も無かったかのように振舞っているが、何かあったのではないかと言うアンバーの思惑は的中していた。



愛美華ーー・・・竹の中に隠したのが、間違いだったわね。
竹の中にいていいのは、かぐや姫だけよ?



そう、愛美華は戸を開けた瞬間に監視カメラの存在に気付き、すぐさま棘を飛ばしてカメラを破壊していたのだった。
カメラ自体は確かに竹柵の中に巧妙に設置され、近づいても分からないレベルだったのだが、植物の怪獣である愛美華には竹柵の中の違和感・・・即ち、カメラの存在が察知出来たのだ。
こうして、愛美華を除いてカメラの存在を知らないまま女性一同は露天風呂に浸かり、談笑を始めた。



シン「ん~~~っ!やっぱり温泉って、極楽だわ~♪シンゴジ~~!きもちいい~~?」
イシュタル「シンゴジは無口なんだから、ここから呼んでも多分返事は来ないよ?でも、気持ちいいのは本当だね・・・まさに、大地の恵み。」
アロナ「全身が、癒されて行くようですねぇ・・・」
アンバー『この温泉は正真正銘の、地下から湧き出ているもののようです・・・流石は、カント様ですね。』
アジゴ「よーし、じゃあ泳ぐぞ~!」
アイレナ「もう、アジゴったら他のみんながいるのにそんな事したら駄目よ。おとなしくしていなさい。」
ゆい「お兄ちゃん、また誰かにキレたりしてないかなぁ?」
レオ「前にお母さん達が行った時は、お父さんが柵を壊して女湯に突撃して来たんだっけ?」
「VS」モスラ「つい、私が叫んじゃったから・・・でも、今回は大丈夫そうね。」
「‐」モスラ『まぁ、そんな事をしようものならわたくしが全員蜂の巣にして差し上げますわ。』
愛美華「その時は、私も協力させて貰うわね。それにしても・・・兄様ったらまだ照れてるのかしら?早く覗きをしてくれないと、あの予告が嘘になってしまうわ。」
イム『・・・♪』
セラフィ「イムが人の姿になったら、一緒にお風呂に入ってるみたいね。チハヤはどうおも・・・」
チハヤ「・・・うーん。」
セラフィ「チハヤ?どうしたの?あたしの顔に、何か付いてる?」
チハヤ「・・・あっ、い、いや。何でもないよ。」
セラフィ「そう・・・?変なチハヤ。」



そんな中、チハヤだけがまじまじとセラフィだけでなく、この露天風呂にいる者一人一人を凝視していた。
傍から見れば不審な行動をする、彼女の目的は一つ・・・一同のバストサイズの比較だ。



チハヤ――・・・やっぱり、セラフィがダントツだ・・・ッ!
母さんとか、愛美華さんとか、今いないキングシーサーって人もおっきいけど・・・僕の目測じゃあ並ぶどころか、抜かしそうな勢いだよ!
それにこの三人に続いて、シン姉さんにイシュタル、アイレナおかあさまにモスラ姉さんも中々のものだし・・・
アンバーさんは僕と同じくらい・・・でも、着物を着るなら胸が無い方がいいみたいだし、肌の綺麗さが段違い過ぎて気にならない・・・!
それに比べてやっぱり、僕は・・・鎧・エターナルになればマシにはなるけど、レインボーでいるのが一番楽だしなぁ。
アジゴとゆいはまだ子供で・・・イムはイレギュラーだからノーカウントとして・・・ほんと、どっちも多分僕と一緒くらいのレオ親子が救いだよ・・・






セラフィ「・・・やっぱり、今のチハヤってなんか変。みんなもそう思わない?」
レオ「確かに、言われてみれば・・・でも、私は何かに悩んでるように見えるわ。」
イシュタル「わたしも。もしかして、今日ここに来るまでに何かあったのかな?」
セラフィ「うーん、でもあたしは怪獣ランドでずっとチハヤと一緒だったけど、あんなに悩んでるような様子は一回も無かったし・・・じゃあ、この温泉に入ってから何かあったって事?」
イム『・・・!』
セラフィ「イム?どうしたの・・・えっ?チハヤがずっと、あたし達の胸ばかり見てた?」
レオ、イシュタル「「ええっ?」」
愛美華「なるほど、ね・・・そう言う事なら、チハヤちゃんに悪い事をしちゃったかしら?」
シン「ん~?チハヤがどうかしたの?」
アロナ「チハヤは赤ちゃんの頃から、私のお胸が大好きでしたよ~?」
アンバー『そ・・・それはとても良い事ですね。なのでアロナ様とシン様はお気になさらないで下さい。』
アロナ、シン「「??」」
「‐」モスラ『胸の大きさを気にするのは、男だけでは無いと聞いた事はありますが・・・これはデリケートで複雑な事情ですわね・・・』
「VS」モスラ「私、チハヤちゃんの気持ちが少しだけど分かる気がするわ。昔『トリオの影の薄い方』ってキングギドラに言われた時の、あの気持ちにきっと近いはず・・・!」
セラフィ「そう言えば最初会った時、ブラウニーに男に勘違いされてキレたチハヤがAカップがどうとか叫んでたっけ・・・?ちょっと恥ずかしいけど、あたしもチハヤの力になりたいな・・・」
アイレナ「体格の問題は個人差があるから、すぐにどうにか出来る事では無いけれど、下手な言葉は逆に彼女を傷付けるかもしれないわ。だからこそ、今は見守りましょう。チハヤの努力や願いが、いつか実を結ぶと信じて。」
ゆい「じゃあ、あたしも祈らないと!神様どうか、オトナのあたしをナイスバディにして下さいっ!」
アジゴ「え~、私は別に胸なんていらないけどな~?動くのに邪魔そうだし・・・みんな変なの!」






チハヤ――・・・鎧・エターナルの時なら、モスラ姉さんとシン姉さん、それにイシュタルには勝てるかなぁ。
でも、アイレナおかあさまとはどうなるか・・・



密かに自分の行動が他の者にバレている事など露も知らず、チハヤは新たな基準でのバストサイズ比較を始めるのだった。
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好釦