プロジェクト・テイル・リバース







クリス――・・・ふふっ、なるほど。
リトルの様子を見に来たら、面白そうな話を聞けたわ。
そのアイデア、使わない手は無いわねぇ・・・



怪獣ランド「招待」の数日前。
偶然立ち寄った怪獣島でセラフィの夢の話を聞いたクリスは、その夢の内容を自分の底知れぬ欲望のままに実現させようと画策。
ナイフヘッドの刃の一部が付いたロッドを眼前にかざし、アンティヴァースへの扉「ブリーチ」を開こうとしていた。



クリス――怪獣達を子供に戻すなら、前にあのデスギドラが使えって言ってた「アレ」を使えばいいけど・・・一斉に戻すには「アレ」だけじゃ大きさが足りないわね。
それなら、福岡タワーみたいなうんと大きな装置を作って・・・



と、その時。
裂け目が開いたその瞬間、何者かが裂け目の中から勢い良く飛び出して来た。
一瞬驚きながらもクリスは小脇に避けてぶつかるのを回避し、飛び出して来た者をつぶさに見つめる。
子供だが、不完全に発達した両手にアバラに赤い筋が入った、深海魚のような目をした少年・・・そう、この世界のシン・ゴジラ(蒲田くん)だ。



シン・ゴジラ(蒲田くん)「かまっ!よ~し、にげれたぞ~!ブルトンにみつかるまえに、ともだちさがさないと・・・」
クリス「あら?貴方、誰なの?」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「かまはシン・ゴジラ!ゴジラのなかのゴジラだ・・・あれ?こんなおねえちゃん、ここでみたことないなぁ?」
クリス「シン・ゴジラ・・・!?あっ、私の名前はクリス。貴方と同じゴジラ、スペースゴジラよ。」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「ほえっ!?かまとおなじゴジラなの!?わは~い!!ねぇ、おねえちゃん!かまのともだちになって!」
クリス「友達?そんなに友達が欲しいの?」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「うん!だって、かま・・・」



それからシン・ゴジラ(蒲田くん)は自分の生い立ちとブルトンへの不満を喋り続け、クリスもそれを切々と聞く。
以前から煮え汁を飲まされ続けている「シン・ゴジラ」の名前に最初こそ警戒していたクリスだったが、話を聞く内にある事に気付いた。



クリス――・・・この子、他のシン・ゴジラと違って本当にただの子供なのね。
しかもあのブルトンが預かってるから、箱入り息子みたいに外の世界を知らない・・・
もし、悪しき怪獣達が言うようにブルトンが「あの存在」なら、一泡吹かせたい気分ね?
なら、この子・・・利用できる!


クリス「ねぇ、蒲田くん・・・貴方に沢山お友達ができる良いチャンスがあるわよ。気になる?」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「ほんと!?うんうん!かま、ともだちいっぱいほしい!」
クリス「そうよね?じゃあ、私に着いて来て?ちょっと時間はかかるけど、いい子にして待ってくれたらお友達がたっくさん出来るから・・・ねっ?」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「かま、ちゃんといいこにしてるっ!だからおねが~い!」
クリス「ふふっ、いいわよ。じゃあ、まずは私達の世界に行きましょうか?ここにいるとブルトンに見つかって、連れ戻されちゃうし。」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「うん!かまもブルトンになんか、あいたくないもん!ぶ~っ、だ!!」



上手くシン・ゴジラ(蒲田くん)を唆したクリスは彼と一緒にブリーチを通り、アンティバースにお持ち帰りする事に成功するのだった。



クリス――うふふっ、まさかシン・ゴジラの一人をこちら側に置けるなんて・・・なんて順調なのかしら!
これである程度他の連中も言う事は聞かせられるし、今回はこちらも数を揃えようかしら。
それで次にやる事は・・・ふふふ・・・!
もう、私のアイデアは成功したも同然ね!
あはははははっ・・・!






しかし、そのお持ち帰り現場を背後から見ている者がいた事に、クリスは気付いていなかった・・・



ブルトン「・・・シン・ゴジラ。君はその道を選ぶんだね・・・分かった。君がこれからどうするのか、もう少し見させて貰うよ。
君をこの手で消す事になるか、それとも・・・」
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好釦