イッツ・ア・スモールワールド












翌日、「‐」世界。
中心部にそびえ立つ棘々とした岩山が特徴的な、ソロモン諸島の無人島「ファロ島」の山中に、バラゴンの姿があった。
彼の目の前には大きな洞穴があり、ためらいもなくバラゴンは洞穴に入って行った。



バラゴン『え~っと・・・ここを右に行って、次に左に・・・』



洞穴の中は大人1人がやっと通れる程の道があり、しかも地下へ下りながら枝分かれの道を繰り返す、さながらギリシャ神話に登場する「ミノタウロスの迷宮(ラビュリントス)」のような複雑な構造となっていた。
しかし、バラゴンは長年の探検の経験と記憶を頼りに、迷宮の出口へと導くアリアドネの糸など不要と言わんばかりにすらすらと歩みを進め・・・結局一度も迷う事なく、迷宮の出口にして島の最深部である目的地に到着した。



バラゴン『おっ、今日も「穴」はあるっすね。待ってて下さいよ、コングさん・・・!』



そこにはUWと異世界を繋ぐ唯一の手段である「穴」が現れており、意を決したバラゴンは「穴」に飛び込んだ。
強力な引力に引き寄せられるがままバラゴンは暗黒の通路を通って「穴」を抜け、しばらくして光の先にある何処かの島の湿地帯に到着した。



バラゴン『ふう、到着っと・・・あっ、コングさん!お久しぶり・・・ですよね。』
コング「バラナス・ドラゴンか。久しいな。」




更に姿を現したのは、何故か青年の姿のキングコングだった。
そう、ここは今より過去・・・1973年の髑髏島で、GNウォールもまだ島を覆っておらず、キングコングが正真正銘の青年だった頃の時代である。










事の発端は2011年、「‐」世界のファロ島でバラゴンがキングコングと出会ったのがきっかけだった。



バラゴン『俺っち、バラナス・ドラゴン・・・略してバラゴンって言います。貴方がこのファロ島の伝説に伝わる巨大なる魔神、「王者ボー」ですか?』
コング『・・・オレの名はコングだ。そんな名前じゃない。』



太古から髑髏島の巨大な地下通路は定期的に「穴」が発生する次元の不安定な場所となっており、「髑髏の亡者」と呼ばれ島の生物全てから恐れられる怪獣「スカル・クローラー」達の巣窟でもあった。
そのスカル・クローラーを根絶やしにしようとキングコングは1967年に地下通路に乗り込んだのだが、そこで偶然にも「穴」に吸い込まれてしまい、気付けば「‐」世界のファロ島に来ていた。
そこで出会ったバラゴンと親しくなり、再び現れた「穴」で髑髏島に帰って行ったのだが・・・






コング『お前は・・・』
バラゴン『あっ、やっぱりコングさんがいた!また会いましたね~!』



「‐」世界、2017年・3月。
再びファロ島に赴いたバラゴンは巨大洞穴の先に恒久的に「穴」が空いている事を知り、キングコングに会える事に賭けて「穴」に突入。
思惑通り髑髏島に到着し、キングコングと再会を果たした。
つまり、かつての「招待」時にバラゴンがチャイルドや婆羅護吽に語っていた「巨大なる魔神」「髑髏島の巨神」の正体はどちらもキングコングの事で、あえてぼかして話していたのはタイムパラドックスの可能性を防ぐ為だった。






コング「また来た所で悪いが、今は最悪のタイミングだ。外の世界から人間共が土足で上がり込んで来ている上に、もうすぐ這い出て来た『ヤツら』が現れる・・・死闘は避けられないぞ。」
バラゴン『もしくはこのタイミングだから来た、のかもしれませんよ?』
コング「・・・運命、と言うわけか。」


バラゴン――・・・本当はこの前の「招待」に誘われた時にレガシィさんに言われたから、ですけどね。
今日、この日にコングさんは「髑髏の亡者」達と決着を付ける。だから俺っちはそれを手伝うついでに、「招待」しやすいようにコングさんに話をしといてって・・・
俺っちの存在がどれだけ影響するかは分からないけど・・・コングさんの為に出来る事をする、それだけ!



イウィルア「フフフ・・・長きに渡る其の方との忌まわしの縁(えにし)も、これで終わりぞ?」
クローラーズ「「「「ヒャッハー!!」」」」



すると、瞬く間に二人の周囲は動物の骸骨を被った一団に囲まれ、彼らを指揮する髑髏の仮面を顔の左側に付けた、黒装束の不気味な者が現れる。
この骸骨の一団こそが、この髑髏島に巣食う「髑髏の亡者」・・・スカル・クローラーであり、黒装束の者は彼らの長であるスカル・デビルことイウィルア。
かつてコング族をキングコングを除いて全て喰い尽くし、キングコングが命に代えても討つと両親に誓った、最大最凶のターゲットだ。



コング「ここで会ったが百年目だ、クソトカゲ・・・!」
イウィルア「ほう?今までおめおめと生き長らえておった、死に損ないの小童が・・・大きな口を叩くようになったのう?」
コング「黙れ。髑髏島の守護者として、今日こそ貴様を倒す!」
イウィルア「ホホホ・・・片腹痛いわ。まだまだ半熟の若造が見栄を張ろうと、ちゃんちゃら可笑しいだけぞ?」
コング「減らず口を閉じろ、この腐れた女めが・・・!」
バラゴン『えっ?あの黒装束の人、女なんですか?』
コング「何を驚いている?男だろうと女だろうと関係ない、奴は必ず討つべき悪魔だ・・・逃げるなら今の内だぞ?本当にいいのか?」
バラゴン『ここで逃げる程、俺っちも弱くないですよ?それに俺っちがお節介焼きなのは、コングさんも知っていますよね?』
コング「・・・あぁ。あの日のお前も、そうだったからな。」










コング『オレはスカル・クローラー共を、絶対に許さない・・・刺し違えてでも、全滅させてやる・・・!』
バラゴン『だ、駄目ですよ!そんなの!貴方はコング一族最後の一人なんです、なら死んじゃいけません!』
コング『余計なお世話だ・・・そもそも何故、わざわざオレに構おうとする?オレはお前には何の関係のない存在だぞ?』
バラゴン『そう言われましても・・・こう見えて俺っちは世界中を旅してる身ですから、話しているとなんとなく分かるんですよ・・・この人は誰かとの繋がりを欲してる、って。』
コング『・・・』
バラゴン『まぁ余計なお節介焼きだ、って言われたらおしまいですけどね。でも生まれて此の方、そうやって生きて来ましたんで・・・多分、治らないと思います。』
コング『・・・お節介、か。ここ数十年は感じた事も無い体験だな・・・
だが、悪くは無い・・・オレはそう思う。』
バラゴン『じゃあ・・・!』
コング『オレは・・・生きる。たとえ地べたを這いつくばってでも・・・生きて、打ち勝つ!奴等に!!』







バラゴン『まっ、そういう事ですし・・・やりましょう、コングさん!』
コング「・・・すまない。なら行くぞ、我が友よ・・・!
オレの一族を・・・父を、母を!この島の全てを食い尽くさんとする、髑髏の亡者共よ・・・オレは貴様ら全て、破壊(クラッシュ)する!!
フンッ!フンッ!!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」



そして、キングコングとバラゴンはスカル・クローラー達へ向かって行った。
この死闘こそが「現時点」でのキングコング最大の戦いであり、約40年後の怪獣ランドへの「招待」のきっかけとなった、キングコングの忘れえぬ大切な「記憶」なのであった・・・
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好釦