プロジェクト・テイル・リバース








翌日、九州・阿蘇山の麓に佇む温泉旅館・ラドン旅館。
阿蘇山の地下深くから湧き出る天然の温泉をメインに、お土産に最適な限定グッズや年中入れる温水プールを目当てに人間・怪獣問わずに客が絶えない、人気旅館だ。
そんなラドン旅館を、意外過ぎる客が訪れていた。



カント「まさか、貴方達とここで面を合わせる事になるとは・・・思いもしませんでしたよ。」
ガイガン「そうだな。オレも同感だ。」
メガロ「僕、温泉入りたいから早くしてよ?」



ゴジラ・レッド・・・いや、怪獣島の怪獣達全ての天敵であるヴィラン怪獣の代表格、ガイガンとメガロだ。
今三人のいる応接室は圧力を感じるまでの緊張感に包まれており、従業員のえんば組が入る予断を許さない。



ガイガン「早速だが本題だ。一つ目はこのラドン旅館にこれから我々が作るワンダーランド、『怪獣ランド』のスポンサーになってくれないか、と言う事。
二つ目は今度の『招待』会場が怪獣ランドになるように手回しをして欲しい、と言う事だ。」
メガロ「そう言う事だ。ちゃんと話聞いてる?」
カント「ええ、勿論。悪名高き貴方達極楽コンビが世迷い言を言ったかと思えば、「招待」の事まで知っているのだと感心しているだけです。」
ガイガン「ふん、こちらにも独自の調査網がある。『カンピ・ルーラ』とか言う奴も、行動パターンが読み易いからな。」
メガロ「いいから早く、いいですよっていいなよ。」
カント「全く、あのマジメ君は・・・そのお気持ちは少し嬉しいのですが、貴方達のような侵略怪獣達を信用する事は到底できませんね。だってそれ、明らかに見えている罠じゃないですか。貴方達にとってのワンダーランドなら、お断りさせて頂きます。」
ガイガン「随分とつれないな?だが、オレは分かっているんだぞ。お前がもっと、この旅館を拡大したいと思っている事を。」
カント「・・・」
ガイガン「それに怪獣ランドには別世界の怪獣達、つまり女もたくさん来る。お前が誰に手を出そうとオレ達は一切感知しないし、何なら良いと思った女と上手く行くようにお膳立てもしてやろう。」
カント「・・・それで?」
メガロ「うわぁ、なんか妖怪アンテナみたいなの立ってる・・・」
ガイガン「お前がスポンサーになる事で、オレ達は広告などのプロモーション関係や金銭関係の心配をしなくて済む。
お前はオレ達の元で、思う存分に趣味と実益を兼ねた活動が出来る・・・こういうのを人間共の世界では、『WIN-WIN』と言うのではないのか?」
カント「そうかもしれませんが、やはり私には貴方達を信頼する事は・・・」
ガイガン「そうか・・・お前の両親も天国で悲しんでいるだろうな。他人の・・・人間の勝手で死んだ両親が、他人の役に立って来た息子が他人の心からの頼みを、無為にしているのを見たら・・・」
メガロ「僕達、心を入れ替えて二人で・・・じゃなかった、みんなに楽しんでほしかったのにぃ・・・ぐすっ。」
カント「・・・本当に悪い奴らですよ。貴方達は・・・仕方がない、スポンサーになりましょう。」
メガロ「やった!」
ガイガン「そうか。ゴジラと違って、お前は話の分かる奴だと思っていたぞ?」
カント「ですが、代わりに私の用意した契約書にサインして頂きましょう。私まで悪役にはなりたくないのでね。」
メガロ「うわっ、めんどくさっ!」
ガイガン「・・・いいだろう。」
メガロ「へっ?いいの、ガイガン?」
ガイガン「いいんだ、メガロ。スポンサーの有無は最優先だからな。それに・・・言う事を聞かせる手段ならある。」



少しして、カントが持って来た契約書にガイガンはサインした。
契約書にはスポンサー用の文面の他、「悪事には一切協力しない」「従業員や自身に暴行や脅迫は加えてはならない」「以上の行為があれば、いつでも契約を破棄する」と言う、ガイガン達へ向けた文面も書かれていたが、ガイガンはそれを確認した上でサインを行うと、メガロの頼みで怪獣用の温泉に軽く入浴した後、帰って行った。



カント「またお越し下さいませ・・・と。」
ジン「カントさん、本当にいいのかよ?契約書はあるけど、あんなヤツらが約束を守るなんて・・・」
カント「分かっているさ、ジン。でも、それなら余計に誰かが内部に通じていた方が良いと思わないか?『獅子身中の虫』役がいないと。」
ジン「た、確かに・・・でも、流石にドゴラは巻き込まないよね?」
カント「いや、ドゴラにもアルバイトで行って貰う。本人も行きたがってはいるし、ここに置いて行って拐われる可能性の方が高い。」
ジン「えっ、でも連れて行ってドゴラがもしヤツらにひどい目にあったら、どうするんだよ!」
カント「もちろん、えんば組の護衛は付けるさ。でも、もしそれでもドゴラに何かあれば・・・その時は、私が全ての責任を取る。この身に何があっても、私がなんとかするよ。」
ジン「けど、カントさ・・・」
カント「それ以上私に逆らうなら、私の今夜のディナーにするけど、いいね?」
ジン「!?」



そう言いながらジンを見るカントの目は、獲物を狙う眼差しだった。
本能から恐怖を感じたジンはしめやかに膝から転げ落ち、それ以上カントへ意見する事はなかった。



ジンーー・・・今のカントさん、色々本気だった・・・!
オレをディナーにするのも、ドゴラがひどい目にあうかもしれないのを分かってやるのも、そうなったら自分がどうなってもなんとかする覚悟も・・・!
カントさん・・・あんたって人は・・・!!
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好釦