イッツ・ア・スモールワールド






その頃、ブルトンの元に「扉」を通った「‐」バラン達が戻って来ていた。
初代ゴジラ・ザウルス・バラゴンはすぐに広場へ向かい、この場には「‐」バラン・アンバー・ドゴラが残っている。



ブルトン「どうやら、ラドンの探し物は見つかったようだね。」
ドゴラ「カントさぁ~んっ!!」
カント「っ!?ド、ドゴラ!」
ヒジュラス『おお、姫!やっとお帰りに!』
アンバー『カント様!ドゴラ様は無事救出致しました!これでもう、悪に従う必要はありませんよ!』
「‐」バラン『さぁ、如何する!此のスケコマシめ!』
カント「・・・参りましたねぇ。そんな事をされてしまうと・・・!」



しかし、カントはシルクハットに風をまとわせると、フリスビーのように「‐」バランに向かって水平に投げた。
シルクハットは風を逆巻かせながら、音速のスピードで「‐」バランに迫る。



アンバー『カ、カント様!?』
「‐」バラン『貴様・・・!未だ私と争う積もりか!』
ドゴラ「やめて!カントさん!」
カント「・・・私からも、精一杯のお返しをしなければいけませんね!」



・・・が、シルクハットは「‐」バランの手前で突如として向きを変え、旋回し弧を描くような軌道で別の標的へと向かって行った。



ヒジュラス『・・・んっ?なっ!?』



そう、ヒジュラスに向かって。
想定しえない攻撃にヒジュラスは回避する余裕も無く、気付いた瞬間にシルクハットによって吹き飛ばされていた。



ヒジュラス『ぐおおおおっ!!き、貴様!どういう風の吹き回しだ!』
カント「どうと言われましても、貴方はえんば組を貸したのにも関わらず、あのバランに痛い目に遇わせる事が出来なかった・・・よって、これを契約不履行と判断して強硬手段を取らせて貰っただけです。それに貴方が言っていたではありませんか?バランの次は、私と戦うと。」
「‐」バラン『彼奴め、余計な事をしよって・・・』
アンバー『カント様・・・!』
ドゴラ「うん。いつものカントさんだ・・・!」
カント「そういうわけで、えんば組は即刻私の所に戻って来て下さい。少しでも遅れたらそのまま今日のディナーにしますよ?」
えんば組『『『ぎょ、ぎょいさー!!』』』



ヒジュラスの所にいたえんば組がカントの一声で全て戻って行き、一転してヒジュラスは孤立する形となった。



ヒジュラス『おい!待て、虫共・・・おのれ、裏切ったな!烏合の衆の分際で・・・!まぁいい、貴様らに頼る必要など最初から無かったわ!手を貸せ、「KAIJU」共・・・なっ!?』



猫の手も借りたい状況に追い込まれたヒジュラスは、レザーバック達に協力を要請した・・・が、彼ら夫婦の姿もまた何処にも無かった。



ブルトン「どうやら、今の混乱に乗じて上手く逃げたようだね。別に僕は去る者は追わない主義だけど。」
ヒジュラス『おのれぇ!!どいつもこいつも役立たずめ!所詮、我以外の者など下の下でしかないと言う事だな!ならばやはり、貴様に引導を渡すのはこの我自身・・・!
覚悟しろ、バラン!!この屈辱と怒りを力に変えて貴様を抹殺し、姫を手に入れる!!』



追い詰められたヒジュラスは全身に炎をまとい、両手を広げて滑空しながら「‐」バランに迫る。



アンバー『そうはさせません!わたくしも・・・』
「‐」バラン『否、御前は手を出すな。』
アンバー『ですが、バラン・・・』
「‐」バラン『好い加減、奴に教えねば成らない様だ・・・貴様が只の高慢ちきな凡骨で、所詮は井の中の蛙(かわず)に過ぎない事を・・・貴様が相手にして要る、此の私との力の差を!!』



「‐」バランは左手の人差し指をヒジュラスに向け、起こした猛風をヒジュラスにぶつける。
だが、ヒジュラスの炎と猛攻は全く衰える様子は無い。



ヒジュラス『大口を叩いてこの程度かぁ!!こんな微風(そよかぜ)で私を止める事などできはしな・・・』



しかし、その傲慢から来る油断と隙こそが「‐」バランの狙いであった。
「‐」バランはすかさず右手を地面に付け、その直後にヒジュラスの真下から突き出した尖った岩の柱が、ヒジュラスの腹を正確に捉えた。
ヒジュラスの全身の炎が消え、「く」の字の形のまま身動きできない程の苦痛を味わう。



ヒジュラス『がはっ・・・!!』
「‐」バラン『如何した、此れで終わりか?』
ヒジュラス『だ、黙れぇ!!これしきの事でこの、我がっ・・・!!』
「‐」バラン『・・・知らんな。消えろ!私の眼の前から!!』



そして「‐」バランは空いた左手に生成しておいていた真空の弾丸・・・「真空圧弾」をヒジュラスに向かって発射した。
成す術もなくヒジュラスは弾丸を受け、その勢いと「く」の字の姿勢のまま空高く飛んで行く。



ヒジュラス『お・・・おぼえていろ、バラ・・・!!』



「‐」バランへの呪詛の言葉を言い終わる前に、ヒジュラスは空の彼方に消えて行った。



「‐」バラン『・・・此れで当分、奴と顔を合わせる事も無いで在ろう。』
アンバー『ヒジュラス・・・何故、貴方はこうも自分本位にしかなれないのでしょうか・・・?』
カント「私から逃げるとは、つれないですねぇ・・・何時の世も、愚かな男程見るに耐えかねるものは無い・・・さて、ではアンバーさん。」
アンバー『あの、カント様?』
カント「お待たせ致しました。これから私と、一緒に目くるめく愛の世界に・・・」
「‐」バラン『五月蝿い、其の手を除けろ。スケコマシめが。』
カント「おやおや、彼氏でも無いのに私とアンバーさんのアフター5に口出ししないで貰えますか?それとも・・・」
ドゴラ「・・・やめて。」
カント「おや、君に言われては仕方ない・・・か。無事で何よりだよ。ドゴラ。」
ドゴラ「それを先に言ってよ・・・でも・・・ごめんなさい、カントさん・・・!」
カント「君が謝る必要が、何処にあるんだい?こうなったのは、私の責任・・・女性を泣かせるなんて、紳士失格さ。でも、それでも私を許してくれるなら・・・」
ドゴラ「・・・カントさんだって、あやまらなくっていいんだよ?」
カント「・・・ありがとう、ドゴラ。 さっ、これで涙を拭いて。」
ドゴラ「うんっ・・・ありがとう・・・」
「‐」バラン『・・・御前は元から似非(エセ)紳士だったろうに。』
カント「それは聞き捨てなりませんね?女性のエスコートも上手く出来ない上に空気も読めない貴方に言われたくないのですが?」
「‐」バラン『如何でも良い。兎も角、次アンバーに不埒な事をしたら許さんぞ・・・!』
カント「まぁ、そんなにしつこいくらいアンバーさんを守りたいのなら、警備会社への就職をおススメします。ボディガードくらいなら、立派にこなせそうですからね?」
「‐」バラン『余計な御世話だ。スケコマシに言われ様が、説得力に欠ける。』
カント、「‐」バラン「『・・・!』」
アンバー『バラン、あまりカント様を挑発しないで。カント様も落ち着いて・・・』
ドゴラ「もう、カントさんったら・・・」
ブルトン「口論は争いの元だから、程ほどにね・・・ところで、ゴジラタワーに変わったゴジラがいなかったかい?」
「‐」バラン『若しや、此の世界のシン・ゴジラの事か?其う言えば御前の名前を叫んでいたな。』
アンバー『シン・ゴジラ様は他世界の同族仲間のお二人とレッド様・レジェンド様・コング様と残られ、今まさにゴジラタワーを破壊しようとしています。』
ブルトン「そうなんだ・・・じゃああの子も、探し物を見つけたと言う事だね。」
「‐」バラン『其うだ、あの白い御気楽猿人は何処へ行った?此処に残ったのだろう?』
ブルトン「さぁ。彼もいつのまにか、いなくなってたから・・・まぁでも、キングコング君を迎えにでも行ったんじゃないかな。きっとね。」
ドゴラ「あの・・・貴方が、ブルトンさん・・・?」
ブルトン「そうだけど、何か用かい?宇宙大怪獣ドゴラ。」
ドゴラ「実は、かまたくんが貴方にこんな事を・・・」
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好釦