イッツ・ア・スモールワールド
比較的重い話を始めた二人をよそに、スペースは黙々とパフェを食べ進め、一口食べたアンバーは口の中に残るパフェの甘味を感じながら、至福の表情をしていた。
アンバー『やはり、年月を重ねても甘味、スイーツはいいものですね・・・』
???「そこのお嬢様、とても素敵な着物を召しておられますね。私の為に誂(あつら)えた花嫁衣裳ですか?」
と、そこへアンバーに突如話しかけて来たのは、真紅の礼装とシルクハットが強烈に目を惹くとても整った顔立ちの男だった。
男の名はカント。彼こそが、この獣人界のラドンである。
怪獣ランドのスポンサーであるラドン旅館のオーナーであり、天性の女好きであるカントは今日、従業員達を連れての怪獣ランドの視察と同時に好みの女性がいないか物色すると言う、趣味と実益を兼ねて来ていたのだ。
アンバー『えっ?貴方はどちら様でしょうか?』
カント「自己紹介が遅れました。私はこの世界のラドン・カント。九州の阿蘇でラドン旅館のオーナーをしています。以後お見知り置きを。」
アンバー『カント様、ですね。わたくしはアンバーと言う者です。どうか、よしなに。それで、貴方の目的は所謂「ナンパ」でしょうか?それならわたくしは・・・』
カント「いえ、ナンパではなくお誘いですよ。実を言うと私の経営するラドン旅館がこの怪獣ランドのスポンサーでして、オーナーの私としてはスポンサー先の評判が気になるんですよ。ですがここで話すのも何ですから・・・では、その件について隣のホテルで朝まで語り明かそうかと・・・」
「‐」バラン『それは拒否掏る。』
上手くアンバーを丸め込み、連れ出そうとするカントに待ったをかけたのは、見るからに不機嫌な「‐」バランだった。
パフェの件にナンパ師まで現れたとなれば、彼の怒りももっともであった。
アンバー『バ、バラン?』
カント「んっ?何ですか、貴方は?もしかして、アンバーさんの彼氏か何か?」
アンバー『い、いえ、彼とは・・・』
「‐」バラン『只の同志だ。勘違い掏るな。』
カント「同志?つまり、別に彼氏と言うわけでは無いのですか。なら貴方にも聞いておきましょう、ちょっとアンバーさんとお話がしたいので、隣のホテルに・・・」
「‐」バラン『拒否掏る、と言って要る。直ちに此処から去れ、スケコマシめ。命が惜しいならな。』
カント「むっ・・・もしや貴方、束縛系の方ですか?それはさぞ、アンバーさんも困っているんでしょうね・・・じゃあ私から言わせて貰おう、貴方こそここから立ち去って頂きたい!さもなくばスポンサー権限で退場してもら・・・」
スポンサー権限を武器に、邪魔者の「‐」バランを追い返そうとするカントだったが、同じく相手を邪魔者だと思っている上に既に苛立っていた「‐」バランは相手に猶予や交渉の時間を与える気は無かった。
「‐」バランが左手の人差し指をカントに向けるや、その指から瞬時に暴風が起こり、臨戦態勢を全く取っていなかったカントをあっと言う間に空の彼方に吹き飛ばしてしまった。
カント「やっ、やな感じぃーーーーーー!!」
情けない声を上げながら、カントは明けの明星よりも早く空の星になった。
アンバー『カ、カント様!?ちょっとバラン!なんと言う事を・・・』
「‐」バラン『シュンが言って居た。男と女で態度を変化差せるスケコマシは警戒しろ、とな。其れに御前も困惑して居た、違うか?』
アンバー『・・・仰る通りです。ありがとうございます、バラン。ですが、貴方の行動は先程わたくしがバラン達に言った事と矛盾しています。何事も穏便に・・・』
「‐」バラン『其れなら、奴に見付からなければ良い。此処を離れるぞ、着いて来い!』
アンバー『バラン?えっ、ちょっと!あの・・・』
「‐」バラン『其う言う事だ、悪いが私とアンバーは此処で失礼掏るぞ。』
「VS」ゴジラ「そうか、分かった。」
スペース「オレ達はまだここにいる。気が済んだら帰って来てくれ。」
機龍「二人で満足するまで、楽しんで来なよ。行ってらっしゃい。」
アンバー『で、では皆様、失礼します・・・』
機龍――・・・狙ったかどうかは知らないけど、上手くアンバーさんと二人きりの状況になったな。
やるじゃないか、バランも。