イッツ・ア・スモールワールド




レザーバックーー・・・今度ばかりは、時間は戻ってくれねぇか・・・オレはあくまで、同じ型の「KAIJU」の内の一つに過ぎねぇしなぁ・・・
でもよ・・・そんなオレにも妻と子がいるんだよ。
オレはどうなってもいい・・・だからせめて、あいつらは見逃してやって、くれ・・・



走馬燈によってひとしきり人生を回顧し、大往生を受け入れたレザーバックは、ゆっくりと目を閉じた・・・










コング「・・・」



・・・が、大往生が起こる事は無く、それどころか相手の殺気は次第に静まってゆく。
再び開けた目でキングコングを一瞥すると、怒りの形相はそのままに尚も自らに向かって仁王立ちする彼の姿があった。



レザーバック「・・・オイ、どうした?生きて帰さねぇんじゃ、なかったのかよ?」
コング「・・・そうしたいのは山々だが、お前にはまだ家族がいるんだろう?なら行け、オレの怒りが再び沸き上がる前に。」



キングコングから放たれた家族という発言に情けを掛けられたと悟ると、レザーバックは自嘲気味に苦笑し、ゆっくりと未だに痛む体を起こした。



レザーバック「ははっ・・・じゃあ、今回はワイフとウチの娘の手前、これで勘弁してやるよ。だが、オレはテメェに負けたつもりなんざ・・・ねぇからな?」
コング「その言葉、覚えておく。」



何故か追い打ちすら掛けてこない相手を不審に思いつつも、レザーバックは全身の激痛を堪えながら覚束無い足取りで、オオタチ母娘の方へ向かって行った。






コタチ「パ~パ~ッ!!」
レザーバック「コタチ・・・よしよし、パパが帰って来たぞ!だからもう泣くな!オイ!オオタチ、生きてっか!?」






初代ゴジラ「・・・」
ザウルス「まさか、黙って見逃すなんて・・・ゴジラさん、本当に優しくなったんだね。あっ、中身は機龍さんだからかな?」
初代ゴジラ「外道に堕ちる気は無いだけだ。」



キングコングと同じ事情か、初代ゴジラはレザーバックが向かって来るや刀を仕舞って無言で立ち去り、レザーバックも初代ゴジラを気にする事なく真っ直ぐに泣いているコタチを抱えてあやしつつ、落下の衝撃で三つ編みが解かれ、尚且つ服が少し焦げてしまったオオタチを抱き起こすと何度か揺さぶる。



オオタチ「・・・う、うぅん・・・レザー?どうしたの?」
レザーバック「い、生きてた・・・!良かったぁ〜!!」
コタチ「んむー!(くるしいよー!)」
オオタチ「ちょっと、こんな所で止めてよ!てか苦しいってば!」






コング「・・・オレは、違う。」



キングコングがレザーバックを見逃した理由は、ただ一つ。
先程彼がコタチの方へ手を伸ばした時、ふと自らの脳裏に過去の記憶が蘇ったからだ。










『召しませ、妾(わらわ)が僕(しもべ)・・・其の方(そのほう)らを骨の髄まで喰らい尽くし、腹を満たすのじゃ。 』
『『『ヒャッハー!!』』』



彼がまだ幼い頃、奴ら・・・地底より這い出でる「髑髏の亡者」に同族を残らず食い殺された時、力無き自分は岩陰からただ見ているしかなかった、あの忌々しい光景を。
ある同族の一家の父親が、自身の家族が見ている前で生きながら奴らに食われていく様を。
そして彼の右手は、眼前の家族を案じるかの様にその方角を指したままで───。










コング「・・・オレは、奴らとは違う。」



回想を終え、地面に落ちたフードを拾って頭に付けたキングコングはかぶりを振った。
自分はもう誰も守れなかった、あの頃とは違うのだ。



コング「オレは・・・正しき『王』だ。弱き者を挫く歪んだ者こそを挫く為、この力を振るうんだ・・・!」






ゴジラ・レッド「おい!あのトンボ共もいるって事は、ジンにも協力させてるって事だよな!従業員にまでこんな事させるブラック企業になり下がったのか!お前は!!」
カント「戦いは数、聞いた事がありませんか?それにあれは元々私の餌・・・どうしようと構いませんよ。貴方に勝てるなら!」
ゴジラ・レッド「お前って奴は・・・!前々から腹黒野郎だと思ってたが、まさかここまで真っ黒だとはなぁ!!」



激闘が続くゴジラ・レッドVSカント、非人道的なカントの返答に更に怒ったゴジラ・レッドは全身から「放射波動」を放ち、カントを弾き飛ばした。
どうにかバランスを保って着地したカントはそこからウラニウム熱線を撃つが、ゴジラ・レッドもまた放射熱線を発射。
熱線はぶつかりあった後、爆発した。



ゴジラ・レッド「お前、まさかドゴラも協力させてんじゃ・・・」
カント「・・・」






ドゴラ『・・・』
カント『ド・・・ドゴラ!?貴方達、これは!』
ガイガン『見ての通りだ。ドゴラを殺されたくなければ、オレ達に協力しろ。スポンサーとしてではなく、実力行使要員としてな。』
カント『・・・!』






カント「・・・それ以上は、禁句だ!!」



忌まわしき先刻の脅迫の記憶と、ゴジラ・レッドの言葉を掻き消すように、カントは叫びながら旋回してゴジラ・レッドへ突撃する。



ゴジラ・レッド「図星か?なら、お前は怪獣の・・・男の風上にもおけねぇゲスの極み野郎だなぁ!!」



しかし、ゴジラ・レッドはギリギリまでカントを引き付け、突撃が直撃するより一瞬早く体を捻らせながら横へ跳んで突撃を回避し、それと同時に尾の一撃をカントの横腹にぶつけた。



カント「あぐうっ!!」
ゴジラ・レッド「見せかけの速さだけで、このオレに勝てると思うんじゃねぇ!!」



カントは地に伏し、ゴジラ・レッドは一気にカントに接近してマウントを取ると、胸ぐらを掴んでカントへ吠える。



ゴジラ・レッド「テメェはオレだけじゃねぇ、テメェ自身を裏切ったんだ!そんなテメェがオレに歯向かったらどうなるか、もう一度教えてやる!アドノア島で戦った時みたいになぁ!!」
カント「・・・!」
ゴジラ・レッド「歯ぁ食いしばれぇ!!そんな男は、オレが修正してや・・・」
21/49ページ
好釦