「禁断の書物」番外戦 エピソード・オブ・バラン~地球に神が降りた日~
そう話している内、一行は岩屋村の入り口に到着した。
入り口には僧バランが待っており、一行を発見した僧バランは左手を上げて大袈裟に振る。
僧バラン「お~い!!同志達~!琥珀の君~!待っていたぞ~!!」
フレア「あの人が最後の『同志』・・・」
シナト「確かに騒がしいな。」
「‐」バラン『待たせたな、同志。』
護国バラン「琥珀の君?」
アンバー『わたくしの事です・・・あっ、こんばんは。法師様。』
僧バラン「久しぶりだな、同志よ!会いたかったよ、琥珀の君!それから、お主が同志のドッペルゲンガーバランか!確かに瓜二つだ!」
護国バラン「確かにそうだが・・・毎度毎度自己紹介が必要無いのも、妙な感じだな。」
僧バラン「お主はいつもの『カンピ・ルーラ』こと、フレアだな?「招待」の場で会えて嬉しいぞ!」
フレア「は、はい!よろしくお願いします!」
僧バラン「そして、お主が波羅蛇麒こと志那刀(シナト)か・・・琥珀の君と同志を足したような、不思議なおなごだな。」
シナト「そうか。取り敢えずはよろしく。」
ここに、全ての世界の全てのバラン一族の集合・・・すなわち「同志の会」が完成に至った。
少数派だからか、ある招待主の働きがあったからかは分からないが、モスラ姉妹やゴジラ軍団が成しえなかった偉業を成し遂げた事は、彼ら一同・・・特に「‐」バランにとっては如何なる栄光にも負けぬ誇りであった。
「‐」バラン『・・・其うか。此で、全ての世界のバラン一族が網羅されたのだな・・・!』
アンバー『長年の悲願を達成出来て、本当に良かったですね。バラン。』
護国バラン「あの私と同志の運命の出会いから、ここまでの事になるとは。」
フレア「初めての参加なのに、こんなに凄い事に立ち会えるなんて・・・!」
シナト「歴史の一頁(ページ)を刻むような勢いだな。私も嫌いでは無いが。」
僧バラン「うむ!その通りだ、同志よ!今日の為に尽力した甲斐があったと言うものだな!
だが、本番はここから!と言うわけで皆、拙僧に付いて来てくれ。」
僧バランの案内の元、岩屋村を歩くバラン達。
「‐」世界の岩屋村と違って、確かに人が住んでいる雰囲気と佇まいを感じるのだが、人っ子1人いない。
「‐」バラン『然し、話と違うな。ニンゲンの気配を全く感じないが?』
フレア「そうだね・・・何だか違和感を感じる。」
護国バラン「私の知る岩屋の地はとうの昔に滅んでいるが、それでも異様だな。」
シナト「諸行無常、と言うわけか。」
アンバー『法師様、一体この村で何があったのですか?』
僧バラン「そう急かすでないぞ、琥珀の君。もうじき分かる。」
僧バラン以外の面々は妙な気分になりつつも彼に着いて行き、村の奥の祭壇の場に到着した。
そこで一同が見たのは・・・
神主(孫)「我が岩屋の地の神、婆羅陀巍様ご一行の来訪!心より歓迎致します!!
そしてお誕生日、おめでとうございます!!
皆の者、感伏!!」
村人達「「「ようこそおいで下さいました、婆羅陀巍ご一行様!!」」」
孫の代に変わった神主を筆頭に、村人全員が正座したまま頭と両手を下げ、バラン達に羨望と敬意を体で示す光景だった。
この光景にバラン達は違う形であれ、各々に人々が自分を崇める姿を思い出す。
「‐」バラン『・・・!懐かしいな、此の光景は。まるでイワヤが有った頃の様だ。』
アンバー『わたくしも、邪馬台国で卑弥呼と共に過ごした頃を思い出しました。純粋で、無垢な羨望の感情の集まり・・・心温まります・・・!』
護国バラン「私は護国聖獣として人々が崇めてくれた時を思い出す。最初は呉爾羅が一番人気だったな・・・」
シナト「私も護国聖獣だった頃を思い出しているよ・・・そなた達よ、なんて愛おしいんだべ・・・」
フレア「僕の岩屋村は、今でもこうやって村人が僕を尊敬してくれてる・・・でもそれって、幸せ過ぎるくらい幸せな事なんだ・・・!僕はそれを、改めて強く噛み締めないと。」
僧バラン「お主達も、我らを敬う人間達の素晴らしさを感じてくれたか。なら、連れて来た甲斐があったと言うものだ。」
シナト「?」
「‐」バラン『どう言う事だ、同志。』
僧バラン「なに、大小あれど我らバラン一族は人間の神として君臨している身、すなわち我らには人間が必要だと言う事を分かって貰いたかっただけだ。人間がいなければ、バラン一族はただの怪獣でしかない。それこそが我らの共通点・・・だからこそ、大切にしたいのだ。」
フレア「粋な事をしてくれますね・・・でも、僕は今も昔も人間は嫌いじゃないですよ。」
アンバー『わたくしは逆に、人間が大好きです。人間も怪獣も姿かたちが違うだけの、同じ「心」を持つ者。それが素晴らしくてなりません・・・』
シナト「あの双子バランには再確認をする必要があったかもしれないが、私も同感だよ。」
護国バラン「・・・私はかつて、呉爾羅の怒りと悲しみによる報復を正しいとし、何もしない事にした。私も呉爾羅と同じく、我ら護国聖獣を忘れ行く人間達に裏切られたように思っていたからだ。呉爾羅が帰って来てからも、何処かで・・・
だが、呉爾羅が亡霊達に受け入れられ、同志が人間を受け入れつつあるのなら、私もそろそろ受け入れなければな。」
「‐」バラン『御節介にも程が在るぞ、同志・・・だが、昔を回顧しただけだ。明日からニンゲン達と仲良しごっこを掏る気は無い。』
アンバー『もう、バラン。この場でそんな事を言わなくても・・・』
「‐」バラン『だが・・・其の配慮には、心から感謝掏る。』
僧バラン「その言葉で十分だよ、同志。お主がいきなり人間と手と手を繋いで爽やかに笑う姿が想像出来んからな。」
フレア「確かに・・・でも、いつか叶うといいね。」
アンバー『バラン、またああして誤解を生むような言い方を・・・ですが皆様、バランは素直でないだけで心の底ので信頼している人間は何人もいらっしゃいますので、どうかご容赦下さい。』
護国バラン「つまりは相変わらずのツンドラぶりと言うわけだな、同志。」
シナト「それを言うなら『ツンデレ』じゃないか?ドッペルゲンガー。」
僧バラン「まぁまぁ、細かい事は良い!今日はここで宴だ!同志達の為に宝琳も選りすぐった一品を持って来ているし、招待主にも許可を取っている。遠慮はしなくていいぞ!」
フレア「いや、待って待って!僕は明日も郵便の仕事が・・・」
護国バラン「心配なら酒さえ飲まなければ良い。折角の骨休めの機会だ、この場で共に楽しもう。歌留多も持って来ているし・・・」
アンバー『あの、すみません・・・これは「ウノ」だと思われるのですが?』
シナト「私は札物には強いが、それでもやるなら相手になるぞ?」
僧バラン「ほほう、拙僧はあまりやった事は無いが良い遊びだ!ほら、同志もここに来たからには混ざって貰うぞ?」
「‐」バラン『分かって要る、だから肩を引っ張るな・・・何で在ろうと、勝負には勝利掏る!』
神主「神々の勝負、我らも魂を込めて激励させて頂きます!婆羅陀巍様、どうか開始の一言を!」
僧バラン「そうだな!だがまずは同志、この遊びのルールと開始の一声を教えてくれ!」
僧バランーー・・・見ているか?リエラよ。
拙僧の元にはこんなに素晴らしき人間と、素晴らしき同志が集っている。
だから、これからもどうかゴジラ達と、我らを見ていてくれ・・・
かつての愛しの君、リエラ。
夕焼けに染まる空を見上げた僧バラン、その目にはあの日と変わらない笑顔で微笑むリエラの姿が見えていた・・・
終